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【JA鷹巣町代表理事組合長】
佐藤 清孝 氏

 「農協運動の仲間たちが贈る 第36回農協人文化賞」の共済事業部門を受賞した。

力なき農業者のために

 

 私の農協人生のスタートは、昭和40年に鷹巣町(現在は北秋田市)に6つあった農協の1つ七日市農業協同組合に入組したことから始まりました。入組した当時は戦後の混乱と貧しさから立ち上がり、高度経済成長という夢溢れる時期の真っ只中でした。
 経済成長という時代の波の流れにおいて、故郷の景色や農業・農村を取り巻く情勢は大きく変貌を遂げています。そのような時代の中において、常に私の心にあったのは「力なき農業者のために」という思いでした。50年経った現在も個々の農業者の力は弱く、個人の力だけでは何もすることができません。農業協同組合は農業者にとって必要かつ重要な組織であり、その組織活動が大きな力となって力なき個々の農業者を支えているのだという考えが、私の農協経営における原動力になっています。

 

◆繋がり深める組合員の拠所

伝統行事の「雪中田植え」 小さな町の中で6つの農協が競合していたのでは、組織力も弱いうえ事業効率も悪く経営も安定しない。そのようなことから、元号が平成に改められると、3回の合併を経て平成5年に現在の鷹巣町農業協同組合が誕生しました。
 その頃私はまだ職員でしたが、コンピューターの飛躍的な普及により事務の効率化が図られ経営も安定はしましたが、職員数が年々減少しきめ細やかな組合員対応が疎かになってしまったことも相まって、組合員との繋がりが希薄になり、組織活動を行っていくためには致命的となる組合員の農協離れが起こってしまいました。「組合員なくして農協にあらず」合併後も職員として働いた10年は、いかにして組合員との繋がりを取り戻し、そしてその繋がりを深めていくかを常に考えていましたが、1職員として出来ることには限界があり悶々とした日々が続いていました。
 退職してからもまだ何か出来ることがあるのではないかという思いから役員となり、何事においても組合員が拠所とする農協の再構築を目指し第2の農協人生をスタートさせました。
 平成18年に組合長を担うことになり一番初めに取り組んだことは、農協を組合員と地域住民のパートナーにすることでした。離れてしまった組合員との繋がりを取り戻すための取組みに重点を置いたことはもちろんですが、これから次代を作り上げていく子ども達にも農協と繋がりを持ってもらおうと考えたのです。その考えを実践しようと思案していたときに思いついたのが、JA共済の「地域貢献活動」の利用でした。この「地域貢献活動」を利用しながら、現在行っている体的な取組みについていくつか紹介いたします。

(写真)
伝統行事の「雪中田植え」

◆次代へつなぐ子供たちと絆

ご当地ヒーロー「超神ネイガー」の交通安全教室 はじめに、保育園児や幼稚園児に対しては、秋田県人ならば誰もが知っている秋田県のご当地ヒーロー「超神ネイガー」による交通安全教室や交通安全ミュージカルを開催し、交通ルールや交通マナーについての教育活動を行っています。
 次に「未来への絆づくり」を目的とした次世代対策としては、男子小学生を対象にして学童野球大会を、女子小学生を対象にして、元全日本女子バレーボール選手を迎えてのバレーボール教室と町内小学校対抗戦の大会を開催しております。これらの大会には、地元産米をPRするため当JA青年部の試験田で収穫したお米「あきたこまち」で作ったおにぎりを青年部が提供しており、美味しいおにぎりの提供は毎回大評判で、このような小さな取組みであっても地産地消に繋がっていくことを願いながら支援を続けております。
 その他にも管内小学校の学校田や野菜農園に対する指導や、地元農産物を使った調理実習等の食育支援も行っており、このような活動や支援は今すぐ経営実績に繋がるものではないかもしれませんが、次世代を担う子供達が、このような農協の活動と農協の存在の必要性を理解してくれたら、それは農協にとって将来に向けての大きな財産になるのではないかと考えます。
 また、JA共済が推奨している3Q訪問活動は、共済の営業活動のみならず、管内の高齢者世帯の安全確認と組合員やお客様の生活状態の変化を知るための手段として、有効かつ有意義な訪問活動と位置付けています。
 私が取り組んできた地域密着型の経営方針は、このような地道な取組みが効を奏し着実に根付いて行っており、各事業計画達成の成果に繋がっていると思います。

(写真)
ご当地ヒーロー「超神ネイガー」の交通安全教室

 

◆地域の発展に改革を恐れず

 時代とともに姿を変えながら発展し大きくなった農協に対し、ここに来て組織改革の動きも見え隠れして来ております。また当地区では、販売力と組織力の強化を目指し、広域合併についても研究会が立ち上げられております。このような動きも出されるのも時代の必然かもしれませんが、どのような方向に進んで行こうとも、農協が組合員や地域住民の方々に求められる限り、改革には恐れずに立ち向かい、地域農業と地域の持続的発展のため私は努力を続けて参ります。

【推薦の言葉】

地域活動で事業達成

 共済事業の目標として、「地域に安心の輪を広げよう」を掲げながら、「ひと・いえ・くるま」の総合保障を確立するため、相互扶助と協同の事業活動により、農村の地域社会づくりに取り組んでいる。次世代対策を柱とし、職員一丸となったひたむきな努力は他の農協の模範となるものである。
 具体的な活動としては、事業活動を行いながら、高齢者世帯の安全確認も行う目的で、利用者の生活や健康状態に変化がないかを絶えずチェックしている(3Q訪問活動の実施)。また、管内の幼児・学童に対しては、交通安全教室、学童野球大会、同バレーボール大会などの地域貢献活動を、次世代対策として開き、地域での存在感を高めている。一方、エリア戦略としては、それぞれ特性を持つ各地域に担当職員を配置し、きめ細かな組合員・地域住民のニーズに対応した活動を行っている。こうした地域活動で、県内JAの新規共済契約が減少するなか、毎年事業計画を達成している。

【略歴】
さとう・せいこう
 昭和19年生まれ。38年秋田県立鷹巣農林高校卒業、40年七日市農業協同組合入組。平成5年合併により鷹巣町農業協同組合へ。15年鷹巣町農業協同組合理事、18年鷹巣町農協代表理事組合長となり現在に至る。秋田県農業信用基金協会理事、公益社団法人秋田県農業公社理事なども務める。

(2014.07.01)