農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
消費者の目

「またか!」


 食肉製造加工会社ミートホープが牛肉コロッケに豚肉などを混ぜていました。「またか!」というのが正直な感想です。牛肉と豚肉を混ぜて挽肉にすれば合挽。合挽を牛挽肉と偽って販売すれば詐欺でしょう。ミートホープは豚の心臓や鴨肉を混ぜて挽肉にし、コロッケを作っていました。それを牛肉コロッケと偽って販売していたので消費者を騙したことになります。おまけに国産の鶏肉のパッケージをコピーして、輸入した鶏肉を詰めて販売していたそうですから、これはもう立派な犯罪でしょう。こんなことをする企業ですから、きっと製造管理もずさんだったのではないかと思っていたら、冷凍肉を雨水で解凍していたとの事。怒りを通り越して呆れるばかりです。

 自分で料理をする方ならお分かりと思いますが、料理に適した肉を選ぶことは非常に重要です。我が家ではハンバーグには牛挽肉より合挽肉を使います。牛肉100%よりも肉汁が豊富で風味があり、やわらかく焼きあがりますので私は合挽のハンバーグの方が好きです。何でも高い肉使えば良いというものではなく、料理によって部位を使い分けるのは料理の常識です。また、家畜の大切な命をいただくのですから、捨てるところの無いように工夫するのは決して悪いことではありません。ソーセージは脂肪や屑肉をミンチにして羊などの小腸に詰めたものですが、これなどは屑肉や脂肪も無駄にしない工夫の最たるものかもしれません。高級なロースハムも良いですが、毎日食べるのであればソーセージの方が飽きないのではないでしょうか。

 しかし、消費者の中に「牛肉=おいしい」というイメージが出来上がっていることは否定できません。豚肉や鶏肉の美味しさを100%引き出す料理を食べたことが無い子供が増えていることも牛肉神話に拍車をかけているかも知れません。いずれにしても消費者は「牛肉」という響きに弱い。そこにミートホープのつけこむ隙があったことは否定できません。今の日本人はブランドに目がくらんで、自らの身を守る智恵も、感覚も失っているのではないでしょうか。本当に美味いものに触れて、違いの分かる消費者にならなければ、ミートホープのようにブランドへの盲信を逆手に取る業者を我々は見抜くことは出来ないでしょう。

 「インスタントは好かん。何が入っとるか分からん。」というのが母の口癖でした。そして、共働きで忙しかったにもかかわらず、食事は手を抜かず自ら調理してくれました。肉を切り、魚をさばき、野菜を切る、母のうしろ姿を子供だった私は見つめていました。その姿は今でも私の心に深く刻まれています。ニセモノへの嗅覚を育むのは家庭の役目だと私は信じています。

(2007.7.4)


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