農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 今村奈良臣の「地域農業活性化塾」

営農・販売改革がJAの生命線だ
―JA―IT研究会への招待―

 去る4月27日に全中において開催された第12回経済事業改革中央本部委員会に提出されたJAの販売事業にかかわる平成14年度決算にもとづく資料を見ると、驚くべき事態が報告され心を痛めている。その要点のみをまず列記してみよう。
 (1)JAの販売事業取り扱い額は10年間で20%減少している(平成5年の5兆9335億円から平成14年には4兆7351億円へ)。
 (2)販売事業は委託販売を基本とし、その手数料についても食管時代の米集荷代行手数料を基準とした定額手数料体系(米3%、青果物2%)となっているため、事業総利益も約2割減少している(平成5年1628億円、平成14年1349億円)。
 (3)他方、販売事業関係の職員数については、パート等の臨時職員の割合は増加しているが、全体では10年間2万2000人でほぼ横ばいとなっている(平成5年販売職員1万9600人、同パート2600人、平成14年販売職員1万7500人、同パート4700人)。
 (4)以上の結果、販売事業の労働生産性(販売事業総利益/販売事業職員数)は、この10年で20%低下している(平成5年832万円、平成14年771万円、なお購買事業は事業総利益の減少を要員のリストラで対応し、10年間の減少も10%程度となっている)。
 (5)販売事業については、集荷と販売にかかわるコストが回収できておらず、今後も赤字傾向が継続し、機能が低下することも懸念されるとともに、経済事業の収支確立が見通せない状況にある。
 (6)JAの基幹事業である販売事業が機能を発揮し、国民に安全・安心な農産物を供給し続けていくためには、集荷・販売にかかるコストの回収とコスト低減をはかることが重要であり、同時に販売事業システムの見直しが必要となる。
 以上が第12回経済事業改革中央本部委員会に提出されたJAの販売事業の最近の実態と問題点の要点である。ただし、この委員会でどのような討議と決定が行われたかは、まだ公表されていないので判らない。
 営農指導事業と販売事業はJAの根幹であり、この分野の改善、改革こそがJA改革の基本課題であるとの考え方に立ち、3年半前にJA―IT研究会を発足させたことは前回述べた通りである。
 そこで、JA―IT研究会ではその改革路線としてどういう提案と討議が進められてきたか、その核心部分の一端を紹介しておこう。
 JA―IT研究会の副代表の黒澤賢治氏は周知のようにJA甘楽富岡の営農・販売事業の改革を進め輝かしい成果を収め、さらに今はJA高崎ハムの常務としてその再建に全力をあげているが、紙数の制約もあるため、黒澤氏の語録というかたちでキャッチ・フレーズを並べてみよう(詳しくは「JA販売事業の課題と地域生産物をまるごと売るマーケティングの実際」『農村文化運動』第176号、農文協、400円、参照)。
 (1)JAの販売事業は、市場への丸投げを行う集出荷事業でしかなかった―― 市場依存からの脱却を――(2)営農経済事業発展のかなめは販売事業にある、(3)青果物流通の最新事情を分析しJAの直接取引の可能性を追求する、(4)量販店も安売り競争だけしていられない――PB商品の開発の重要性、(5)代金回収リスクの問題を市場流通依存の理由にしてはならない、(6)地域農業のトータルコーディネートへの道こそがJAの基本路線、(7)計画生産・計画販売へむけて、まず地域農業の調査の実施を、(8)地域農業のコーディネートをするために必要な3つの要件、(9)地域の生産物と地域の多様な組合員をしっかり把握し潜在能力を発揮させる、(10)JAの強みを活かした地域農業のトータルコーディネート――生産から食文化まで一気通貫で――、(11)JAの直接販売の体制整備こそ当面する基本課題、(12)直接販売のかなめ――パッケージセンターの設置、(13)商品開発委員会の設置と量販店との共同開発、(14)食品加工産業との連携、(15)販売促進委員会の設置、(16)JA間連携の必要性、(17)地域産物まるごと売りをめざす量販店へのプレゼンテーションの重要性。今回はこの程度の紹介にとどめるが、次回を楽しみにしていただきたい。
(2005.5.13)


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