農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 今村奈良臣の「地域農業活性化塾」

直売所発展戦略
―P−six理論の紹介―

 「あつまれ、直売活動の実践者、ともにめざそう、直売活動の発展」という、私が副理事長をつとめている(財)都市農山漁村交流活性化機構(まちむら交流きこう)の呼びかけのもとに、実に550人を超えるという多数が、去る2月14〜15日、熊本市に集まった。
 第1回全国農産物直売サミットの西日本会場で、東日本会場は昨年11月に千葉県八千代市でここにも350人を超える人々が参集し、合わせれば900人を超える人々が全国から集まったことになる(東日本会場については本紙05年11月30日付参照)。
 参加者は旅費や参加費はすべて自弁であるにもかかわらず、大会議場を埋めつくし熱気に充ち、また、事前に求めた大会での質問事項は、組織運営、商品の品揃え、魅力づくりと集客、競争・競合の問題、生産振興のあり方、指導・支援のあり方など実に117件にも及ぶという熱心さであった。
 大会は、(株)農村開発リサーチの田中満氏の情勢報告、佐賀「鳴神の庄」の吉村岩男氏の実践活動報告、熊本「養生市場」の賀久清豪氏及び「水辺プラザかもと」の古荘和行氏の二人の視察直売所の報告、その後、パネルディスカッションでは、大阪府「能勢町観光物産センター」森田智史、徳島「百姓一」中野統夫、福岡「あんずの里市利用組合」井ノ口ツヤ子、熊本「七城メロンドーム」河野孝一郎の各氏が田中満氏の司会のもとに熱弁をふるわせていた。
 さて、内容豊富だった大会の紹介はここでは残念ながら省略して、東西2会場における報告、討議そして質問を通してみて、農産物直売所をいかに発展させ、成功に導くかという基本戦略について、私なりに判りやすく理論的総括と合わせて問題提起をしてみたい。
 私の考え方を判りやすく表現したのが別図に示したP−six理論である。理論と言っても決して難しいものではない。かねてよりこの理論は農産物一般の販売戦略理論として述べてきたが、直売所に焦点を絞って述べてみよう。
 図の頂点はすべてPで始まる英単語で表現されており、また、六角形の右辺は市場的条件、左辺は主体的条件という、2つの側面から構成されている。
 production(プロダクション、生産)。その基本は売れるものを作るということである。消費者が真に求めているものは何かということをしっかりとつかみ、生産、供給することである。近隣のスーパーやコンビニとは決定的に異なる個性を明確に打ち出さなくてはならない。特に、野菜や果物や米はもちろん、農産物加工品に至るまで、安心、安全を基本とし、生産履歴や生産者名がきちんと判るような表示が必要である。とりわけ消費者がいま求めているものは地域個性をもった伝統的な農産物や加工品である。市場からの仕入品の多い直売所は消費者に見放され衰退してきている。
 place(プレイス、売り場)。作ったものをどういう売り場で、どういう売り方で売るかということも重要である。清潔、明るさ、広さ、陳列方法などはもちろんだが、毎日、生産者が交代でもよい、レジ脇に立って消費者と会話を交わし意見を聞くこと、提案を聞くことが非常に重要だと思う。要するに消費者に生産者の顔が見えるということだ。
 price(プライス、価格)。一言で言えば、値ごろ感ということである。消費者も手を出したくなり、生産者のふところも暖まる、という値ごろ感である。しかし、安売り競争は決してしてはいけない。安売り競争をしてきた直売所は、結局、消費者に見放されてつぶれてしまっている。
 次に左辺の主体的条件について考えよう。
 promotion(プロモーション、やる気、動機づけ)。判りやすく言えば、生産者、出荷者にやる気を起こさせることである。とりわけ、地域の女性と高齢技能者が消費者に自分たちの作ったものを喜んで買ってもらえるという自信と喜びを味わってもらうことが重要である。もちろん、ふところも暖まる。その自信と喜びを実現する場が直売所であるということだ。直売所の求心力を高めて欲しい。
 positioning(ポジショニング、立地)。立地条件を徹底して生かすことである。直売所の立地も重要だが、それ以上に重要なことは、農産物の生産にあたり、地域農業のおかれた立地特性を引き出し、それを生かす生産に励むことが重要である。中山間地域で条件不利を嘆くことはない。逆に、その立地条件を生かし、多種多様な農産物を生産し、消費者を引きつけている直売所は多い。
 personality(パーソナリティ、人材)。農業ほど人材を必要とする産業はない、というのが私のかねてよりの持論であるが、直売所も同様、人材こそが基本である。広く人材を求め増やしすぐれたリーダーとスタッフを育てることが基本である。全国の色々な直売所を調査してみて判ることだが、活況を呈している直売所には、すぐれたリーダーと直売活動を日々推進していくすぐれたスタッフ、そして熱意に燃えた生産者がいるということである。リーダー、スタッフ、生産者、この3つがそろって直売所は発展するということを強調しておきたい。
 以上、P−six理論を簡潔に述べたが、この六角形の各頂点を10点満点として、各自の直売所はそれぞれのPが現状では何点であるか、自己評価の上で採点してみていただきたい。各頂点をいかに10点に近づけるか、その改善、改革の方向を考えてみていただきたい。それが、直売所発展の道につながると私は考えている。
販売所の発展戦略とシステム(P-six理論)
(2006.3.24)


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