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進化する集落営農

進化する集落営農
楠本 雅弘

【発行所】農山漁村文化協会

【発行日】2010年7月30日

【電   話】03-3585-1141

【定   価】2600円(税別)

評者名:今野 聰

 著者の前作品が『集落営農』(2006年)。発刊当時、本欄で取り上げた。集落営農を「全国各地事例を文字通りくまなく調べ、その中から北陸平野型、中国山地型、東北型と地域的特質類型化をし、さらに機能的分類も試みた」と評価、「長い時間をかけてさまざまに変遷・進化をとげてきた」のだと評価した。その基調は、本書でも変わらない。問題は進化の具合である。

 著者の前作品が『集落営農』(2006年)。発刊当時、本欄で取り上げた。集落営農を「全国各地事例を文字通りくまなく調べ、その中から北陸平野型、中国山地型、東北型と地域的特質類型化をし、さらに機能的分類も試みた」と評価、「長い時間をかけてさまざまに変遷・進化をとげてきた」のだと評価した。その基調は、本書でも変わらない。問題は進化の具合である。
 要するに、前著で主張した「二階建方式集落営農の提案」から、「新2階建方式」に進化させる。場合によったら、「集落法人の3階建連携」の実践も可能であるとする。地域をこうして立体的にデッサンする。
 著者の本領は、最高のモデル事例である広島県三次農協を取り上げて、詳しい。組合員2.1万人。地域大型合併農協である。組合組織は20ほど。規模の大きい順にJA三次女性部約1400名、JAアンテナショップ生産連絡協議会約1000など。こうして集落法人のネットワーク機能はJAが事務局を担当する。しかも、中山間地帯を生かした直売体制を構築、実践している様子が見える。正に立体的なのである。著者はこれを理論化して「地域を支える協同組合」路線という。
 第2章では、集落法人をベースにした会計処理方法も、重要なマネージメントだとして示す。それらの紹介は煩瑣だから省くが法人化を選択したら、避けられない経営管理である。
 以下は感想である。何といっても著者らしい地についた集落営農実践の書だということだ。また、著者は、戦前からの「自治組織」による村の復活を提唱する。それが基底になって「社会的協同経営体」だとする。私的資本と違い、農協は「公益」に蓄積を有効に働かせるのだ。これを捨て去れば、そこに残るのは農協経営ばかりだからだ。腰をすえた実践が如何に大事か。

(2011.03.18)