コラム

「林佳恵のぎっしり、にっこり!村の知恵袋」

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【林佳恵】
米袋二種

米袋二種  昨年、富山県庄川町商工会女性部にて講演の前日、せっかく富山へ来るなら...

米袋二種


写真1 昨年、富山県庄川町商工会女性部にて講演の前日、せっかく富山へ来るならばとJA富山中央会の藤畑満さんが会合をセッティングして下さいました。その中のお一人が前佛清人さん。滑川市で有機農業をしておられる。
 わたくしは隣の魚津市出身ですのでひときわ、近しさを感じるとともに、真面目で一途なお人柄なのはお話ししてすぐに分かりました。
 今年に入って大地を守る会の生産者と消費者との東京交流会を見学され、お仲間とわたくしの事務所へ寄って下さった。その際、わたくしがデザインした秋田県横手市のお米屋さんの米袋★(写真1)をお見せしたのかどうか記憶が定かではないのですが、先頃、香港で米を販売することとなったので、デザインをまかせたいとの連絡をいただいた。品種はコシヒカリ、有機JAS認証米であるとのこと。

のれん事業と米袋の連動

 写真1の上部中央にあるのは、わたくしがデザインした日除けのれんです。平成16年3月に染め上がったものの1枚です。街づくり委員会の5人の女性たちに招かれて企画したもの。宝くじ助成事業へも企画書を出して応募。審査が通り助成金に一部助けてもらいながら11枚の大きな日除けのれんを完成させました。その中の1軒、お米屋さんが、米袋にもデザインを流用したいと申し出られ実現したものです。

デザイナーの目

 最近ではパソコンを使って手軽にラベルが作れるようになりました。アットホームな手作り感を否定はいたしませんが、商品となるといかがなものでしょう。
 わたくしの主な仕事は本の装幀。ブックカバー等のデザインです。まず本の内容を把握します。読みながら、心にとまる文章にアンダーラインを引きます。著者の伝えたいこと、象徴的なシンボルとなるものをそこから読み出します。最初に読み手となるのですが、劇的な場面や象徴ともいえるものが浮かび上がって来るのを見逃さないよう気を付けています。
 同様で商品の何を、どうアピールするのかはやはり、そのものと向きあうしかありません。
 1の米袋では、店の目印となった日除けのれんの縮小版と、のれんに使用した寄席文字でデザインしました。この文字には寄席の客席が人の頭で真っ黒くなるようにとの、千客万来の願いが込められています。書は日本テレビ『笑点暦』で御一緒させていただいている橘左近師匠です。
 ポイントはメリハリをつけること。ご家族でいろいろアイディアを出してディスカッションを。

さて 前佛さんの米袋のラフ(試案)デザイン

写真2 米の銘は愛ほたる。いいネーミングです。蛍の文字は、信頼する書家の吉沢和子さんに。実は「愛ほたる」も書いていただいたのですが、あえて活字の文字に。円の中に入れた蛍の書き文字を際立たせるためです。★(写真2)
 何度かお会いして前佛さんのお人柄はわたくしなりに掴まえたと思っております。「米作りは我が人生作り。蛍舞う田の恵みへの感謝、誠実を旨とする前佛家の米」という宣伝文を考えました。このラフがどう完成するのか、決定しましたらお知らせします。

(2009.06.01)