農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム  大仁田厚のファイヤー農業革命


農業大国ニッポンを築こう!

消費者の笑顔を思い浮かべて作ってほしい

 この『ファイヤー農業革命』も、とうとう今回で最終回。今まで1年近くにわたる連載を読んでくださった方々には感謝感謝の雨アラレ、ファイヤー! ……のっけからプロレス流になってしまったが、軌道修正して筆を進めよう。
 小泉政権誕生以後、2人目の農水大臣が先代に続いて叩かれている状況に、国会議員の一人として悲しい思いを感じている今日この頃。
 今、日本の農業は過渡期を迎えている。いつまでもあると思うな親と金ではないが、いつまでもアメリカや中国が食糧を供給してくれるわけではない。
 以前も連載の中で触れたように、子供たちが教育の中で土と親しみ、農業の厳しさ楽しさを学ぶ環境を作り上げることが急務とされる。
 小学校の頃、芋掘りの課外授業でツルを引っ張ってイモを掘り出し、畑のど真ん中でふかしてもらい、それを味わった時の驚きは大人になっても忘れられないものだ。ああ、サツマイモって、こんなにうまかったんだ――そんな感動によって、そのイモは子供だったオレの中で特別な“スーパーパワーアップ芋”になっていたのである。
 その時、イモ嫌いなC君が一人、イモを目の前にじっと立っていた。それに気づいた先生が、C君になぜ食べようとしないのか問い質すと、かわりに同級生の一人が「C君はイモが嫌いなんです」と答えた。
 それを聞いて先生は言うのだった。「お前らなぁ、オレが子供の頃は戦時中でイモだって満足に食えなかったんだぞ」と。そんなこと言われたって時代が違うよと内心、思っていたが、先生は真剣な眼差しでオレたち生徒に語りかけてくる。
 すると、C君は観念したのか、意を決してイモを頬張り始めた。オレたちはC君の顔をのぞき込むように見ていたが、どんどん表情が明るくなっていくのがわかった。そして、C君が思わずつぶやいた。「あれ?本当のイモって、こんなに甘いんだ!」――。その一言に、誰からともなく拍手が沸き起こったのだった。
 それから、やはり給食を残せば担任の先生に「何が食べられないとか贅沢を言うんじゃない」と叱られた。大人になって今、そんなことを懐かしく思い出し、と同時に先生たちの言いたかったことがよくわかる気がする。食物というのは、丹精込めて育ててくれた人たちに感謝して味あわなければいけないと。
 しかし、昨今においてはBSE問題をはじめ、中国野菜の農薬の問題、産地偽装問題などが取り沙汰され、食の安全について消費者も敏感になっている。そんな今だからこそ、消費者の笑顔を思い浮かべて真心を込めて作物を育てていってほしいと思うのである。
 消費者と生産者が信頼を取り戻し、共に“農業大国・日本”を築いていくことを願ってやまない。そのためにも、子供たちに農業を体験して、食べ物を粗末にしないことを学んでほしいのだ。

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 さて、ここまで10回の連載を通して様々な意見を述べてきましたが、「農業と教育」をテーマに掲げて農業の活性化を推進する者の一人として、今後とも農業に従事する方々と力を合わせて活動していきたいと思っています。“農業教育大国”の実現を目指して、それぞれの立場で頑張りましょう。
 最後に、この連載の機会を与えてくれた農協新聞の編集部、そして、もちろん読者の皆さんに、改めて感謝を申し上げます。ありがとうございました。このような機会に再び恵まれること、また農業に関わる方々と直接に対話して意見を交換できる機会のあることを、切に願う次第です。 (大仁田 厚) (2003.4.14)

大仁田 厚 公式ホームページ http://www.onita.co.jp


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