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農政・農協ニュース

市町村と地権者が転用区域を指定
農水省が農地活用で新たな枠組み検討 (8
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  耕作放棄やスプロール開発で農地が産廃捨て場などになっていくが、農地転用が多い現状では規制の強化が難しいとして農水省は国の法規制よりも、市町村条例を基本にした土地利用調整に移行する方針だ。
 市町村が条例を定め、土地利用計画をつくり、その中に転用を許可しない農地保全区域を指定。それ以外は農振地域や農地法などの規制をはずして多様な土地活用ができるようにする。 ただし日本の原風景ともいえる里地・里山の景観を壊さない範囲での土地活用という枠を設ける。つまり農山村の魅力を守り、育てる活用を図る。
 同省は有識者懇談会(座長は東大大学院の生源寺真一教授)を設けて「農山村の土地利用の枠組み構築」を検討。その報告をもとに9月位後、農業団体の討議にかけるなどして改正法案と新法案をまとめ、来年の通常国会に提出する方針。 懇談会はすでに4回開き15日に論点を整理した。 これによると、住民参加の土地利用計画づくりを強調し、例えば、土地所有者が小学校区や集落ごとにまとまって、農地保全区域と転用区域を区分する協定を結ぶ手法などを議論した。 一方、転用の権利を市町村に譲渡する契約を結び、地権者個々の意思だけでは転用できないようにする案も出た。しかし地権者の合意で転用緩和を目ざす場合もあるため、優良農地を確保する観点から条例を農振法に適合させるべきだとの考えも出ている。
 農業をしたい都市住民が農地を求めても農地法で許可されない場合が多かったが、協定で転用区域とすれば売買や賃貸ができるようにする。参入者の耕作放棄などを防ぐために協定、契約の内容に違約金や契約解除などのペナルティを定めておくとの考えもある。
 農地法の耕作者主義を確保する手法では考え方が分かれ、転貸目的での権利取得を防ぐ耕作要件を必要とする意見がある。
 この見直しは「食と農の再生プラン」に掲げた「農業や農地への多様な関わり方が可能となるような新たな枠組み」検討の具体化で「農業経営の株式会社化等による多面的戦略の展開」のために「農地法を見直す」という構造改革路線に組み込まれている。
 一方、市町村が理念的な条例をつくっても県や県議会が開発に走った場合どうするのか。現実には県事業で原風景を壊す例もあり、課題はなお多い。一方、転用メリットを求める地権者の利害関係も複雑だ。
 JAグループ内には再生プランそのものに対する批判があるだけに、この見直しの基調を問う疑問や批判の続出は必至だ。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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