農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 日系農協の底力を見た!(10)

南米ブラジルで不屈の精神発揮



◆経営革新の大規模農協インテグラーダ

 旧インテグラーダ農業協同組合は、コチア産業組合中央会(略称コチア)の解散により、穀物サイロや販売施設を一挙に失いました。厳しい事態にもかかわらず、コチア時代の日経組合員が中心になって1995年に、借金の担保になっているコチアの施設を引き継ぐために、新生「インテグラーダ農業協同組合」が設立されました。
 本部事務所は、ブラジル南部パラナ州ロンドリーナ市にあります。コチア時代に預けた6000万円以上の資金が回収不能となり悲嘆にくれた人もいました。多くの組合員がコチア倒産の影響で、悲惨な農業経営を強いられる最悪の状況の中でしたが、心をひとつにして結集し、再建に立ち上がったのです。新しい農協の活動地域は、パラナ州、サンパウロ州の一部、サンタ・カタリーナ州の一部に大きく広がりました。したがって、くみあい事務所は本店支店合わせて15店舗が各州に展開しています。
 再建の過程で、2001年に穀物サイロ、農産物集出荷場、植林農地など9施設を設け、さらに2002年に3施設を建設、2003年にコープラミル農協の6施設を吸収し、18施設を所有するに至りました。穀物サイロ(小型受入施設を含む)は41箇所となり、収容能力は約46万4000トンを誇っています。
 綿花の生産加工にも力を入れています。現在、サンタ・カタリーナ州に紡績工場を設置し、製品をサンパウロ州、パラナ州、サンタ・カタリーナ州に出荷していますが、サンタ・カタリーナ州では木綿出荷の85%を占めています。
 そればかりではありません。ジュース工場に加えて、事業の多角化を図るために、トウモロコシや大豆の加工工場を建設し大規模な飼料生産を行い、畜産農家用、ペット用、養魚用として販売し付加価値増殖に努めています。大豆の搾油工場、小麦の製粉工場もあり組合員の要望に積極的に応えています。現在、組合員は3290名(ブラジル人が70%)、職員は1150名(ほとんどがブラジル人)という陣容です。この組合では、職員を「協力者」と呼び、組合運動の同志として処遇しているのは注目していいでしょう。
 副組合長の小山ジュリョ・晃さんは、(1)設備投資に見合う自己資本の充実、(2)剰余金の50%を組合員に還元し50%を新規投資準備金として留保すること、を課題として掲げています。さらに、協同組合理念の普及のため、圧倒的に多数のブラジル人組合員を含め全組合員に対して、日本の協同組合運動を手本にした教育を徹底して行っています。

◆相互扶助精神で南伯傘下農協を再建

 次いで、南伯農業協同組合中央会(略称南伯)傘下の日経農協の再建物語です。サンミゲル・アルカンジョ南伯協同組合の苦難に満ちた闘いと勝利は、組合員の協同組合運動に寄せる情熱がもたらしたものにほかなりません。包装施設を整備充実し、野菜(トマト、キャベツ)、果物(ブドウ、柿、びわ、ぽんかん)を、統一規格で共同出荷しており、市場の評価を大いに高めています。
 組合員150名(ブラジル人が多数)と規模は小さい組合ですが、南伯の倒産で深刻な打撃を受けたにもかかわらず、市瀬茂生理事長のもとで、出荷物の品質向上に向けて懸命な努力を重ね、健全経営の道を進んでいます。
 市瀬さんは、ぶどう栽培のかたわら、弁護士として法曹界で活躍し、地域の信望を集めている人物。1996年から組合長の重責を担っている45歳の若き指導者です。

◆振り返れば、南米だった!

 ブラジルの日系農協のひたむきな活動の底流には、日本人の美点である勤勉性とともに「不撓不屈の魂」があるのを痛いほど感じます。
 21世紀の世界の食料基地としての地位を確立したブラジル、そしてパラグアイ、ボリビアの国々、無限の可能性を持つ南米の大地で日系農協の活躍を大いに期待したいものです。
(NPO法人国際開発フロンティア機構会長 山内偉生)

(2005.2.17)



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