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【JA京都中央常務理事】
大島 正次 氏

 「農協運動の仲間たちが贈る 第36回農協人文化賞」の経済事業部門を受賞した。

特性生かして経済事業

【体験と抱負】
◆農業所得増へ事業体制整備

 昭和49年に入組以来、農協人として40年が経過するにあたり、地域農業の振興、JA経済事業の体制整備についてのあり方を思慮する機会がそれぞれに訪れました。
 まずは旧JA大原野時代の経済部販売課を担当した時です。当時大原野地域の主力農産物は、春の『たけのこ』、夏秋の『なす』がありましたが、冬季はこれといった主力農産物はありませんでした。
 そのようななか、先ず、大原野の産地名声を広げること、市街化周辺農業の利点を生かすため、生産者と栽培技術や出荷に関する協議を重ねる一方、他産地の市場動向調査・分析を行いつつ、『なす』においては、販売チャネルを拡大するため、規格ごとに市場分荷を開始するなどの取り組みを行いました。
 また、『たけのこ』では市場流通だけではなくJAが主体となり贈答用品(生産者出荷の採りたて季節限定高級品)として、消費者から直接注文を受けて全国に発送を始めました。このことが評価対象となり、平成元年には『たけのこ』が‘京のブランド産品’に認証され、大原野地域は産地指定を受けることとなりました。
 さらには、冬季における地域の主力野菜として『ほうれんそう』に生産誘導を絞り込み、市場流通(出荷)が途切れることがないよう生産者と作付け及び出荷について話し合いを幾度も粘り強く繰り返し、産地づくりに取り組んだ結果、なんとか市場関係者からの信用を得られるようになりました。
 微力ですが、この様な取り組み全てが、農業所得の増大、生産者手取りの向上につなげるお手伝いになったと思っております。また、さらなる所得の増大に向け、農家の経営分析に基づいた指導を行うため、青色申告部会を設立し、農家別の対応も強化を図って参りました。

◆特産品見出し地域農業振興

ブランド品に育てた大原野地域の「たけのこ」 現在所属するJA京都中央は、平成8年4月に13JAが合併し、京都市、長岡京市、向日市、大山崎町の3市1町にまたがっています。経済事業としては16支店に経済係を配置し、本店に事業推進課・営農販売課を置き、本店直轄の農機センターを6拠点に配置する他、農家組合員の営農支援事業である事業センター3ヶ所(水稲苗育苗・ライスセンター・堆肥製造等)と、たけのこの加工場があります。
 当JAは、経済事業の地区別特徴として3ブロックに分けることが出来ます。まず、西部地域は主に市街化周辺農業地域(農振地域含む)と、都市的農業地域(不動産所得との兼業農家)の混在地域であります。次に、南部地域は主に都市的農業地域(不動産所得との兼業農家)と、市街化周辺農業地域(農振地域含む)の混在地域でやや西部地域と似かよっています。そして、北部地域は林業も含む中山間農業地域と都市的農業地域・市街化周辺農業地域の混在地域であり、合併以降営業所の廃止や支店統合を行ってきた地域でもあります。
 さて、このような各地域を管轄する各支店経済担当者の要員は、購買供給高や販売取扱高に応じ、10支店が1名、2支店が2名、4支店が3名の配置としています。少人数であるのは経済事業の採算性を考慮したことによるものです。
 JAの使命と言える農業所得の増大については、最大の関心ごとです。地域特産物を継続的かつ安定的に生産・販売できるか、また、それに伴う生産資材をいかにコストダウンするか、重要なテーマです。一方、農業環境については千差万別であり経済事業においても、生産資材中心地域と生活資材中心地域に分かれます。当然JAへの期待も多様化、高度化しています。
 このような状況に対応するため、現在の環境にマッチした経済活動が可能となる戦略として、事業の専門性・機動性の強化と、経済事業部門損益改善のため、営農・経済事業拠点の集約化による「西・南ブロック」「北ブロック」の2拠点体制づくりを中心に推し進めており、あわせて地域農業の振興に取り組んでいます。

(写真)
ブランド品に育てた大原野地域の「たけのこ」

◆農業の持続へ、取り組み強化

 現在、経済担当常務として二期目2年を経過し、JAの経済体制については、一昨年の農水省の監督指針の改正で、信用・共済事業部門から経済関係部門への赤字補填を常態的にしている場合は、効率的運営等により段階的に縮減することや、特に最近の政府の規制改革会議における、農協改革案である中央会制度の廃止、准組合員の利用制限、信用・共済事業の移管、全農の株式会社への転換等、JAに大きな影響を与えかねない状況にあります。
 今後は、営農支援事業である事業センター(水稲育苗・ライスセンター・堆肥製造等)の利用事業にも力をいれ、農家の高齢化対策や持続的な農業支援は、農地保全にも役立ち、農家の負託に応えていけると考えます。 また、営農相談業務はもとより、TAC(営農渉外)の活動も強化し、組合員の負託に応えるよう努めてまいります。

【略歴】(おおしま・まさつぐ)昭和26年京都府生まれ。49年大原野農協入組。平成7年京都乙訓地区合併準備室出向。8年京都中央農協総務人事課長、18年信用部長、20年経済部長、21年常務理事に就任。

【推薦の言葉】
 大島氏は昭和49年に旧大原野農協に入組以来、40年にわたり農家組合員との協同活動に全力を傾け、現在も率先して実践しているリーダーである。
 昭和50年代、当時、大原野地域の主力農産物だったタケノコやナスのブランド化に尽力し、これによって京都の「大原野」という産地の名声を広げたことは、地域の生産者や流通関係者の誰もが認める功績である。タケノコではJAが主体となって消費者への直接販売に取り組み、贈答用商品として全国発送、生産者手取りの向上につながるとともに、ブランド化に弾みをつけた。そのほか冬季の作付けをホウレンソウに絞り込むなどの作付け誘導を行うなど、生産・と販売のコーディネーターとして農家の信任を得ている。
 合併後のJA京都中央では広域化と多様化に対応するため、ブロック別に特徴ある事業対策を打ち出し「健全経営・組合員主体の運営」をスローガンに掲げ、現在は営農・経済事業拠点の集約化の体制づくりを進めている。

(2014.06.23)