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「競争」ではなく「共生」の21世紀づくりを
  改革実践へ新たな決意 JA全国大会 (10/12)


 今後3年間の農協運動の方針を決める第22回JA全国大会は12日、東京国際フォーラムに全国の代表約4000人が集まって開き、『農』と『共生』の『世紀づくり』を目ざすJAグループの方針を決議した。また食料自給率向上に向け、全JAが「地域農業戦略」を策定し、その実践を図ることなど三つの特別決議をした。さらに「女性・担い手層の参画をはじめJA運動への一層の結集を促進する」との大会宣言を採択した。大会には森喜朗首相も出席。祝辞を贈った。

 JA全中の原田睦民会長はあいさつの中で「20世紀は競争という枠組みに強く支配され続けた」とし、大量生産、大量消費の結果、「環境破壊や人の心の荒廃など深刻な問題が引き起こされた」と問題を提起。
 「競争」が生み出す「対立・犠牲」に替わり「共生」を基本に据えて「新たなJA運動を展開していこう」という大会議案の基本的な考え方を説明した。

 来賓あいさつでは森首相が情報技術(IT)と教育基本法への”こだわり”をみせ、「パソコンやインターネットで全人格的教育はできない。先生と子ども、親と子の対話が大事だ」と家庭教育の重要性を強調。
 家庭内の秩序が子どもたちは「礼儀をわきまえさせるようになる」と説き、「JAのみなさんの家庭では、IT社会の進展に対応する意味からも、食事をしながら子どもたちとの会話をしてほしい」と呼びかけた。
 次いで谷洋一農相は「JAには環境を守るという使命もある。そのためにも協同精神を発揮してほしい」と協同精神を強調。また合併JAは営農指導に全力を挙げるようにと求めた。

 続いて、海外から来賓出席した韓国、台湾、モンゴル、インドネシア、欧州連合(EU)、米国の農業団体代表を次々に紹介し、世界貿易機関(WTO)農業交渉の本格化をひかえた中で、国際連帯の前進ぶりを目のあたりに示した。
 また友誼団体を代表した日本生協連の竹本成徳会長は祝辞の中で、遺伝子組み換え食品や環境ホルモンなどの問題に対応して日生協は今「食品衛生法の抜本的改正を求める1000万人署名運動を展開している」ことなどを報告した。

 このあとJA全中の山田俊男専務が議案の提案説明をした。決意表明では、JA京都青壮年組織の谷則男委員長が議案に盛り込まれている@青年部盟友のJA経営への参画と経営委員会の委員への登用、AJA役員の定年制と任期制、B生産資材価格の引き下げの3点が確実に実行されるようにと強く主張した。
 またJA帯広大正フレッシュミズの荒川志織さんは、農家の女性が〈私も農家経営を支えているマネージャーの一人である〉〈JA役員になれるかも知れない〉という意識が持てるようにJAグループの意識改革を進めていきたいと女性参画への思いを語った。

 意見表明では、宮城県・JA古川の木村敏彦組合長が「自給率目標の達成に向け、JAグループをあげて取り組む」との方針を掲げたことは時宜を得たことであるとし、早くからコメと麦・大豆の生産振興に取り組んでいるJAの実績などを報告した。
 熊本県・JA菊池の上野松年組合長は「JAグループの経営・事業・組織の改革」は経済のグローバル化による大競争時代にあって経営基盤と経営体質を確立し、JAの社会的使命を果たすには避けて通れない道だ」と議案を支持した。
 また茨城県・JAやさとの関修一専務は「コメの生産調整を達成したにもかかわらず、ミニマムアクセス(MA)米の輸入圧力によって280万トンもの在庫があふれている」と指摘。
 米価を「下落させているWTO体制は、食料輸出国・多国籍企業による自由貿易に名を借りた食料植民地主義ともいうべきもの」と厳しく批判。「この不平等、不公正な体制を改めさせるため、強力な運動を展開すべきである」と力強く意見表明した。

 大会は、このあと議案と三つの特別決議を採択。さらに議案実践への新たな決意をこめた大会宣言を大きな拍手で採択した。

JA大会宣言 (要旨)
 農業・農村そしてJAグループを取りまく経済・社会環境が大きく変化しているなかで、われわれは、組合員を始め消費者・国民の期待と信頼に応えていくため、大会決議を迅速かつ着実に実践していくことをここに誓う。
 産業組合発足から100年を経過し、この間、多くの課題に直面してきたが、相互扶助と組織の結集により、これを克服し、JA運動の発展を図ってきた。
 新たな世紀にのぞむにあたり、21世紀にふさわしいさらなる運動の発展を期するため、女性・担い手層の参加・参画をはじめJA運動への結集を一層促進し、『「農」と「共生」の世紀づくり』に向け、決意を新たに取り組むものである。

  平成12年10月12日    第22回JA全国大会

三つの特別決議

 第22回JA全国大会は次の三つの特別決議を採択して重要課題に取り組む決意を内外に示した。

食料自給率の向上と経営所得安定に関する特別決議 (要旨)
 @食料自給率向上に向け麦・大豆・飼料作物等の生産振興と米の計画的生産、担い手育成方針等の「地域農業戦略」を全JAで策定し、行政等と一体となった実践をはかる。
 A食料・農業・農村基本計画の推進をはかる政策・予算の確保と、生産者が将来の農業経営を展望できる新たな経営所得安定対策の早期実現に取り組む。
 B食料の安定供給、農業・農村の多面的機能など、食料・農業・農村についての国民的理解の促進、JAのイメージアップをはかるため、JAグループの広報機能・体制の確立と情報発信機能の強化に取り組む。

WTO農業交渉に関する特別決議 (要旨)
 @ウルグアイラウンド合意による影響や、これまでの経験が考慮され、さらに食料安全保障を含む農業の多面的機能といった「非貿易的関心事項」が反映された公正で公平な貿易ルールを実現する。
 A食料・農業・農村に関する広範な国民的理解の形成、そして、わが国の考え方に対する各国の理解を深めるための国際的な連携の強化に取り組む。

JA改革の実践に関する特別決議 (要旨)
 @JAグループが一体となって総合力を発揮するための事業改革、とりわけ統合の成果を発揮する経済事業の改革、一元的なIT投資、金融総合力を結集した一体的な事業運営を展開するJAバンクグループを実現する。
 A担い手・女性をはじめとした参加・参画を促進し、組合員の意向を踏まえた事業・組織運営と業務執行体制の確立を図る。
 B経営・事業・組織改革の実践に向けた行動計画を策定し、改革の進行管理を実施するとともに、必要な農協法制度等の整備に取り組む。 

新しいシステムづくりの課題がいっぱい
大会決議のポイント

 JA全国大会は「『農』と『共生』の世紀づくりに向けたJAグループの取り組み」をサブタイトルとする3年間の方針を決めた。
 方針は三本柱からなり、第一の柱は、「食料・農業・農村の21世紀を切り拓くJAグループの取り組み方向」で新基本法に対応した構成になっている。

 「食料」面では、自給率向上目標の達成に向け、麦、大豆、飼料作物などの生産振興にも総力を挙げる。
 また消費者に農薬や化学肥料の使用状況などの情報開示をする「安心システム」による供給に取り組む。
 「農業」面では、全JAが「地域農業戦略」を策定し、実践し、その中で▽法人を含む担い手への支援▽JAの営農センター▽販売企画力などを強化する。
 「農村」面では、高齢者対策を展開し、また学童・市民農園やグリーンツーリズムなどを通じた住民や都市との交流を促進する。

 第2の柱は、「JAグループの経営・事業・組織の改革」で、経済事業では生産資材コスト低減のため広域受発注・物流情報センターによる一貫体系を構築。また赤字施設は撤退を含めて抜本的に見直す。
 信用事業では一元的なIT投資に取り組む。また自主ルールによる破たんの未然防止策を確立する。そのため全国段階でのモニタリング体制を整備する。
 経営面では部門別の常勤理事が置ける体制とする。またJA段階では、業務執行体制の確立とともに経営管理委員会制度の活用を図り、連合会段階では同制度を確実に活用していく。
 さらに全中に「全国監査委員会」(仮称)を設置し、その下に「全国監査機構」(仮称)を全中と県中の事業統合により設ける。
 第3の柱は、「参加・参画・連携の促進による農協運動の展開」で、担い手と女性のJA経営への参画を促進し、准組合員の加入促進と意志反映手法の充実をはかる。



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