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【金右衛門】
地方の再生」にひとこと
農業再興策にも特例を

 日本海に浮かぶ佐渡ヶ島は3年前に10カ市町村が合併して佐渡市一つにまとまった。...

 日本海に浮かぶ佐渡ヶ島は3年前に10カ市町村が合併して佐渡市一つにまとまった。佐渡は小さな島であるが、社会的には日本の縮図のようなところがある。65歳以上の高齢化率は現在34.8%で、全国平均20%をはるかに越えている、2050年には日本の高齢化率は35%になる予測なので、45年後の日本の姿は現在の佐渡ヶ島ということになる。1950年12万6000人だった人口は2005年の国勢調査では6万7000人、55年間で人口はほぼ半減した。直近の5年間でも毎年1000人ずつ減りつづけている。
 人口が減少すると困ることがある。その一つが小売店の売り上げ減少である。一人当たりの年間消費の支出は120万円(佐渡基準)とすれば、毎年1000人の人口減は毎年10億円の小売店の売り上げ減少に結びつく。シャッター通りはいたるところに見られる、大型スーパー等の島外資本の進入と既存商店のサービス低下が原因ととらえがちだが、人口減少がその背景にあろう。
 そこで、住民に期待するのでなく、観光客を多数誘致して島の中で支出・消費してもらおうというものだ。しかし、その観光客も平成3年ピーク時の121万人から平成17年には67万人へ下落している。ある調査によれば、宿泊代・お土産代を含めて一人の観光客の島内で消費する額は2万3000円、観光客54万人減を掛け算すると120億円が消えたことになる。佐渡米の生産額に匹敵する。
 2番目が佐渡の祭りごと・伝統芸能の伝承が危機に至っている。人口の多かった時代の仕組みが、より少ない人数で行わざるを得なくなり、次々と大きなイベントが消えていく。中心的な活動家の高齢化で地域の「やる気」が失せつつあるからである。継続しなければならないだけでは、疲れ果ててしまう。頑張ってはいるものの、後継者が現われないと一人になって死ぬまで頑張り続けないともたない伝統芸能もある。
 人口減少・過疎化は少子化だけが原因ではない。若者の流失である。高校卒の18歳人口は600人そのうち100人しか島に残らない。彼らを残すには働く場所を提供できる企業誘致と同じように、大学や専門学校を佐渡へ誘致すべきであるという議論が盛んである。若者は2年間島に留め置けば、そのまま定着する率が高くなると説く。
 過疎化を食い止め、住民が豊に暮らせば観光客も来る。そのためには、産業振興とりわけ農業を再興するしかない。佐渡米は魚沼産コシヒカリに次いで2番目に高い評価が付く、佐渡のような狭い島でも減反を強いられ、売れる米なのに生産制限を受ける。過疎化する地域には全国一律でなく、農業再興の特例とし、地域おこし・島起こしに利用できないものだろうか。新内閣の政策に夢を託す。

(2006.10.25)