コラム

「正義派の農政論」

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【森島 賢】
TPP参加に反対と賛成の団体一覧表

 先週25日、政府はTPPについて、46の団体の意見を取りまとめて発表した。要約した表を下に示した。
 これによると、TPP参加に賛成する団体は、経団連や経済同友会や日本自動車工業会など14の団体にすぎない。全体の中での割合は、わずか30%である。残りの70%の団体は、絶対反対や強い懸念を表している。全中や日本医師会や連合や日生協などである。
 これをみれば分かるように、TPPの賛否は工業と農業とで分かれていて、両者の意見が対立している、とみるのは事実に反している。そうではない。経団連や自動車工業会は、企業経営者の団体である。つまり、経営者と経営者以外の大多数の国民との対立なのである。そのことは、経団連傘下の企業で働く労働者の組合や消費者の組合が、強い懸念を表していることからも分かる。
 いったい、首相は経営者の意見を採るのか、それとも大多数の国民の意見を採るのか。

 以前から、一部の評論家は、市場原理主義の政策を採り入れ、企業が儲かれば、そのおこぼれが国民全体に滴れ落ちる、という説を流していた。
 だが事実はそうならなかった。企業は儲かったが、利益は社内に溜め込むだけで、労働者に分けなかった。そして、いまや社内留保は史上最大級の金額になったが、賃金は下がる一方である。このことを、多くの労働者は身にしみて実感している。だから、市場原理主義に対して強い疑問をもっている。

 TPPは、市場原理主義の究極の貿易体制である。貿易体制だけではない。国内制度も市場原理主義の一色に染め上げるものである。
 そうして、農業を犠牲にして、食糧自給率を下げ、また、病弱者を犠牲にして、病院を利益追求の場にし、さらに、食の安全を脅かそうとしている。
 そうしたことは、これから始まることではない。すでに始まっていて、TPPによって加速されるのである。このことを大多数の国民は、日常的に体感している。だからTPPに強い懸念をもっているし、反対しているのである。

 野田佳彦首相は、昨年の秋に「十分な国民的な議論を経た上で・・・TPPについての結論を得ていく」といった。ここでいう「国民」とは経団連などの企業経営者をさしているのか、それとも、そうでない大多数の国民をさしているのか。
 近いうちに、首相はTPP参加するか否か、の決断をするかもしれない。その結果によっては、民主主義の原理にしたがって、国民から政治生命を絶たれるかもしれない。

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※表をクリックすると、別ウィンドウで表示されます。表の中の「資料」のリンク先はコチラです。
     

(前回 食糧安保を軽視する朝日新聞

(前々回 TPPは東太平洋FTAにとどめよ

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(2012.05.28)