コラム

消費者の目

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【花ちゃん】
復興を祈るばかり

 昨年の8月、仕事で岩手県気仙沼に行きました。宿泊したホテルは、港に突き出した浮見堂と五十鈴神社のすぐ裏にあって、港を見下ろす丘の途中に立っていました・・・。

 昨年の8月、仕事で岩手県気仙沼に行きました。宿泊したホテルは、港に突き出した浮見堂と五十鈴神社のすぐ裏にあって、港を見下ろす丘の途中に立っていました。ホテルの前の道は車一台がやっと通れるほどの幅しかなく、ガードレールの向こうは崖です。
 その先には大型の漁船が停泊する埠頭があり、出航の準備をする船からは小気味良いディーゼルエンジンの音が響いていました。

 翌朝、ホテルの玄関を出ると、小学3年生くらいの少年が寄ってきて、「崖の下に携帯電話を落とした」と訴えました。ガードレール越しに覗くと、崖はうっそうとした草に覆われており、途中に引っかかっているようにも見えました。崖の下の工場にいた若い社員も一緒に探してくれましたが見つかりません。手に負えそうにないのでフロントの男性を呼ぶと、長い棒を持って出てきてくれました。フロントの女性も出てきて一緒に探しました。

 少年は、ホテルの前で養護学校の先生と待ち合わせをしていたところ、誤って携帯電話を落としたそうです。「お兄ちゃんに叱られる」と、しきりに気にしている姿が印象的でした。
 先生が待ち合わせ時間に現れて、その子のお母さんに連絡し、携帯電話を諦めることで、その場は収まりました。後日、崖の下で携帯電話が見つかったと気仙沼のホテルから葉書が届きました。その葉書は今も大切にとってあります。

 3月11日の大震災で、気仙沼は大きな被害を受けました。少年とその家族、少年の携帯電話を一緒に探したホテルのフロント係、工場の若者など、気仙沼の方々も被害を受けられたのではと心配しています。一日も早く災害から復旧・復興し、またもとの生活を取り戻されることを祈るばかりです。

(2011.04.07)