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「迫力に疑問」の声も
  WTO農業交渉への日本提案ポイント
  機動的な緊急輸入制限ルールなどを主張 (10/20)


 農水省は、世界貿易機関(WTO)農業交渉への日本提案を11月末にまとめるが、そこに盛り込むべき課題と論点をまとめて20日、自民党の農林水産物貿易対策特別委員会に示した。コメのミニマムアクセス(MA、最低輸入義務量)では@MAは返上せよ、A量を減らせ、Bこれ以上増やすな、などの意見を紹介。@とAを主張した場合は、各国の非難や代償要求を招き、現行なみの輸入管理さえ難しくなる可能性があるとの見通しを示した。これに対し出席議員から「現状維持へと議論を誘導する論点だ」などの批判が出た。

 コメ減反を拡大しながら輸入を増やすとは何事かといった強い反発は消費者にもあり、一番強く出ているのはMA返上の声だ。
 だが、それは感情論であり、実際に返上を主張すれば代償をとられる、「そこを考えなくては」(農水省)という。WTOは商売のかけ引きの場で、一方的な国益主張は至難とされる。
 また日本国内には、工業製品の輸出に支障がないよう「譲れべきは譲れ」というウルグアイラウンド(UR)の時に高かった経済界流の主張が今も根強く、国論統一は困難とみられる。
 さらに「MA返上は貿易ルールの変更になるから」と農水省は難色を示す。

 こうした姿勢に対し、自民貿対の議員からは「基本的立場の検討にあたって、早々に落としどころを示すのは不見識」とか「こんな論点で自給率を上げられるのか」などの反発が出た。
 一方、学識者やJA関係者からも「不公正な貿易ルールの変更を求めることこそ日本の基本的立場ではないか」との疑問が出ている。一方的に、もうけようとしているのは農産物輸入国のほうであり、日本はいらないコメを押し売りされているのだから”商売の場“で”悪徳商法”を正すのは当然というわけだ。

 日本のコメ関税は約400%。米国は10%程度なので、自国の水準まで引き下げさせようと(?)関税廃止も提案した。最初に大きく吹っかけるのが米国流だ。
 農水省は、これに「現実を踏まえた柔軟な水準の設定」を対置した。国によって自然や経済の条件が違うし、またUR以前からの歴史的背景もあって、関税に格差があるのは当然だ。
 輸入国が農業の多面的機能や食料安全保障を守るために関税をかけるのは正当な権利だが、農水省の主張案は力強さに欠けるとの受け止め方もある。また基礎食料と、それ以外の品目の関税格差も当然だが、米国は品目ごとに狙い撃ちする構えもみせている。

 輸入急増に対しては緊急輸入制限がWTOのセーフガード協定で認められているが、日本はまだ一度も発動していない。輸入急増が国内産業に与える打撃を調査しているうちに、輸入量が減ってしまうからだ。
 そこで季節性があり、腐りやすい農産物の場合は機動的に発動できる新たなルールづくりを提案する。
 しかし発動に対する代償を輸出国が求めてくるだろう(農水省)という。このため代償を必要としないルールの主張が課題となる。

 一方、米国は輸出補助金の完全撤廃を提案。これを交渉の最大眼目の一つとして欧州連合(EU)との全面対立が予想される。
 日本はEUと共同歩調をとるため撤廃でなく、補助金削減を主張する。
 米国は多国籍企業などに輸出信用保証をつけて代金が回収できない場合は政府が補償し、商業ベースでは輸出が難しい国へと市場を拡大している。これは国内過剰のはけ口となり、相手国の経済が好転すれば大きな利益がころがり込む。
 EUなどは、これを隠れた輸出補助金として批判しているが、日本側の対応は微妙になりそうだ。
 また米国には、作物を担保に農家に短期融資をし、国際価格が基準価格より低い場合は、基準価格で買い上げるというマーケティングローン制度がある。
 これは実質的な価格支持政策であり、輸出価格を抑えるという輸出支援の側面も持っている。農水省はこれらに対して「輸出信用に関する規律の強化」など具体的な提案ができるように検討する方針である。



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