コラム

「正義派の農政論」

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【森島 賢】
過去最大規模の反原発集会

 昨日は、東京で「さようなら原発10万人集会」が行われた。実際には予定していた人数をはるかに超えて、17万人(主催者発表)の人たちが集まった。そして「再稼動反対」を叫んだ。大飯原発の再稼動に抗議し、今後の原発再稼動に反対する叫びだった。
 NHKは過去最大規模の反原発集会と報じていた。反原発集会としては過去最大規模というのだろう。ここ数か月の反原発の抗議集会は、60年の反安保の集会以来の大きな規模の抗議集会になった。実に、半世紀ぶりの大抗議集会である。
 集会には、若いお母さんも多かったが、労働者も組合旗を持って大勢参加した。生活に密着した運動というだけでなく、生産基点に立った運動にもなった。
 野田佳彦(衆、千葉4)内閣は、いまや、その最大の支持基盤である労働組合からも見放されようとしている。そして、経団連だけが唯一つの支持団体になったようだ。
 原発問題は、今後、長い間、重要な政治問題であり続けるだろう。大多数の国民は、福島の惨禍を決して忘れない。そして、忘れられないかぎり抗議運動が続くだろう。
 このような国民的な抗議運動こそが、日本の政治を根底から揺さぶり続けるだろう。半世紀ぶりに、日本の政治に活力を与えるに違いない。

 先日、鳩山由紀夫(衆、北海道9)元首相は、世間では、民主党は自民党野田派になった、と揶揄されていることを、記者団に話していた。そんなことを言われたら、自民党も不愉快だろう。だが、うまく言い当てたのもだ、と思った人は少なくなかったろう。
 民主党は、3年前に自民党から政権を奪い取ったときの初心を、すっかり忘れてしまったようだ。その後も、グリーン・イノベーションといって、再生可能エネルギーを普及する、と言っていたのに、原発の再稼動を順次進めようとしている。

 こうした中で、政府は再稼動のための、アリバイ作りをしている。
 いま政府は、将来のエネルギーの原発依存度を、どの程度にすべきか、を国民に聞きたいとして、全国の各地で意見聴取会なるものを開いている。
 この会は、その運営がずさんで、おざなりだ、として批判されている。国民といっても、実際には電力会社の幹部や社員の原発推進の意見を聞いている、という批判や、せっかく全国各地で行われているのに、地元でなく、東京などの他の地域の原発推進の人が多く含まれている、という批判である。しかも、9人の意見を聞くだけで、質問もできない。

 こうした批判も、さることながら、もっと根本的な批判がある。
 この会は、政府が示した3つの案についての意見を聞くものだが、この3つの政府案は、2030年の原発依存割合を、0%、15%、20〜25%の3つ案のうちの、どれにすればいいか、というものである。ここに重大な問題がある。
 政府の意図は透けて見えている。政府は、この3つの案の中間の15%を期待しているのだろう。期待どおりになれば、政府は、今後この錦の御旗をかざして、次々に原発を再稼動できる。まさか、0%にせよ、という結論にはならないだろう、と期待しているのだろう。

 だが、そうはいかない。昨日の大抗議集会は、原発の再稼動に反対する集会だった。原発依存度をゼロにしないで、大飯原発を再稼動したことに抗議する集会だったし、今後、原発依存度をゼロにすることを要求する集会だった。それが、過去最大の規模になったのである。
 集会には、いまも原発被害に苦しんでいる福島の人たちが大勢参加していた。国民は、福島の惨状に目をつむることはない。29日には、再び大規模な抗議集会が計画されている。

 この抗議運動は、「あじさい革命」と言われている。チュニジアの「ジャスミン革命」を連想させる名前である。「ジャシミン革命」が「アラブの春」をもたらしたように、「あじさい革命」は、長いあいだ停滞していた日本の政治に熱い夏を呼び込むだろう。
 安保闘争が、その後の55年体制の発端になったように、反原発運動は、TPPなどの市場原理主義に反対する運動とともに、今後の政治体制の対立軸を形作るだろう。
 そのことを、現実感覚の鋭い小沢一郎(衆、岩手4)新党代表は、いち早く感じとっている。だから、新党の看板に、反増税と並んで脱原発を掲げている。

 政府は、集会に参加した人びとの要求に応えねばならない。経団連の一握りの幹部にも、集会に参加した大勢の名もない人にも、同じ一票の選挙権を認めている「民主」党の政府なのだから。
 そうしなければ、民主党には、来るべき新しい政治体制の中で、生き残る余地はないだろう。

 

(前回 朝日新聞の不勉強 )

(前々回 「あじさい革命」が広がっている )

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(2012.07.17)