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【金右衛門】
拉致被害者のその後にひとこと

 拉致被害者・曽我ひとみさんの夫ジェンキンスさんが佐渡に定着して12月で丸1年に...

 拉致被害者・曽我ひとみさんの夫ジェンキンスさんが佐渡に定着して12月で丸1年になる。佐渡の曽我ひとみさん一家にはまだ身辺警護の公安が見張っているが時間の経過とともに、人事交代などもありいくぶん緊張が緩んでいるらしい。ジェンキンスさんは、運転免許を取るために11月東京へ出てきた。新潟や佐渡では、外国人に運転を教える教師もいないし、設備が整っている教習所はやはり東京が一番らしい。
 北朝鮮では、自給自足のような生活でアパートの停電がしょっちゅうあり、水道も止まる、近くの空き地に井戸を掘って飲料水の水運びをするなどジェンキンスさんの男手が必要だった。しかし、生活のインフラが行き届いた日本では、佐渡のような農村地帯でもその役割はもはや必要ない。自転車で海辺に釣りに行く、乗用トラクターを近所の人から譲り受けて家周りの畑を耕す、市役所に勤める妻の帰りをひたすら待つ平和な毎日に、夫婦の力関係が逆転しているという。
 その間に、雑誌TIMEの記者との共著で、いますべての真実を語ろう―北朝鮮衝撃の真実として「告白」を出版した。23万部契約してお金の余裕ができたので、一念発奮、運転免許取得を申し出たらしい。東京のドライビングスクールで、早く免許をとって少しでも経費を安く済ませたいと毎晩勉強に一生懸命だった。北朝鮮で日記を書かされ、自己批判と総括をさせられた経験が生かされていたのか。東京の駐車違反が3万円の罰金と聞いてびっくり、北朝鮮では一家が2カ月生活できる金額だ。ゆったりした佐渡でしか運転しないのに何故混雑した東京で運転テストしなければいけないのかと先生に苦情も言い、ずいぶん迷惑もかけたが、20日間で無事合格し佐渡へ帰っていった。
 北朝鮮に拉致されたのは日本人だけではない。レバノン人、タイ人、ルーマニア人なども拉致されて一緒に生活したと「告白」には書かれている。出国が許されないという意味ではアメリカ人も。しかし、日本政府だけが拉致事件の真相究明を求めている。小泉首相から救済され、一家が日本に来て一番良かったことは娘達が北朝鮮の工作員にされることから逃れたことだと、父親としてのジェンキンスさんは述懐している。
 「告白」本で北朝鮮の内情を公にすることにより身の危険も感じている。日本の次はアメリカと韓国で発行される予定とか。得体の知れない電話が携帯に掛かってくる。覚悟はできているという。ジェンキンスさんは日本語は話せない。家族のコミュニケーションは朝鮮語でする。朝鮮語しか話せなかった娘達はどんどん日本語が上達している。ジェンキンスさんの「佐渡の日本酒が美味しい、住み良い」という情報発信は人口減少に悩む佐渡住民に元気を与えている。休耕田と空家を利用し「ジェンキンス農場」を立ち上げ佐渡の農業に一役かって欲しいと提案したいぐらいだ。一年前帰国時48キロだった体重が60キロを越え、現在はダイエットを奨められている。

(2005.12.21)