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【金右衛門】
企業誘致にひとこと
コールセンターは地域を救うか?

 地方自治体の財政は厳しい。企業を誘致して税収を増やしたい。工場などが来てくれて...

 地方自治体の財政は厳しい。企業を誘致して税収を増やしたい。工場などが来てくれて雇用を増やし、人口減少に歯止めをかけたい。
 そんな思いを政策に実現している自治体もすでにある。五島列島のある町がコールセンターを誘致している。それを真似ようとする島もある。若者を地域に引き止めるためには、コールセンターは輸送コストの負担が少なく、職場もクリーン、地場産業と競合しない。各自治体では土地や人材育成を準備し、誘致合戦を繰り広げている。時給が東京の半分ですむため、問い合わせ・苦情受け付けの窓口として、各企業は地方への進出が急速に進んでいるのだ。
 そして一見かっこよい「離島コールセンター」に島民は喜んで就職する。しかし、しばらくすると働く人にとっては、苦情を常時電話で聞かされるのはストレスを生む。意地悪な質問に会社を代表して応対せねばならず、その重い負担に耐えられず、心の病で辞めていく人も多いという。中には、次々と退職する職員を地元で埋めきれず、規模縮小に追い込まれたコールセンターもあるらしい。
 地方財政は厳しくとも、島民の生活面はむしろ東京よりも良い。美しい島、きれいな空気、下水道も完備でウオッシュレットトイレは家庭にも普及している。車は一家に数台で、一人一台の車社会である。田舎の道路はコンクリートに整備され、観光シーズンでないかぎり渋滞はない。テレビもパソコンも普及し世界中の情報は東京と同時に入る。文化面でも、近頃は有名人が続々島を訪れ講演・公演してゆく。オペラ、薪能、落語、歌謡ショー、クラッシック音楽、なんでも安い料金で鑑賞できる。
 生活は何不自由ないのに、島の人口の減少は続く。空き家が増える。家の広さは東京の数倍である。昔の若者は、情報の格差で東京へあこがれた。それなのに現代の若者が田舎に定着しない本当の原因は何だろうか考えてしまう。
 やっぱり農業を中心にした安定した家庭と良い意味の共同体・村社会が崩壊しつつあるからだろう。農業がダメで、商店街がダメになる、子供が減少し教育がダメ、医師が足りず医療がダメ、檀家の減少で寺院がダメという方向へ流れる。
 コールセンターに自治体が補助金を付けてまで誘致しようとする風潮はいかがなものか。農業など一次産業中心の島の産業の再生が先ではないか。米がダメなら野菜も花も果樹も漁業、林業、バイオもある。地域の基礎は一次産業の活性化だろう。補助金の使い道はすそ野広く未来の雇用を促進する一次産業に厚くすべきだ。それが日本と地球を救う。

(2007.06.22)