農業協同組合新聞 JACOM
 
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シリーズ・生協21世紀の挑戦

遂に生協の地域分権化が実現
生活クラブ生協・神奈川(上)

今野 聰 (財)協同組合経営研究所元研究員
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 生活クラブ生協・神奈川の地域生協設立が進んでいる。さる2003年12月2日、県内5生協のひとつ新しい生協「さがみ生活クラブ生協」が設立された。次の2004年度は組合員10660人、供給高29億9700万円が計画された。班、個配、デポーという3共同購入事業をもつ。「デポー」とは、聞き慣れない言葉で、後で詳述したい。ここではとりあえず、小型店舗型の共同購入形態であるとしておこう。
 基になった旧組織は、生活クラブ生協・神奈川の県央、相模両ブロック生協と、相武台デポー支部、南林間デポー支部である。従って忽然と新生協が登場したのではない。周到な準備をおこない、「大ぜいの組合員」参加の討議を踏まえて設立されたことが判る。
 生活クラブ生協・神奈川は、このようにして、12月上旬、県内を分割・分権し、5つの個別生協(横浜北、横浜みなみ、かわさき、湘南、さがみ)を創立した。1971年創立以来の本部はJR新横浜駅前に生協法人として残り、5つの地域生協と「業務提携に関する基本契約」を締結する。これによって5つの地域生協の決算管理、資産資金管理など多くの共通部分を受委託するという。こうまでして分割地域化する狙いは何か。全国の生協、農協で、こうした稀な分権化がどんな21世紀的意義をもつだろうか。
 この日、創立総会審議案の討議は淡々と進み、討議状況がいかに濃密であったかを窺わせるものだった。議案書でこの間の経過を簡単に触れる。
 ・1971年:横浜市緑区に「みどり生協」が設立。
 ・1980年:組合員25000人。県内を6地域ブロックに分け、地域運営に入った。
 ・1992年:6地域ブロックから11ブロック生協を設立、以降10年かけて法人化する「ブロック単協化」の試みをスタートした。
 ・2001年:中期計画を策定(2001〜2005)し、2003年度をめどに法人化した地域生協を実現することにした。
 ・2003年:5つの新地域生協設立総会の開催を決定した。
 この経過を見ると、いかにも組織いじりではないのかとの疑念が湧く。全農での直販事業を通じて、この生協と長い交流があった。そこが全国の生活クラブ生協グループ(北海道から愛知県まで組合員25万人、供給高754億円―2002年度)でも神奈川県域の特徴を、判りやすく整理してみよう。
 (1)1970年代初期、東急電鉄労働組合出身者が、田園都市線沿線の地域政策立案グループをつくった。それが生協創立に進んだ。住宅取得とローン設定とか、住民本位とは何か。そうした沿線開発業務のノウハウを身につけていた。これが組合員の急速拡大につながった。
 (2)大学生協出身者が展開した地域生協化でなかったから、先行モデルにとらわれなかった。とりわけ、企業の上意下達、社長への権力集中を嫌う気風が身に付いていた。つまり分権化した日常業務、組織運営で組合員参加型の重視になった。
 (3) 既成の協同組合論をさほど意識しないで、大胆な運動・事業仮説を設定する職場風土を作り上げてきた。特に地域に広がるとは何かを徹底討議する職場風土になった。
 (4) 以上のことは、県内最大のコープかながわの運動、事業を良い意味で競争のプラス要素に転化することになった。
 ではデポーを含む事業内容はどうか。次回触れよう。(続く) (2004.2.16)


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