農業協同組合新聞 JACOM
 
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特集 「食と農を結ぶ活力あるJAづくりのために2008」


どっこい生きてるニッポンの農人2008(2)

農・産・官・学・消のネットワークの確立と推進を

今村奈良臣 東京大学名誉教授


今村奈良臣

 飼料米生産を成功に導くためには、農・産・官・学・消にわたる連携とネットワークの形成が不可欠である。農=飼料米生産者・農協系統組織、産=畜産経営・配合飼料生産企業、官=市町村・県・農水省という行政機関、学=大学等技術開発研究機関、消=生協等消費者団体・消費者である。今をさかのぼる30余年前の米の過剰時代から米の飼料化は提起されてきたが、稔りある成果は見られなかった。その最大の理由は、飼料米生産者、農協、行政、畜産業者、消費者をむすぶネットワークができていなかったところにあった。しかし、本文に詳しく紹介されているように遊佐町内の飼料米生産者、農協、平田牧場、生活クラブ生協連合会のネットワークとそれを支援する町、県、大学等研究機関の協力のもとに、確実な足どりで飼料米を養豚に生かす道が切り拓かれ、消費者も全面協力体制が出来つつある。
 その各段階の実態については、私も調査し、その分析結果は別の機会に公表しているので、ここでは立ち入らない。別紙本文で充分ふれられていない幾つかのこれから解決していかなければならない論点と課題を明らかにしておきたい。
 第1。飼料米生産の拡大と安定供給をはかるうえで飼料米生産者の所得を維持するために、産地づくり交付金等を智恵を絞り地域の合意を得て配分してきたが、その財源は先細り枯渇の情況になりつつある。飼料米を食料自給率の向上や水田の有効活用、環境保全等広い視野と国際的穀物(飼料原料)価格の高騰が見通される中で、農政の基本路線として明確に位置づけ有効な対策を早急に講じるべきではないか。
 第2。飼料米にふさわしい高収量の実現できる食用米と全く差別可能な新品種の育成とその種籾の確保。この分野の新技術開発は遅れをとってきていたし、また、種籾生産と供給の組織的体制はできていないが、その解決路線を。
 第3。栽培技術分野では生産性向上とコスト低減のための直播技術の確立は不可欠であるが、その技術開発と定着の方向を。
 第4。食用米については「売れる米づくり」をめざして、米の選別にあたり、近年各地とも「フルイ」の目を1・9ミリに引きあげている。当然「フルイ下」の米が多く出てきているが、このフルイ下の米を飼料用に確実にかつ計画的、組織的に回せないか。飼料メーカーと養豚業者によればフルイ下の米は水分含量が高く、年間安定的に使用できず出来秋に早く使うしかないとのことであるが、何らかの有効な活用法は考えられないか。
 第5。水稲を飼料として利用する方法としては、(1)水稲を黄熟機に収穫し、それをサイレージに調整するホールクロップサイレージがあるが、これは反芻動物、特に牛を対象とするものであり、(2)豚などの単胃動物は子実のみを使用する。しかし、子実としての米であれば、豚、鶏はもちろん、牛など全畜種に利用できる。飼料米を政策的に推進するにあたっては、どの路線を選択するか。地域特性、立地特性なども踏まえつつ、政策路線とその方向性を明確にする必要があろう。
 最後に、飼料米生産に取り組む農民の皆さんならびにJAの努力、そして平田牧場の飼料米活用の多面的実践とそのための豊かな構想力を私は高く評価する。この路線を今後とも大いに推進していただきたい。あわせて、生活クラブ生協連合会の消費者を対象とした食農教育、それを背景にした平田牧場ならびに遊佐地域の米などの各種農産物の産直活動の永年にわたる実践に対して敬意を表したいと思う。(なお、私の調査報告はhttp://www.ja-so-ken.or.jpの「所長の部屋」を参照願いたい。5回にわたり掲載している)

(2008.1.11)

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