コラム

落ち穂

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【駄々っ子】
「食料自給率向上内閣」

 夏の花、夾竹桃が小学校の校庭で咲き誇っている。何でも夾竹桃は「広島市の花」だそ...

 夏の花、夾竹桃が小学校の校庭で咲き誇っている。何でも夾竹桃は「広島市の花」だそうだ。原爆で廃墟となった広島は70年は草木も生えないだろうといわれた中で、一番先に咲いたのがこの夾竹桃だという。その赤とは対照的に足元には緑のジュータン、田んぼが広がっている。夾竹桃も強く、たくましいが、田んぼの稲も3カ月でしっかり大きくなった。草丈は80センチはあろうか、苗が何十本にも分けつし、もう頭の垂れている田んぼすらある。
 先日、所用で新幹線、在来線特急を乗り継ぎ青森まで行った。昔、昔、上野〜青森は半日くらいかかったと記憶しているが、今やたったの4時間で結ぶ。隔世の感とは、まさにこのことだろうが、車窓から眺める水田風景は昔も今もさして変わっていないような気がする。山を越え、トンネルを抜けると、きまって緑の光景が眼に飛び込む。この当たり前の光景も毎年、水を張り、田植えをしなければ見られないことだ。これを弥生時代から何千年も繰り返してきた日本人とは何と凄い民族なんだろうと正直思う。
 だからこそ、福田首相はこの国を守るべく、食料サミットで食料自給率向上を国際公約し、洞爺湖サミットでも、目下の世界的な食料需給の逼迫・高騰を議題に取り上げたはずだ。しかし、先のWTO閣僚会合では、こうした日本の農業政策の舵きりの方向は理解されず、関税削減や重要品目の数などで、守勢に回り、孤立感を深めただけだという。そんな中、8月に入り、福田首相は内閣改造に踏み切った。農相には新大臣を迎え、自民党政調会長には農政通の大ベテランを据え、食料自給率向上という、農政いや、この国の最大の課題を乗り切ろうとする、その心構えは"よし"としよう。
 幸いWTO交渉は決裂し、日本農業は取り敢えずは窮地を逃れた。でも、日本農業を立て直し、食料自給率向上を実践する時間はそうない。新聞報道によると、同じ島国で食料自給率70%の英国ですら、世界的な食料危機を踏まえて、食料政策を大幅に見直すという。福田首相は発足時、「背水の陣内閣」といったが、これは自民党政権にとっての意味。今度の改造内閣は「総選挙準備内閣」と言われるが「背水」には変わりない。なぜなら、自民党どころか、農業を再生し、食料安保をはからなければ21世紀この国は生き延びれない瀬戸際にある故。その意味で、新内閣は「食料自給率向上内閣」。これこそが首相のいう「安心実現内閣」の目玉なのだから…。

(2008.08.05)