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農政・農協ニュース

「生産調整研究会」が中間報告 (6/28)

 食糧庁の生産調整研究会は28日の中間取りまとめで、将来は減反をしなくても済むという「コメ作りのあるべき姿」を目ざして▽生産調整に参加するか、しないかは農業者の経営判断に任せる▽また地域ごとに調整量を選択できるシステムとする▽新しい経営安定対策をつくることを前提に現行の稲作経営安定対策は廃止する▽計画流通米と計画外米の区別をなくし、規制は最小限とする▽余り米処理は生産者の自己責任を基本とする▽供給量は数量を基本に調整する(いわゆるポジ配分)ことなどを提示した。同まとめの題名は「米政策の再構築に向けて」。これをもとにした現場の議論を「強く求める」と前置きしている。今後、食糧庁、生産者団体、自民党など関係者で具体策を議論。秋に研究会を再開して最終取りまとめをする。

 同まとめは「コメ政策の改革方向と、可能な限り具体的システムの基本的考え方を示した」としている。
 ポイントの1つは生産調整を農業者が自らの経営判断に基づく仕組みとすることが望ましい、としたこと。現行は農業者が納得しなくても集落や行政で配分しており、さらにはコメ、麦、大豆がセットになって不公平感を呼び起こす制度になっている。
 この方式を改める方向を打ち出したが、不参加者が増えた場合は米価が下がるから参加メリットを手厚くする方針も示した。麦と大豆への助成を少し是正してコメに回す考え方もある。
 いずれにしても自分の経営判断で選ぶのだから、不公平感と強制感はなくなるだろうという。欧州などは選択制だが、参加者が多いとのことだ。メリット措置は主業農家と副業的農家を区別せずに対象とする。
現地検討会
 「生産調整に関する研究会」は、1月の初会合以降、企画部会、生産調整部会、流通部会のもとで、計39回の議論を行ったほか、現地検討会で生産者、消費者の意見も聞き、このほど中間報告をまとめた。今後、農水省などによる具体策の検討状況をみきわめたうえで最終的なまとめを行う。
中間報告
 研究会の生源寺真一座長(東大大学院教授)は記者会見で例えば「2回エントリー制なども考えられる。1回目の集計結果は参加者が少なかった。だから米価はこれだけ下落しそうですが、それでもあなたは生産数量を減らしますか、と問い直して2回目に挑戦してもらうなど理解と納得を求めていく手法はいろいろ考えられる」と語った。
 地域間調整は今もあるが、さらに地域の特色ある農業を選択できるメニューを用意し、コメ以外の品目生産を選んだ地域に対する支援システムを構築する。そうしないと再び収入の有利な稲作に回帰する潜在力が働くためこれを抑制する。メニュー設定には第三者機関の役割も重視する。
 またコメ需給調整の前提となる需要量の予測基準づくりは、透明性のある中立機関がやるべきだという考え方も打ち出した。
 稲作経営安定対策は将来経営所得安定対策ができれば廃止とする。しかし、それまでの過渡期的な経営安定対策をつくるまでは存続する。新たな対策が需給調整への参加を条件にするかどうかは検討する。
 コメ流通は必要最小限の規制にとどめ、自主流通計画は廃止する。したがって計画内と計画外の区別はなくなり、基本的には余り米処理コストの負担が計画流通米だけにかかってくる不公平感はなくなる。
 研究会は、本来あるべきコメづくりの姿にソフトランディングするために、副作用を少なくする条件整備をどうするか、その期間はどれだけ必要かといった議論を総論とした。
 その中では米価がどこまで下がるかの問題も出た。その場合、どの水準にソフトランディングさせるか、その時の水田農業の形はどうかの疑問も浮かんだ。
 研究会の場以外の議論では需給均衡価格は1万2000〜1万3000円といった水準が挙がっている。それは担い手による需給均衡価格なのか、または兼業農家によるものなのか、シュミレーションが必要とされてくる。
 これらについて生源寺座長は「閉塞状態といってもよい生産調整の現状を見直し、明るい展望が開ける内容にしたいと努めた。このチャンスを逃がしたら水田農業の展望はもはや開けないといったくらいの切迫した思いだった」と語る。
 そして中間取りまとめについて「研究会は関係するあらゆる問題を公開で検討してきた。中間取りまとめは、これまでのつぎはぎだらけの施策とは違って新味のある提案ができたと思う」と語った。

 


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