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コラム


ありがとう『長嶋茂雄』

 マリナーズのイチロー外野手は、1911年にジョー・ジャクソンがつくったメジャーの新人シーズン最多安打記録「233安打」を塗替えた。ジョー・ジャクソンは、映画「フィールド・オブ・ドリーム」でも“シューレス・ジョー”のあだ名で親しまれている伝説の野球人。シューレス・ジョー(裸足のジョー)のいわれは、マイナー時代、足に合わない靴を脱いで裸足でプレーしたことから付けられたそうだが、90年ぶりにその偉大な選手を蘇らせたイチローの活躍はまさに特筆もの。
 ミスタージャイアンツ、ミスタープロ野球の長嶋茂雄が「組織である以上、若返りこそが急務」として、プロ野球生活に別れを告げた。「野球とは」と問われて「人生そのもの」と応えるその笑顔は充足感で一杯。
 われわれ50歳代のファンも‘74年に「わが巨人軍は永久に不滅です」という名言を残して現役を引退したときの寂しさ。翌75年から6年間監督をつとめ、2度のリーグ優勝を果たしながら突然、解任されたときのショックに比べると、今回の退任はなぜか「ホッ」とした気分になる。
 世紀が変わり、野茂、佐々木、イチロー、新庄等の日本選手が大リーグで活躍する、ホンマもんの大リーグの時代が来た。日本のプロ野球がいつまでも長嶋人気におんぶに抱っこで支えきれるわけがない。この世界も確実に構造改革を必要としている。この男は、その辺の匂いを持ち前の動物的感で敏感にキャッチしたに違いない。
 長嶋茂雄は、日本の高度経済成長を象徴とした男といわれる。今は、未曾有の不況。おまけに、アメリカへのテロ攻撃、狂牛病などショッキングな事件がつづく。長嶋監督の退任劇は、彼の活躍に一喜一憂し、日本の高度経済成長を懸命に支えたわれわれ中高年サラリーマンの「いわゆる一つ」の時代が終わったことを告げているのだろう。
 「シエーン カムバック」はもうやめよう。イチローがシューレス・ジョーを蘇らせたように、何年か後に、長嶋を超えるヒーローがでてきたときに「記憶の男・長嶋」が再び蘇ることだろう。さらば、いや、ありがとう、『長嶋茂雄』。   (だだっ児)


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