農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 落ち穂
ふるさと納税

 満開の八重桜が鮮やかなピンク色に染めて重たげに咲き誇る。ライラックが漸く、紫色の花を開こうとしている。色とりどりのチューリップが凛として立っている。5月下旬、訪れた北海道の春景色は、周囲が新緑に包まれ、陽光が一段と明るく見事だ。この北海道が私のふるさと?いや、ここは出身地。実際は札幌から北に100キロも離れている田舎町がほんとうのふるさと。
 今回、札幌―小樽―苫小牧と駆け足で廻ったが、札幌駅周辺は本州資本が投入され、大きなビルが立ち並び、昔の面影は今や殆んど残っていない。小樽も築港駅に隣接して、裕次郎記念館とヒルトン小樽とかの馬鹿でかい商業施設があるが、平日とあってか閑散としている。苫小牧は、北海道に入る貨物の玄関口だが、まだまだ大物流基地には遠いようだ。
 6月のはじめ、今度は山登りの仲間と南九州に飛んだ。登山行程には日本百名山の韓国岳や開門岳もあるが、お目当ては、霧島山の縦走コースに群生するミヤマキリシマ。丁度折りよく満開、それこそ花を掻き分け登山ルートを歩む。花で赤く染まる周囲の山々の姿も圧巻。途中立ち寄った霧島神宮駅でみた市の広報誌によると、この霧島、5月、東京に「首都圏霧島市ふるさと会」が設立されたとある。霧島は神話の里や日本初の国立公園山系を売りにするが、高齢化と過疎化に悩む姿は全国どこも同じかと考えさせられる。
 折しも、政府・与党は、拡大する都市と地方の税収格差是正策として、「ふるさと納税」なるものを打ち出した。これは住民税の1割程度をふるさとに納める構想で、参議院選挙を前にした自民党の選挙対策のパフォーマンスだ、住民税の受益者負担の原則からすればおかしい、地方格差の国の免責を認めるようなもの、石原都知事にいたっては「ナンセンス」だのと、賛否両論が渦巻く。
 この「ふるさと納税」なる言葉は、自分ら田舎からでてきて都会に住む者の心をくすぐる。でも、自分の代は税金が増えないなら、1割でも2割でも納めてもいいが、都会育ちの子供、孫の世代へと続くかは疑問。ましてや、年金の管理すら碌にできない行政に、ふるさと税の管理ができるのかもあやしい。しかし、霧島市ふるさと会じゃないが、ふるさとは遠くにあっても気になるのは事実。ここはせめて、田舎に残った学童時代の仲間が製造・販売していると聞く、トマトジュース「あかずきんちゃん」の定期購買でもしようか…。(だだっ児)

(2007.6.18)

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