農業協同組合新聞 JACOM
   
この人と語る21世紀のアグリビジネス
軸足を農家組合員におき肥料のコスト低減をめざす
全農グリーンリソース(株) 代表取締役社長 藤村 征夫氏
インタビュアー 坂田正通本紙論説委員
 
 全農グリーンリソースは、肥料原料・製品などの輸出入業務や港湾での荷役・保管・輸送業務を一貫して行っている会社で、創立して38年が経つ。昨年、同社の社長に就任した藤村征夫社長は、長年、全農の企画の中枢を歩み役員として活躍されてきた経験を活かしながら、JAグループで初めて、環境問題に対応した「グリーン経営」認証を取得するなど、これからの社会を見据えた経営を実践してきている。そこで同社の事業のあり方や経営者としての考えを聞いた。

 ◆肥料の川上から川下までを一貫する輸出入・物流を担う
全農グリーンリソース(株) 代表取締役社長 藤村 征夫
ふじむら まさお
昭和20年生まれ。岩手大学農学部卒。昭和42年JA全農入会、平成7年JA全農総合企画部長、8年東京支所支所長、11年常任監事、14年監事、17年全農グリーンリソース(株)専務取締役、18年より現職。

 ――会社が設立されて何年ですか。

 「昭和44年に新東バースとして設立されてから38年になります。」

 ――設立の目的はどこにあったのでしょうか。

 「肥料の国産品と海外品との価格差が広がり、農家が安い肥料を手に入れるためにどうするかが全農(当時は全購連)のテーマでした。そのために、国内肥料メーカーの再編成、海外資源である肥料を輸入するための物流拠点、そして系統肥料専用船の就航の3つが、全購連が主導する低コスト海外原料資源の優先的確保対策プロジェクトだったわけです。つまり、肥料流通のコスト低減がこのプロジェクトの理念だったわけです」
 「そのなかでわが社は新潟市東港に位置する港湾物流基地の運営に全面的に責任を負ってきました。その後、51年に広島支店、63年には『全農バース』に社名変更し、消費県に対応するために八戸・鹿島・衣浦の拠点を整備してきました。平成17年に組合貿易の肥料農薬を中心とした品目・業務が移管されたことに伴って社名を『全農グリーンリソース』としました」

 ――コスト低減が最大の目的だったわけですね。

 「38年前に肥料のコスト低減をするために、国内だけでは対応できないことについてどうするか、当時の全購連は資金も使いながら答えを出そうとしたわけです。この会社はそういう会社だということを踏まえて経営していかなければいけないと私は考えています」

 ――組合貿易の肥料農薬部門が移管され、貿易業務もされるわけですね。

 「肥料を中心にした山元である川上から、港湾荷役、BB工場など川下までを一貫する輸出入・物流サービスを担う会社になりましたので、さらにコスト低減をどう実践していくのか。農家の置かれた状態にどういう形で応えられるのか、ということが課題だと考えています」

◆「ワーク」と「ライフ」のバランスがとれていると自負

 ――社長は、全農の企画の中枢を歩かれて全農の役員を勤められてこられました。そして昨年からアグリビジネスの社会にはいられたわけですが、会社経営についてどのように考えられていますか。

 「常に黒字計上できる、それが継続できる会社でなければならないと思います。そしてコンプライアンスと社会的に信頼されることが会社運営の基本だと考えています。会社は誰のためのものかというと、かつては社長のものとか、株主のものあるいは従業員のものといわれました。しかし私は、消費者国民から『この会社はこういうことをやって社会に貢献しているんだな』と認められる、社会に認められる会社でなければいけないと思います。社会に認められることのなかに、株主も従業員もあると思っています」

 ――組合貿易から人も移ってきて問題は起きていませんか。

 「私は歴史の違いを活かしながらの良い風土ができつつあると考えています」

 ――そういえるポイントはなんですか。

 「『うちの会社はいい会社だ。移って良かった』といえるように社員の活力を維持していくことだと思います」
 「もう少し具体的にいいますと、1つは頑張れば赤字にならない。2つ目は、何でもしゃべれる、上司もすべてではないがまあ聞いてくれる。しかし、それでバラバラになっては意味がないので決まったことはみんなで実行する雰囲気がある。3つ目は、創立記念行事をキチンと行ったり、OB会などのイベントを大事にするとか福利厚生が悪くないこと。そして、日ごろは感じないけれど何かのときに『全農グループの一員ですね』といわれるなど、全農ブランドの恩恵にあずかることもあることです」
 「つまり、『ワーク』と『ライフ』のバランスがほどほどに整っている会社だと自負しています」

◆プロとしての専門性をもっと磨く 中国へ語学研修も

全農グリーンリソース(株) 代表取締役社長 藤村 征夫

 ――JAへ「高いノウハウと安いコストによる価値の高い仕事」の提供をめざすと会社概要にありますね。

 「基本的には、JAあっての全農グリーンリソースだということを機会があるごとにいっています。港湾荷役だけをやっていると、ついついわれわれは倉庫業界の仲間だと考えがちです。それは事実ですが、軸足は農家でありその組織であるJAにキチンと置いていないと仕事を間違うと思います」

 ――高いノウハウを築くためにどういうことを…。

 「輸出入に関わるノウハウ、港湾荷役・保管・加工包装・運送業務およびバース管理、施設・財務・情報システムなどの管理などの仕事がありますが、いずれもプロとしての業務遂行が求められています。そのため、それぞれがプロとしての専門性をもっと磨けといっています。そして、いま現場では全員が自分の仕事に必要な国家資格や県などが認定する資格を取得していて、10以上のそうした資格を取得している人もいます」

 ――港湾現場以外でもですか。

 「海外事業に所属する人は、最低、英語と業務のメインである中国語を取得することにしています。とくに中国語については、手を上げれば1年間語学留学できる制度をつくりました」

◆CSR&環境レポートを発行―全農グループで初めて

 ――「グリーン経営」の認証を取得されていますが、これは全農グループでは初めてのことですね。 また「18年度CSR&環境レポート」を出されましたが、これも初めてのことですね。 CSRとは、企業の社会的責任ということですね。

 「CSR&環境レポートを発行したのは、企業の社会的責任がますます問われるなかで、JAグループの一員として、わが社のコンプライアンス経営をより充実させること。JAグループでは初めてとなる『グリーン経営』の認証を機にわが社の取組みをまとめ第1号として発行しました」

 ――どういう人を対象に発行されたのですか。

 「社員が主体ですが、株主であり荷主でもある全農、BB工場、肥料メーカーです」

 ――「グリーン経営」とはどういうものなのでしょうか。

 「すでに2000年版の環境ISOを取得・更新して取組んできていましたが、ISOの取組みをより発展できること、5つの事業所と本社の全職場で具体的な目標をもって実践できることをめざして昨年8月にこの認証を取得しました」
 「一番の目的は、Co2削減やエネルギー効率的な取組みを目標を掲げてキチンと実践している会社であることを社会的に示していくことです。まだ、1年経っていませんが、電気や燃料の使用削減については全職場で計画目標値を設定、全ての項目でクリアできましたし、社員への環境問題に対する意識づけにもなり、よかったなと思います」

 ――最後にJAグループへのメッセージとかアドバイスをお願いします。

 「時代の変化のなかで表れてきた日本の農業・農政の諸矛盾を全農が背負わされ、矢面にたたせられていると思います。全農として考えていることを、必死になって内部だけではなく、世に問うことをしていかないといけないのではないかと思いますね。そのときに、JAグループの主人公は農家組合員だという原点を忘れてはならないですね」
「一部の「勝ち組」が差配しつつあるグローバル経済の下で、全農がもつ社会的事業価値の再生が重要で、わが社も全農グループの一員としてそれを担っていかなければと考えています。」

 ――今日はお忙しいなかありがとうございました。


インタビューを終えて  
 藤村社長は岩手県出身。良くも悪くも岩手人と自分でも言う、平民宰相・原敬、詩人・宮沢賢治、石川啄木、現在では政治家・小沢一郎もいる。篤実、努力、明るさは少ない。藤村さんは、農学校の先生になりたかったという。小さい頃からスポーツマン、相撲、柔道、野球、ゴルフ。今は奥さんと一緒に、健康のため太極拳をする。50代前半から始めてもう10年になる。「気」が大切の呼吸法を学ぶという。
 JA全農で監事が長かったので、全農グリーンリソース(株)の社長で執行する立場に変り仕事を楽しんでいる。しかし、藤村さんは会社人間よりも組織人が似合う。BB肥料など需要先のJAから信頼が厚く、弁舌もさわやか。岩手地域をベースにJA理事や組合長、または議員を目指し、再び中央に戻って来る再チャレンジの道も将来はある。そういう人に私はなりたいと手を上げてほしい。娘さん3人。(坂田)
(2007.6.6)

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