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殺虫剤「フェニックス」の全貌が見えた
「環境調和型」有望剤として3剤に注目

《日本農薬》

河内長野総合研究所全景
河内長野総合研究所全景
フルベンジアミド化学構造式
フルベンジアミド化学構造式

 日本農薬(株)(大内脩吉社長、本社:東京都中央区)の殺虫剤「フェニックス」の全貌が見えた。早くから「環境調和型」の有望剤として注目されていたが、農薬登録が射程内に入ったことから、他注目2剤とともにその横顔を見ることにした。
 「フェニックス」(一般名:フルベンジアミド)は、同社が創出したベンゼンジカルボキサミド系の新規殺虫剤で、現在バイエル クロップサイエンス社と世界的に共同開発している。本年8月2日に食品安全委員会でADI(1日摂取許容量)案が設定された。
 「フェニックス」は、多くの鱗翅目害虫に対して高い殺虫活性を有し、なかでも幼虫に対する高い活性が指摘できる。作用発現が速効的で、速やかに食害を抑制し、処理葉上で長い効果持続性を示す。経口・経皮ともに作用するが、特に経口的な作用が強い。
 野菜、果樹、茶への散布処理により、圃場試験においても極めて高い防除効果が認められ、対象作物が極めて広い。
 「フェニックス」処理により、鱗翅目幼虫は既存殺虫剤では認められない特徴的な体収縮症状を示す。リアノジン受容体を活性化することにより、細胞内のカルシウム濃度を高め、筋収縮を引き起こすという。新規作用機構を有することから殺虫剤抵抗性対策剤として期待されるほか、人畜毒性が低くIPM(総合的病害虫・雑草管理)適合剤としても注目されている。
 「アクセル」(同:メタフルミゾン)はセミカルバゾン系の殺虫剤。鱗翅目害虫および甲虫類に対して卓越した効果が期待されている。特に、甲虫類では「フェニックス」にないスペクトラムの特徴を有する。対象作物は野菜、綿。
 また、ファイヤーアント(蟻類)への効果も期待されているほか、蚤(のみ)への効果など農業分野以外での展開も注目されている。BASFとの共同開発で、同社のコードは「BAS 320I」。
 「コルト」(同:ピリフルキナゾン)は半翅目害虫防除剤に位置づけられる。アブラムシ、カイガラムシ、コナジラミ、アザミウマ類などに卓越した効果を発揮するものとして期待されている。特に、タバココナジラミ・バイオタイプQ対策には朗報か。対象作物は野菜、果樹、茶。
 「コルト」も新規系統の化合物。既存の殺虫剤に感受性が低下したものに対しても顕著な効果を示す。新たなIBR(昆虫行動制御)剤として注目される。
 【解説】 日本農薬(株)は1995(平成7)年11月、大阪府河内長野市に総合研究所を完成させた。総敷地面積約7万1000m2で、約100億円を投資した。
 当時、業界は「どうして100億円をも投資したのか」と疑問視していたが、同社は殺菌剤のブイゲット(一般名:チアジニル)を皮切りに、今回のフェニックス、アクセル、コルトを成就させ、当時の疑問視を払拭していると思える。
 フェニックスは筋収縮に重要な働きを担うカルシウムチャネル(リアノジン受容体)に作用するが、その詳細の解明は今後に待たれている。

(2006.11.1)


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