農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 「第24回JA全国大会」記念特集 食と農を結ぶ活力あるJAづくりのために

JA全国大会の成功を祈ります

俳優 菅原文太さん

 映画「仁義なき戦い」シリーズなどのヒット作で知られる俳優、菅原文太さんが地方での暮らしを楽しんでいる。東京のマンションから山あいの村に引っ越して早や8年。この間、農業政策や環境問題などへの関心を深めたせいか講演依頼が増え、地方を回ることも多い。その論点には、経済効率ばかりを追うカネもうけ主義の風潮に反省を迫る硬骨の信条がある。地域格差の拡大なども問題視する。菅原さんは土に親しんで育った。また、おコメに対する愛着はひとしお。そうしたあれこれをめぐって地方発のメッセージを語ってもらった。


大都会の喧騒を離れて自然を楽しむ

◆農地の荒廃を憂える

菅原 文太 氏
すがわら ぶんた
1933年仙台市生まれ。55年早稲田大学法学部中退。58年映画デビュー。その後、松竹、東映で合計約260本の映画に出演。代表作に「仁義なき戦い」と「トラック野郎」のシリーズなどがある。キネマ旬報主演男優賞、ブルーリボン主演男優賞など受賞多数。

 ――映画やテレビへの出演に加え、アニメ映画の声優などにも芸能活動の領域を広げ、さらには講演も頼まれる中で地方に住んでいては不便だと思いますが、いかがですか。

 「多少は不便ですが、旅行が好きだから旅気分で仕事に出かけます」
 「とにかく田舎はいい。空気がいいと酒もうまい。それに比べ東京は林立するビルに囲まれ、毎日人波でごった返していて息が詰まる」

 ――しかし東京に比べて、地方経済はまだ回復が遅れ、地域格差が拡大しています。

 「確かに、地方を回ると駅前通りはシャッター商店街が多いね。町外れには荒れた遊休農地が目立つし考えさせられる。農業が活性化すれば、その地域の駅前も、もう少しは何とかなるんじゃないかなどとね。とにかく荒れた農地をこれ以上増やさないように農業を守っていくことが急務だ」
 「人々が土に親しんで仕事をしなくなったし、若い者たちが路上に尻を下ろして膝を抱え込んでいる姿を見かけるが、無気力な感じがする。彼らは土に親しむ喜びなどは味わってこなかったのではないか」

 ――「仁義なき戦い」の主人公役でドスの聞いた広島弁を使うので以前は菅原さんを広島出身だと思っている人も多かったのですが、実際は宮城県出身です。

◆ご飯の炊き方を紹介

 ――故郷から離れていても宮城米をPRする「みやぎ米大使」とか「みやぎ夢大使」を務め、新米試食会などのイベントでは、おいしいご飯の炊き方を紹介したりされていました。それによりますと夫婦2人の場合は電気炊飯器を使わないで、なべで炊くのが一番とのことですが、改めてちょっと炊き方を教えて下さい。

 「といだコメと同量か、同量よりちょっと多い水を入れる。沸騰したら火を弱めて、15分したら火を止める。その後、3分蒸らす。なべ(土なべならなお良い)で炊ける」

 ――さすがはコメどころ宮城の応援団長ですね。宮城は農産物だけでなく、海の幸などにも恵まれています。県下産業の発展方向について何か提言があれば一言聞かせて下さい。

 「山の幸、海の幸に加えて温泉があるから湯の幸にも恵まれている。それらをもっと活かす工夫がほしいね」

 ――地方での生活の話に戻りますが、コメは故郷から送られてくる宮城米を食べるとして野菜はどうですか。奥さんは畑仕事が好きだとのことですが。

 「高速道路が近くにできたせいか、イノシシが出るようになって、今はまったくやっていない。以前はずい分作ってたけどね」

 ――出演依頼にはどう対応されていますか。例えば宮崎駿監督作品には環境破壊や飽食の世相などを批判する寓意が、また宮崎吾朗監督作品にも文明批評の寓意があります。その辺に共感してアニメ映画の「千と千尋の神隠し」「ゲド戦記」の声優を引き受けられたと思いますが。

◆身の処し方は潔く…

 「トシだから好きなことをやっているんだ」

 ――山里への引っ越しといい、仕事の選択といい、何か潔い身の処し方ですね。菅原さんの美学ともいえそうです。

 「日本人にはもともと潔さという精神が根強くあったと思うが、戦後、そうした人間教育よりは、どうも経済効率ばかり追いかけてきたのじゃないかと思う。エコノミックアニマルだといわれてきたように」

 ――ホリエモンとか村上ファンドとか、やれ欠陥商品だ、談合だなどと経済犯罪が激増して日本人のエコノミックアニマルぶりはますますひどくなっています。

 「人間教育という言葉が出たが、若い連中の模範となるべき大人が欲で真っ黒じゃないか。貪欲を制御できない果てが今の日本の姿じゃないのか」

 ――おいしいものを食べたいといった程度の欲ならいいんですが。

 「世界の最高級ブランド品が一番よく売れるのが日本だなんて異常だね。日本製の装身具を身につけて何が悪いといいたいね。そんな世の中を正すには汚れてしまった大人の心を洗い直すよりほかにないんじゃないか」

 ――話は変わりますが、日本史がお好きだそうですね。

 「そうだね。とくに幕末維新が好きだな」

 ――幕末維新というとNHKの大河ドラマ「獅子の時代」(脚本・山田太一)の主人公を思い出します。剛直と反骨の会津武士が適役で菅原さんのイメージと重なります。最後は秩父困民党の蜂起に加わり「自由自治元年」の旗を掲げて戦います。

◆歩いて鍛えた少年期

 「私の希望もたくさんとり入れてもらい、かなり自由にやらせてもらった。放映は秩父事件百周年の1984年」

 ――好きなことというと、歩くこともお好きだと聞きました。

 「そうだね。映画の撮影中でも迎えの車に乗らずに歩くし。マイカーも持っていない。東京に出てきてもなるべく歩くようにしている」

 ――少年時代のことに少し触れて下さい。

 「仙台で生まれて、父の都合で東京に移り、小学4年の時に再び宮城の県北に疎開した。旧制の築館中学校に進学してからは学校まで6キロの道を毎日1時間歩いて通った。下駄履きでね、腰に手ぬぐいをぶら下げて。それが当時の学生たちのバンカラ・スタイルだったからね。吹雪の日でも平気で歩いた。そうしたことが足腰を鍛えてくれたと思う。そのあと仙台一高に転校した」
 「最後に、日本にとってもっとも大事な農業や農村の活性化に向けてがんばっておられるJAのみなさんにいつも感謝し、応援しています。JA全国大会の成功を祈ります」

(2006.10.5)



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