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特集:21世紀 食料・農業・農村を拓く女性たち
――JA全国女性協創立50周年記念


インタビュー

JA共済は“愛”と“温かみ”のある事業


上原寿宰 全共連常務理事


 終身共済や定期年金共済で女性の新規契約者が増加しているという。そして複雑化する共済仕組みを提案するLAでも女性の活躍が目立ってきている。こうしたJA共済事業を支える女性の役割を中心に、全国一斉統合から2年を経過しようとしているJA共済の現状とこれからについて、上原寿宰全共連常務に聞いた。

◆健全で安心なJA共済事業の経営

上原寿宰 全共連常務理事

 ――ここ数年、保険業界では生損保の垣根を超えた再編が進行する一方で、経営破綻する会社もあり消費者が保険商品を選択するときに、経営の健全性・安全性が重要な要因になっています。JA共済事業は、今日を見越して全国一斉統合を実現し、競争力を強化してきていますが、現在の状況はどうでしょうか。

 上原 JA共済は生損保会社のように利益を追求するのではなく、協同組合の相互扶助の精神で”ひと・いえ・くるま”を中心に「生活保障設計」を進め、組合員・利用者の生活安定をはかる運動を展開しているのです。おかげさまでその運動の結果が堅調な新契約実績となり、388兆円の保有契約となっているのです。これは私達の生活保障設計運動が、組合員・契約者に評価していただいた結果だと考えています。そういう契約実績が土台となって、経営基盤の安定につながっているといえます。一概に比較をすることは難しいと思います。しかしいまは、JA組合員であっても生保や損保と比較し選択される時代になっています。そして、いくつかの保険会社が経営破綻していますから、JA共済は大丈夫かという心配をされる方もいますが、JA共済が破綻することはありませんし、JA共済が原因でJAの経営が破綻することはありえません。
 例えば、通常の予測を超えて発生する諸リスクに備えてどのくらいの支払余力があるかを判断するソルベンシー・マージン比率は9月末で約660%と、生保大手を上回る水準にあります。また総資産は37兆9168億円で前年比101.5%と着実に成長しています。資産運用についても公社債などの有価証券を中心に長期安定的な運用を行っており、株式運用など変動が多いリスク資産は極めて少ないので、そういう面でもご安心いただけます。(データはいずれも13年9月末現在)

◆女性の新契約者が半数を超える長期共済

 ――経営の健全性が評価され契約実績も順調に推移しているのでしょうか。

 上原 長期共済の昨年度新契約高は31兆7979億円と過去最高の実績を記録しましたし、今年度も目標を達成する見通しで、統合の成果が出てきていると思います。ただし課題がないわけではありません。その1つが、保険業界全般にいえることですが、若い世代の契約が減少していることです。もう1つが、長期共済の保有契約高が減っていることです。保有契約高は大手生保の減少に比べればJA共済の減り方は少ないといえます。

 ――そうした課題を克服するために「3か年計画」の最優先課題の1つとして、次世代や女性との「絆づくり・仲間づくり」に取組まれているわけですね。

 上原 JAとつながりのある女性層や地域社会で活動する女性たちの文化活動やサークル活動を通じて共済事業の良さを分かっていただき、積極的に利用していただくために「絆づくり・仲間づくり」に取組んでいます。

 ――女性の契約者が増えているそうですね。

 上原 私も驚いているのですが、最近は終身共済新契約者のほぼ50%、定期年金新契約者の56%弱が女性です。従来ですとご主人が自分もJA共済に加入し、奥さんや子どもさんたちについても契約するということだったのですが、いまは女性の契約者が半数になっているわけです。契約者とは自分で共済掛金を払う人ですから、農村社会も女性中心になってきているといえますし、これはいいことですね。

◆生存給付ニーズに応える「もしもしも」

 ――女性に支持される共済仕組みがあるのでしょうか。

 上原 一般的に女性の方が長生きしますから、生存給付に対するニーズが高まっているといえます。そういう意味で、高齢化したときの生活を支える定期年金共済の女性契約者が増えていると思いますね。そして、高齢化すれば医療、入院の不安がありますが、それに応える共済として入院保障重視型定期生命共済「もしもしも」があります。「もしもしも」は女性の方が長命で危険率が低いので男性よりも掛金を安く設計し、小さな掛金で充実した保障を実現しています。
 これからの方向としては、若い人たちの「小さな掛金で、いまの保障を」というニーズに応えた共済仕組みの開発も大事だと考えています。
 それから子どもが生まれたばかりの方に積極的に接触していこうということで「パパママキャンペーン」を実施し、若いお母さんたちにJA共済を理解していただこうと取組んでいます。

◆ホームヘルパー育成助成など多様な活動も充実

 ――高齢化社会ということでは介護への関心も高いですね。

 上原 今年の4月からJAの事業として公的介護受託ができるようになりましたが、JA共済では以前からデイサービスセンターの建築助成、介護保険士やホームヘルパーの育成助成などを行っていますが、これから組合員のニーズを見極めて、JA共済として対応をしていきたいと考えていますし、こうした活動の積み重ねが重要だと思います。

 ――「健康・介護ホットライン」の利用者も女性が多いそうですね。

 上原 健康や介護、育児について電話による無料相談を行っておりますが、あわせて健康・介護・育児に加えて料理や温泉保養施設についてのFAXによる情報提供を実施していますが、利用者の70%は女性です。とくに子育て最中の30代がもっとも多く、次いで50代、40代、20代と若くなっています。そのほか、中伊豆と別府のリハビリセンターも充実した施設として高い評価をいただいています。

◆LAはJA女性職員が自分の力で活躍できる場

 ――女性の利用者がJA共済を支えているということですが、事業面でもライフアドバイザー(LA)はじめ女性の活躍がありますね。

 上原 JAの共済事業を担当する職員の約30%は女性です。そして仕組みが複雑化してきていますので、提案型の推進をするLAの役割が重要になっていますが、女性LAを任命しているJAは全体では55.5%、専任だけに限れば68%に達しています。LA全体に占める女性の割合は約17%ですが、1人あたり平均実績では女性LAの方が男性LAを上回っています。毎年実施しているLA全国表彰でも12年度は表彰された専任LAの25%近くは女性でした。
 長くLAをしている女性の方が契約者の満足度が高いんですね。女性は自分の家の生活保障を考えていますから、契約者の身になって提案設計ができるからだと思います。そのことも女性契約者が増えている要因かなと考えています。そういう意味では、女性がJA職員として自分の力で活躍できる場ではないかと思いますね。

◆協同組合活性化のために
  女性の意思を反映できる機会を

 ――最後にJA全国女性協が50周年を迎えましたが、JA女性部の皆さんへのメッセージを…。

 上原 私は協同組合に男も女もないと考えています。女性は緻密ですし、家族単位の生活設計を考え、農家・家族をつくっていくときに女性の役割は、今まで以上に重要になってきています。社会活動や文化活動でも女性の果たす役割は大きくなっています。だからこそ、協同組合を活性化していくためには、女性の意思を反映する機会をどんどんつくっていかなければいけないし、非常に重要なことだと考えています。
 女性は地域で多面的な活動をしていますが、その中の1つである「生活設計」の手段として共済事業をぜひ活用していただきたいと思います。JA共済は協同組合らしい相互扶助の精神が発揮された事業であり、愛と温かさがある事業です。生損保とは画然として違うということをご理解いただきたいと思います。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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