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怠れば、廃る―農協運動心得六か条―

怠れば、廃る―農協運動心得六か条―
八幡正則、南斗六星子

【発行所】株式会社南方新社

【発行日】2012年1月10日

【電   話】099-248-5455

【定   価】1500円(税抜)

評者名:山内偉生

 農協運動の大先輩、鹿児島の八幡正則さん(元県中総合対策部長・信連常務)が、「怠れば、廃る」と題する力作を著わされた。

 農協運動の大先輩、鹿児島の八幡正則さん(元県中総合対策部長・信連常務)が、「怠れば、廃る」と題する力作を著わされた。怠れば廃るは、二宮尊徳翁の教えに基づく言葉で、著者が永年にわたり、農協運動に心血を注ぎ挺身してきた精神的支柱になった。尊徳翁は、自然(天道)ではなく、人間がかくありたいと願って起こした「作為のもの」すなわち「人道」は、怠れば廃ると言われた。冒頭で、協同組合運動は人道であり、怠りなく実践努力しなければ農協運動は廃れる! と筆者は訴えている。
 まず、農協運動の実践者は、農協の役職員であり自覚をもったプロの運動者であると位置づけた。農協は、社会的機能、道徳的基盤、報酬の公明性のすべてを備えた理想的職場であるとした。故に、農協の仕事に励むことが、社会のため人びとのためになる、自分の人間つくりになる、「惚れる」に値する職場が農協であり、人間形成に最適な職場だという確信を持って欲しいと運動者としての自覚を促している。
 東日本大震災の未曾有被害の再建・復興、TPP参加圧力など農協運動は、最大の危機に遭遇しているときに、「世直し運動」として前進しなければならない。
 ここで、筆者は「運動心得六か条」を指針として提起した。なぜ、心得にしたのか。実践を尊ぶ協同組合運動は、声高に叫ぶのではなく、慎ましくあらねばならないとする筆者の人柄が滲む。
 第一条、農協運動は、「自分を明るくする」運動です、次いで「わがため人のため」、「環境と共生きする」、「大地性を享受する」、「人々が納得し合う」、「人と世に推譲する」の心得六か条である。尊徳翁、鈴木大拙老師などの教導思想が根底あり、自らの体験で裏打ちした筆者の思念のこもった見事な道標である。
 序文で、梶井功先生が、ここ数年、第一線で農協運動を実践してきた人の論著を拝見していないところに本書が出て、「渇を癒される想いである」と推奨されている。協同組合運動に携わる多くの方々に是非読んで頂きたい。

(2011.12.09)