アグリビジネス

アグリビジネス

一覧に戻る

【立命館大学】
世界初、微生物で土壌の肥沃度を測定 立命館大学の研究チームが開発

 立命館大学生命科学部の久保幹教授の研究チームは12月10日、土壌中の微生物量などを調べることで土壌の肥沃度を示す新たな土壌診断手法「SOFIX(Soil Fertile Index)」を開発したと発表した。

◆農作物別の処方箋は必要ない

 これまでの一般的な土壌診断手法は、土壌中の窒素・リン酸・カリなど、化学的性質を調べるものがほとんどで、土壌中での有機物など生物的性質を調べる評価手法は難しかった。
 しかし、久保教授の研究チームが開発したSOFIXは、土壌中の微生物量や微生物による窒素やリン酸などの分解・循環活性などを定量的に調べることで、世界で初めて生物的性質を使った分析を可能にした。
 従来の土壌診断では、対象となる農作物が違えば同じ土壌でも異なる処方箋が必要だったが、SOFIXで示される指標は、「その土壌で育つ植物の活性を示すものであり、どんな農作物でも、さらには樹木などでも、栽培する品種ごとに異なる処方箋は必要ない」(久保教授)というメリットもある。
 研究チームは「SOFIXの活用は、化学肥料の使用の適切化や生産コストの低減につながる」としている。また、化学肥料を用いない有機農業では、これまで科学的な土壌診断や土づくりをするのが難しかったが、この技術を利用することで、それらが可能になる。「有機農業での収量増にも貢献する新技術」だとして、普及を期待している。


◆慣行栽培と同じ収量で、コスト3割減

 SOFIXの手法は具体的には、[1]土壌中の総微生物量、[2]微生物による亜硝酸酸化活性、[3]微生物によるアンモニア酸化活性、の3つを調べ、三角形のレーダーチャートに表す(下図参照)とともに、有機態リン酸をリンへ変換する力をもつフィチン酸を調べる。その総合的な診断結果を「土壌肥沃度診断書」にまとめる、というものだ。
 中でも独自の技術は、土壌中の微生物量を調べるもの。これは土壌1g中に何億個の微生物がいるかを調べるものだが、従来の測定法では、▽微生物を培養しなければいけないため長い時間がかかる、▽培養できない微生物は調べられない、▽作業が煩雑で難しい、などの課題があり実用的ではなかった。
 これに対し久保教授らはeDNA法という新しい手法を開発し、この微生物量を正確に測定することを可能にした。
 研究チームは平成22年から、滋賀県のJAおうみ冨士や地元の生産法人らと共同で、「明日の農と食を考える研究会」をつくり、SOFIXの実証試験を行ってきた。
 そこで、化学肥料を用いた慣行栽培と、SOFIXを利用した有機栽培でトマトを栽培し、その成果を比較したところ、SOFIXを利用したほ場のトマトの方が糖度が1%高く、また、通常は収量の落ちる有機栽培でも、慣行栽培と同じ程度の収量を確保できたという。
 研究チームでは、現在、SOFIXに最適な有機肥料の開発をすすめている。それにより、慣行栽培と同程度の収量を確保しながら、生産コストを3割減少させることをめざすとしている。

agur1212130201.gif このSOFIXは、すでに実用化段階にあり、研究チームに依頼すれば2週間ほどで診断書が作成できる。
 SOFIXについての問い合わせは、立命館大学リサーチオフィス(TEL:077-561-2802)まで。


(関連記事)

気象データからイネの生育状況を予測 世界初のシステムを開発  生物研 (2012.12.07)

バイオマス事業の活性化へ  JA全農が新潟でセミナー (2012.12.07)

亜リン酸で農産物の高品質化・収量増 土づくりシンポジウム (2012.12.05)

臭化メチル剤の代替技術 農研機構が栽培マニュアルを作成 (2012.11.27)

(2012.12.13)