コラム

目明き千人

一覧に戻る

【原田 康】
手数料を上げる提案

 農協の決算書の赤字部門について指導・監督にあるという立場からとやかくの指摘がある。事業計画に掲げた当期利益を確保し、配当をしていれば部門毎の収支は経営者の判断の問題である。

 農協の決算書の赤字部門について指導・監督にあるという立場からとやかくの指摘がある。事業計画に掲げた当期利益を確保し、配当をしていれば部門毎の収支は経営者の判断の問題である。
 販売部門の赤字縮小のために事業所の統廃合、人員の削減等によって事業を縮小してつじつま合わせの指導が行われるが、農業協同組合として本末転倒である。
 ほとんどの農協の販売部門の手数料は、何年もの間低いままである。米については食管法で食糧庁に販売、農畜産物については卸売市場に販売委託をして、農協が価格のリスク、営業の経費がかからない時代に、農家の手取りを増やすために手数料を事務処理費的な水準に安くした。総合事業で経営が出来たからである。
 現在の販売事業は価格のリスク、営業、選果、保管、輸送と多くの経費がかかる。
 農協は立地条件によって事業の内容、ウエイトが大きく違っている。農家組合員のためにはどのように事業を運営するかは農協毎に異なり、話し合って決めている。部門ごとの収支は経営者が全体のバランスをみて決めることである。現在の販売事業の手数料では赤字になるのは明らかである。農家自身が販売には経費がかかるのはご存知だ。自分で売ってみれば農協の手数料の何倍もかかることが直ぐわかる。
 販売部門の収支を改善するためには、投資計画、事業の内容、更にこれらにかかる経費をオープンにして手数料の引き上げを提案することである。農協全体で利益が出て配当も出来ているのでいまさら手数料の引き上げの提案が出来ないのでうやむやのままにされている。信用・共済事業の利益を他の部門に使うのはけしからんというのはおかしな話ではあるが、一方、信用、共済の利益はこの事業への再投資と利用者への還元の原資であるというのも一理はある。農業に直接関係の無い准組合員から見れば当然の意見である。農業協同組合が総合事業で競争力を維持しているというイロハに戻る問題である。
 農家組合員が最も必要とする販売事業のテコ入れをして、収支の改善を図ることが必要な時代に、“リストラで”という指導が行われているのは残念である。

(2011.08.11)