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特集:稲作農家の経営安定と集荷率向上をめざす
    JAグループの挑戦

インタビュー
米穀卸東西2社体制めざす
産地との連携で競争力強化へ
今後のパールライス事業のあり方

河本圭介 JA全農・米穀総合対策部部長

 JAグループの米穀卸事業は、昨年4月に設立された全農パールライス東日本、同西日本を中心に産地、JAグループ卸との連携で競争力強化を図っている。また、今年1月に米穀総合対策部に新設された事業開発室では産地開発や商品開発などを積極化させ、消費地への対応力のレベルアップをめざす。こうした取り組みを14年度はどう展開していくのか、米穀総合対策部の河本圭介部長に語ってもらった。

◆環境変化への対応

 ――米穀の流通業界を取り巻く環境が大きく変化してきています。JAグループ米穀卸の対応策をお聞かせ下さい。

河本圭介氏

 「規制緩和の一層の進展や市場原理の導入、大手量販店のバイイングパワーの増大などの中で、JAグループ卸が生き残っていくためには、まず、(1)取扱数量の拡大、(2)コスト削減の徹底、(3)JAグループ米穀卸間の連携強化などをすすめ、競争力を強化する必要があります。
 このため昨年、JAグループ卸の中心的役割を担うものとして、全農パールライス東日本(株)と同西日本(株)を設立しました。今後は県連卸や、すでに会社化した卸などとの統合をすすめ、東西2社体制を目ざします。
 また商品開発も必要ですので、AFTライス(アトピー性皮膚炎、特に米アレルギーに効果)、発芽玄米(健康食品)、手間いらずお赤飯などを商品化しました。また消費者接近をはかるため、ぴゅあ弁当の発売に加え、今後はカレーショップの出店を考えています」

◆競争力強化対策

 ――競争力強化の具体策は、いかがですか。

商品写真
多様化するニーズに応えられるよう、家庭用から業務用まで多彩な商品をラインナップしている

 「第1は、産地との連携強化です。市場評価などの情報を産地にフィードバックし、生産に反映してもらいたいと考えています。また全農安心システム米の取扱拡大により『消費者の顔が見える流通』の実現に取り組みます。
 第2は、JAグループ卸の機能強化です。パールライスへの信頼性を高めるため、各卸の品質管理の実態をふまえ、ISOレベルの品質管理システムを構築し、品質管理を徹底したいと考えています。また広域会社への統合やJAグループ卸間の連携をすすめ、広域展開する量販店などへのプロモーションの統一化などをはかります。さらに経営基盤の強化に向け、▽業態別販売戦略の策定と実践▽JA小売の強化▽精米工場の効率的運用と再編▽人材育成などによる営業力と仕入力の強化などを目ざします。そして各卸の実態をふまえた到達すべき目標として、経営管理基準を策定したいと考えています。
 第3は、消費地への対応力強化です。ネット販売などをすすめることに加え、新規事業への取組みでは、1月に新設した事業開発室において、柔軟な発想であらゆる可能性を追求していきます。広告宣伝では、パールライスの認知度向上などのために全国統一宣伝や新たな広告媒体など、より効果的な方法を研究していきます。
 米消費拡大については、従来の取り組みの継続・強化に加え、小・中学生たちが米に触れる機会(精米工場の見学など)を積極的に作っていく必要があると考えます。
 一方、政府・与党は昨年秋の『米政策見直し』の中で、消費拡大を「思い切った予算措置」で「一大国民運動的に展開する」と決めました。これを受けて(財)全国米穀協会(全米販、全農)は食糧庁、全中と提供し、テレビ番組『隠れ家ごはん!〜メニューのない料理店〜』を4月7日から1年間放映することにしました。初回には小泉純一郎首相がゲスト出演し、国産米をアピールしていただくことになっており、首相が全国のお茶の間に直接働きかける成果が大いに期待されています。いずれにしても卸業界としての最大の消費拡大対策は、消費者に「新鮮・美味・安心」を届けることであり、この当たり前のことをきちんと実践していきたいと考えます」

◆優先的な実践課題

 ――そうした中で、JAグループ卸が優先的に実践していく課題は何ですか。

量販店の米売場に並ぶ多彩な米商品
量販店の米売場に並ぶ多彩な米商品

 「最優先課題は、品質管理に万全を期することです。パールライスは全国ブランドであり、1つの卸が品質事故や表示違反を起こした場合でも、JAグループ全体の卸や組織が信用を失墜し、社会的制裁を受けることとなります。このためJAグループ卸は、品質管理システムを構築するためISO審査委員をメンバーとした『パールライス品質管理外部監査委員会』を設置することとしています。
 特に(1)外部監査の実施、品質管理の実態把握、品質管理の実施状況の点検、改善事項の指摘と指導、(2)JAグループ卸品質マネジメントシステムガイドラインの導入による精米品質の安心・安全の確保――を重点実施策とします」

◆事業開発室の課題

 ――事業開発室の取り組み課題は何ですか。

 「第1は、産地の取り組みにもっと目を向けたいということです(産地開発)。多くの生産者が特徴ある米作りをしていますが、こうした取組みをサポートし、顔の見える販売と結び付けたいと考えています。
 第2に、新規事業の展開と商品開発です。大消費地販売推進部や関連会社とも連携し、次のことに取組んでいます。▽全農安心システム米をはじめ国産の農畜産物にこだわった「全農ぴゅあ弁当」の商品化▽国産牛肉を使用した弁当の開発や季節の変化などに応じた商品開発と既存商品のリニューアル▽カレーショップ出店▽米粉入りパン(食感が良い)や、発芽玄米(健康食品)など米加工品の開発などです。
 第3に、取引先の開拓です。東西広域会社が産地にとって安定した販売先となれるように産地開発・商品開発などを推進力として、取引先を開拓します」

◆全農安心システム米

 ――全農安心システム米とは、どんなものですか。

 「消費者の食品に対する安心・安全志向の高まりに対応して、全農独自の検査認証制度として、12年度から取り組んでいます。全農が取り扱う農畜産物を対象に、栽培(飼育)・加工履歴と品質内容が体系的かつ具体的に消費者に対し情報開示できるシステムであり、米・畜産・緑茶・野菜などで取り扱いが増えています。しかし、まだ 同システム米の知名度が低いため、生産者・JA・実需者・消費者を対象にした推進ビデオを作製(4月完成予定)し、普及推進することとしています。

 ――最後に、国の米政策見直しと、今後のパールライス事業のあり方について、強調しておきたい点をお聞かせ下さい。

 「食糧庁は『生産調整に関する研究会』のもとに、流通部会などを設け、4月から本格的に検討をすすめるとしています。いずれにしても、規制緩和の進展、競争原理の導入は、強まることはあっても弱まることは考えられず、卸業界にとって、さらに厳しい環境となります。そうした中で今後、生産者と消費者の間で、卸が存在意義と価値を失わないためには、徹底したコスト削減と、『全農安心システム米』などによる『安心・安全』を、産地から、そのまま消費者に届けることが最低条件となります」


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