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有機JASが改正  肥料2剤・農薬6剤が新たに適合資材に

 日本農林規格が定める有機農畜産物や有機加工食品の生産方法などの基準(有機JAS)は、おおよそ5年に1度見直されることとなっている。現行の規則は平成18年10月に改正・施行されたが、有機農畜産物・加工食品に取り組む生産者や加工業者などの要望も取り入れるかたちで、このたび新たに見直されることとなった。新たな規則は24年3月28日に告示され、4月27日に施行された。ここでは有機JASの4規格、すなわち(1)農産物、(2)加工食品、(3)飼料、(4)畜産物、の変更点の主なポイントと、(1)農産物で新たに有機農産物適合資材として認められることになった肥料・農薬について紹介する。

◆26年までに生産量1.5倍が目標

 有機JAS規格は平成11年のJAS法改正で定められた有機農畜産物・食品の検査認証制度だ。たい肥による土づくりや微生物や天敵など天然物由来の資材をつかった病害虫の防除などに取り組み、化学合成肥料・農薬を使わずに生産された農畜産物・加工食品・飼料が対象だ。規格に従った生産に取り組んでいることが認められ、有機JAS格付けを取得すれば「有機JASマーク」を付けて販売することができる。
 日本国内における有機農産物の生産規模はかなり限定的で、作付面積は9401haで総耕地面積459万haの0.2%(23年4月1日現在)、生産量は5万6415tで総生産量2440万tの0.23%に過ぎない(22年度の格付け実績より)。生産量の65%は野菜で、20%がコメ。次いで果実5%、茶4%となっている。有機畜産物については、全国でも取り組んでいる生産者はわずか9件で、生産量の2763t(同)のうち97%が生乳、2%が卵。肉牛は5.4tで、養豚はゼロだ。
 政府は19年4月末に「有機農業の推進に関する基本的な方針」を策定し、その推進に力を入れている。方針では、生産の技術体系の開発や消費・流通の支援などを行うとしており、26年までには農産物の生産量を19年比で1.5倍となる8万tにまで伸ばしたい考えだ。


◆有機畜産への参入促す規制緩和

 規格(1)〜(4)の主な改正ポイントは右下表の通りで(2)、(3)の変更はごくわずか。(4)畜産物については、新たな生産者の参入を促そうと生産を始めて3年以内の規制が緩和された。
 もっとも大きく変わったのは(1)農産物で、▽種子・苗の取り扱い、▽有機適合資材の拡大、の2点が大きなポイントとなっている。
 有機農産物を生産するための種子・苗などは、農産物の生産工程と同じく有機農産物適合資材として認められている以外の資材を使ったり、遺伝子組換えを行ったものは使用禁止となっていた。
 ただし旧規格では、これに付則として「基準に適合する種子又は苗等の入手が困難な場合」というただし書きが付けられていた。「入手が困難」とは「著しく価格が高い」、「必要な数量が必要な時期に手に入らない」、「海外にはあるが国産100%をめざしておりコンセプトに合わない」、などさまざまな理由が認められたため、実質的に遺伝子組換え以外は、持続的効果を持たない化学的肥料・農薬を使用したものでも使うことができた。
 今改正ではこの規則を厳格化。種・苗の入手が困難な場合や、災害・病害虫の発生によって植えつける苗がない場合でも「は種又は植付け後に持続的効果を示す化学的に合成された肥料及び農薬が使用されていないもの」以外は使うことができなくなった。


◆使用可能資材増える特栽への利用拡大も

 有機農産物の生産は、適合資材として認められた肥料・農薬以外は使用禁止となっているが、このたび肥料では「メタン発酵消化液」、「軽焼マグネシア」の2剤、農薬では「炭酸カルシウム水和剤」、「ミルベメクチン乳剤・水和剤」、「スピノサド水和剤・粒剤」、「還元澱粉糖化物液剤」の6剤が新たに適合資材として認められた。
 このたび新たに認められた薬剤は、今後、有機農業以外の特別栽培農産物や減農薬減化学肥料栽培の場面での全国的な普及拡大も期待される。というのも、特栽や減減栽培のガイドラインで定められている成分カウント数は地方自治体や地域ごとに異なっているため各地域で使用できる薬剤に差があったが、この有機適合資材として認められた薬剤は全国一律で成分カウント数には含まれなくなるからだ。

改正ポイント


肥  料

 「メタン発酵消化液」は、家畜ふん尿などの有機物をメタン発酵させた際に生じるもので、野菜くずや残さのたい肥化に使われている。現在は、ごく一部の生産法人で独自に使われている。
 「軽焼マグネシア」はマグネサイト鉱石を800℃で焼成し粉砕したもので、主に苦土肥料の原料として使われている。苦土肥料としては、すでに「硫酸苦土」、「水酸化苦土」、「生石灰」などが有機適合資材として認められている。


炭酸カルシウム水和剤

 「クレフノン」(白石カルシウム)、「アプロン」(日東粉化)などがあり、「コサイド」(三井化学アグロなど)、「ボルドー」(住友化学、北興化学、日本農薬など)など銅水和剤による薬害軽減と、効果向上のために混用されるのが一般的だ。これまで銅水和剤は有機適合資材として認められていたが、炭酸カルシウム水和剤は適合資材でなかったため、有機農産物の生産者は銅水和剤との混用ができなかった。


コロマイト

コロマイト 「ミルベメクチン」は土壌放線菌が生産する天然物由来の殺ダニ剤で、三井化学アグロが「ミルベノック」を平成2年、「コロマイト」を5年に商品化した。数年で抵抗性がついて効果が低下することが多いダニ剤の中で、ミルベメクチン剤は20年以上にわたって長く愛用されている。現在は茶やリンゴの基幹防除剤として全国で使われているが、今回の認定を機にトマト、ナス、ピーマン、イチゴなどの場面でも一層の普及が期待される。
 ただし、同社では「有機適合資材になったからといっても無制限に使ってよいわけではなく、農薬としての使用基準を遵守してほしい。また、抵抗性回避の視点からも、他の剤とのローテーション散布で使ってほしい」と注意喚起している。


スピノエース

スピノエース 「スピノサド」は土壌放線菌の殺虫剤で、ダウ・ケミカルが「スピノエース」として商品化している。幅広い作物と害虫に適用があり、特にトマト・イチゴ・ナスなど果菜類のアザミウマ類、キャベツ・ネギ・レタスなど葉菜類のコナガ・ヨトウなどのチョウ目害虫への効果が高い。スピノサドは自然環境下で分解されやすいため、環境や有益昆虫への影響が少なく、米国では1995年に「米国環境保護貢献賞」を受賞した。


エコピタ

エコピタ 「還元澱粉糖化物液剤」(還元水あめ)を有効成分とする気門封鎖剤は幾つかのメーカーが製剤化しているが、協友アグリの「エコピタ液剤」が有名だ。対象害虫の気門を塞いで窒息させる物理的な作用であるため、抵抗性発達のリスクはほとんどないと考えられており、即効性も非常に高い。また、うどんこ病に対しても物理的に作用するため、耐性菌出現のリスクはほとんどないと考えられている。平成18年の発売以来、徐々に売り上げを伸ばし続け、今ではフェロモン剤や天敵などとの組み合わせでIPM防除体系に組み込まれ、年間45tほどを販売している。
 トマト・イチゴ・野菜類・かんきつ・ゴマ・いも類・豆類(種実)・花き類・観葉植物のアブラムシ類、ハダニ類、コナジラミ類・うどんこ病に効果があり、特にかんきつ類のミカンハダニには卵から成虫まで効くため、高く評価されている。
 抵抗性発達のリスクが低く、使用回数に制限がないことに加えて、「有機JAS認定をうけたことで、合成農薬では対処しきれない病害虫に対する施設栽培での主要防除剤として普及拡大をめざしたい」(同社普及部)としている。

(2012.04.28)