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【金右衛門】
トキだけが住む田んぼはない

 佐渡のトキは平成21年野生への放鳥が計画されている。日本生まれ最後のトキ・キン...

 佐渡のトキは平成21年野生への放鳥が計画されている。日本生まれ最後のトキ・キンは平成15年佐渡トキセンター内で死亡し絶滅した。中国からヨウヨウとヤンヤンが日本へ連れてこられたのは平成11年、そのペアから優優が生まれ、人工増殖が成功している。現在では佐渡のトキは97羽に増えた。
 かつては全国に生息していて日本を代表する鳥だったから、学名がニッポニア・ニッポンになったのだろう。同時期には中国、ロシア、台湾などにも生息していたという。現在中国には野生のトキと人工飼育のトキ合計で800羽から900羽が生息しているといわれる。日本のトキと合わせれば世界で千羽位は生息が確認されていることになる。
 トキの餌はドジョウ、そのほかに小型のフナ、コイなどの魚、オタマジャクシやカエル、イモリなどの両生類、カタツムリ、タニシや貝類などの軟体動物、ミミズなどの環形動物、サワガニやザリガニなどの甲殻類、ヤゴ(トンボの幼虫)などの水生昆虫、イナゴやコオロギ、ケラなどの陸生昆虫だ。まれにネズミ、ヘビなど。だから、水田がある環境でないと育たない。中国のトキ生息地である陝西省も貧しい農業地帯で、自給自足農業である。中国はトキ保護のため農薬や化学肥料を使わない自然農法や生態系有機農業をトキ保護区に強いて、農民の減収は補助金でまかなっていると報告されている。
 コウノトリの放鳥に平成17年に成功した兵庫県でも、近隣の人々の40年の苦労の歴史があると関係者は述べる。田んぼがあって、人の生活する農村社会が必要である。その中でコウノトリも生息する。コウノトリだけが住む田んぼは無い、人と自然が共生する地域社会を復活させて、はじめてコウノトリの放鳥が可能になったという。
 コウノトリの餌のドジョウも生態系の中で生きている。田んぼや川の水路の泥の中のプランクトンを虫たちが食べてその虫などをドジョウは餌にする。
 トキも住める自然環境を作らないと佐渡でもトキの放鳥は難しいことになる。一部の篤志家たちだが、生き物と生息活動の場所を確保するビオトープ運動がある。田んぼは不耕起栽培で水をはっただけにして冬を過ごす。春になると沢山の生き物が田んぼの中に生きている。その田んぼで米を栽培している。佐渡全島をトキと共生の島として、農薬なしの農業で観光資源にすべきだという意見も含め、佐渡のトキ野生復帰には様々な動きがある。トキ栄えて人間滅ぶと揶揄する人もいる。いずれにしろ、50年前の農業に戻すのだけは無理ではないだろうか。

(2007.02.02)