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【慶應義塾大学医学部漢方医学センター副センター長】
渡辺 賢治 氏

 「いい医療を提供し、いい薬を作るためには、いい原材料が必要だ」。そのためには、農家が良品質の薬草をつくり、それを製薬メーカーが正当に評価して買い上げる仕組みが必要だと提言した。

 渡辺氏は、1984年に慶大医学部を卒業。米国スタンフォード大学などでの研究を経て、95年に北里研究所東洋医学総合研究所、2001年に現職に就いた。
 漢方を主に研究し、西洋型の最先端医療と漢方が融合している日本の医療を「世界でも比類のない統合医療のモデル」だと評価している。しかし、渡辺氏によると、中国での生薬市場の急成長と欧米での需要の伸びから、「(国内での)漢方の存続が危ない」と警鐘を鳴らす。
 渡辺氏によると、現在の日本の生薬自給率はわずか13%。8割以上が中国に依存しているという。以前は、日本の生薬自給率は高かったが、「日本には薬草市場がなく、良質な薬草が高く評価されるという仕組みがない」のが自給率減少の要因の一つであり、「薬草の適正価格を形成するメカニズムが必要」だと強調している。
 日本で東洋医学を専門とする医者はわずか2400人。これは中国の40万人、韓国の2万2000人に比べて圧倒的に少なく、市場規模も中国2兆円、韓国5000億円に対し、わずか1300億円だ。
 しかし、中韓と異なり、西洋医学と漢方が融合された日本の形は欧米からも高く評価されており、6次産業化なども視野に入れて「漢方を国家戦略にするべき」であり、国産の良質な薬草を増産するチャンスだと提起している。


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(2012.11.26)