農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 今村奈良臣の「地域農業活性化塾」

六次産業で地域おこし

 「せら夢高原六次産業ネットワーク」という大変ユニークな組織がある。広島県東北部の中山間地域に世羅郡があるが、その郡内3町全域をカバーして、活発に多彩な活動をしている組織である。では、「六次産業」とは何か。これは、私が10年程前から提唱してきたことであるが、農業の六次産業化、つまり、一次産業×二次産業×三次産業=六次産業というものである。農産物を原料のまま売るのではなく、原料を巧みに加工し、消費者に好まれるように流通や販売まで心を配り、付加価値と就業の場を殖やして、農村をより豊かにし、活力をとりもどそうという提案である。このネットワークの1グループがいま取り組んでいる“大豆テンペで健康づくり”もその一例である。この地域は広島県下の大豆生産量の半分も生産する主産地であるが、これを地域おこしに生かそうとしている。大豆を煮てテンペ菌を加え発酵させてテンペを作り、それを原料にして多彩な料理や菓子類を作ろうとしている。テンペ入りウィンナーソーセージ、ハンバーグ、ギョウザ、パン、ケーキと多彩である。テンペは納豆のように臭いやぬめりが無く、栄養素に富み、冷凍保存がきき多彩な用途がある。これを地域活性化のいま1つの目玉にしようとしている。
 さて、このせら夢高原ネットワークに加入している会員は45団体、会員数850人。会員には果樹園や花農園などの農業生産法人もいれば、個人農場、産直市場や直売所、酪農家のアイスクリームまで多彩である。850人の会員の6割強は女性で、リーダーシップを発揮している。この会員の(外部への販売を除く地域内の)直接売上げは実に14億円、地域への入込み客数は107万人(02年度)。近年の不況の中にもかかわらず売上げも客数も着実に伸びている。「自らの地域の活力は自らの手で」というバイタリティに富んだこのネットワークの活動が中山間地域に新しい光をもたらしている。  (2004.3.4)


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