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輸出補助金撤廃を明確に主張
−上限関税設定には反対 WTOで政府方針 (5/26)

 7月に枠組み合意をめざしているWTO農業交渉で、政府は5月26日、輸出補助金の撤廃や、関税削減方式では各国それぞれが持つ重要品目への適切な対処が不可欠などとする今後の対応方針を正式に決めた。この方針は与党やJAグループなど農業団体も了承した。
 今後、政府はスイス、ノルウェー、韓国などわが国と共通の考え方を持つG10各国と協議し、共同ペーパーを作成、提出することをめざしていく。
 
■市場アクセスで途上国に配慮

 農業交渉でもっとも対立している関税削減方式について、日本は農業の多面的機能発揮の観点から重要品目とするなど各国それぞれ抱える「センシティビティ」に適切に配慮したものとなるべきと主張していく。
 また、上限関税の設定もこうしたセンシティビティへの対応が困難になるものだとしてその設定に反対。関税割当制度については、「関税割当の一律拡大義務づけ」は、日本など輸入国に過大な負担を課すことになることから導入すべきではないと主張する。
 一方、途上国の先進国への輸出を促進し経済発展を支援する観点から、特恵マージン(途上国向けの低関税)の確保と、関税割当の枠の一部を途上国に振り向ける制度を検討すべきだとしており、途上国への配慮を打ち出した。
 市場アクセスについての今回の方針の柱は、各国それぞれが持っているセンシティビティへの十分な配慮だ。それが確保されれば「積極的かつ柔軟に対応していく用意がある」と同方針で表明した。
 これまで関税削減方式について日本は削減が緩やかになるウルグアイ・ラウンド方式とすべきと主張してきたが、今回は一律削減方式(スイス・フォーミュラ)と組み合わせたブレンド方式なども含め、方式にはこだわらず「センシティビティへの配慮が確保されるかどうかの議論が先決」(農水省)との立場を示したものだ。
 
■農産物貿易改革を主張

 輸出補助金について、今回は明確に「撤廃」の立場を表明した。
 これまではEUとの連携をふまえ明確に撤廃を表明してこなかったが、輸出補助金に対する途上国の批判が強く「世界の貿易改革に向けて」(松岡利勝自民党貿易調査会事務局長)打ち出した。同時に米国が実施している輸出信用など輸出奨励措置についても、輸出補助金的な性格のものについては撤廃すべきとして輸出規律の強化を求めていく。
 また、食料援助についても輸出補助金の迂回を防ぐ観点で規律強化を議論すべきだと主張している。

■国内支持では米国をけん制

 国内支持では、貿易を歪曲する政策を大幅に削減すべきとし、WTO協定で削減対象となっている「黄」の政策の大幅削減と、なかでも主要輸出国のおもな輸出品目に対する黄色の政策は「より大幅に削減」すべきと主張している。
 たとえば、米国では米、麦などの作物を対象に目標価格を設定し、市場価格との差額を補てんする価格変動対応型支払いを導入しているが、これには各国からの批判が以前から強い。日本としてもこうした主張で米国に削減を求める姿勢を明確にしたといえる。
 一方、生産調整にともなう助成措置など「青」の政策については、この枠組みの維持は必要としながら、予算限度額の設定など規律の強化をすべきとの方針。「緑」の政策については、貿易歪曲性がないか、または極めて少ない政策であるとして、現行の規律を維持すべきと主張している。
 WTO農業交渉では、農業委員会特別会合が6月2日〜4日、同23日〜25日、7月14日〜16日に予定されている。

■JAグループ 各国農業団体との連携

 今後の対応方針の決定を受け宮田勇JA全中会長は同日コメントを発表した。
 そのなかで、上限関税設定の阻止、関税割当数量の一律的・義務的拡大の阻止と、柔軟性のある関税削減方式の確保に向け「一歩も引かない取り組みを強化する」と表明。また、同方針にもとづき、各国農業団体との意見交換や連携した取り組みを行う。
 JAグループでは、当面、5月29日から6月6日まで米国・ワシントンで行われる国際農業生産者連盟(IFAP)の世界農業者大会に代表団が出席、日本の農業団体としての今回の方針に基づく主張を行うほか、意見交換する。代表団は宮田会長のほか、新井昌一JA共済連経営管理委員会会長、酒井研一全国農政協会長、三上一正JA全青協会長ら。
 また、6月9日には「WTO農業交渉、EPA対策、新たな基本農政確立を求める全国代表者集会」を開く。
 なお、宮田会長は今回のコメントのなかで、WTO農業交渉と、現在検討されている国内農政転換の議論は「切り離すことができない」として、思い切った政策の確立と財源の確保が必要であると強調している。 (2004.5.28)



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