man・人・woman

JAcom man・人・woman

一覧に戻る

【JA静岡市代表理事組合長】
青山 吉和 氏

 「農協運動の仲間たちが贈る 第36回農協人文化賞」の信用事業部門を受賞した。

小さな活動で組織強化

 平成16年暮れ、元組合長から「JA経営の中で心棒になるのは、組合長は勿論だが、専務の存在には大きなものがある」等々、お話を伺っている中で、「君にその専務を頼みたい」がJA静岡市でのスタートでした。
 我が家は果樹(ミカン、梨、桃)+酪農を営む農家でした。長男として生まれ当然、自分も農業を継ぐつもりで農業高校へ進学しました。
 しかし、東名高速道路開通後、国道バイパス、区画整理による宅地化などによる開発は目覚ましく、農地がわずかに残るだけとなってしまいました。
 当然、高校卒業後の進路は決まらず悩んでいると、中央協同組合学園が開校したがどうだと声をかけられました。「中央協同......?」、農協がつくった学校ぐらいしかわからず、昭和48年4月には4期生として高尾の地に就くことになりました。
 全寮制で3年間、農協簿記、協同組合論など分かったつもりで勉強をしてきました。
 昭和50年4月にはJA静岡中央会に入会し、以来30年間中央会勤務を経て冒頭の転機を迎えることになりました。 

◆対話で結集へ、組合員と職員

職員との対話会 平成17年5月に学識経験理事として専務に就任して、まず2つの対話会を実施しました。
 一つ目は職員との対話会です。JAで仕事をして感じたことは、役員の思いが職員に伝わっていないなということでした。行事や事業推進など目標を与えられたからやる。まさに魂の入っていない活動だと感じました。
 常勤役員が手分けして、業務終了後小グループに分かれて対話会を行ってきました。役員の思いを伝え、職員から質問・要望を受けるという形でテーマを変えながら現在も実施をしています。
 二つ目は組合員との対話会です。この対話会のために開催方法など内部で検討・準備をして、平成19年度からスタートしました。初年度は9月から11月までの約3か月間、123会場で2200名余の組合員の参加をいただきました。このようにJAが地域に出向いての対話会は、平成4年にJA静岡市が合併してから初めてのことであり、JAに対する意見・要望をたくさんいただきました。組合員との対話会も毎年テーマを変えて様々な視点から実施をしています。
 二つの対話会を続けていく中で自分なりに見えてきたものがあります。[1]世代交代が進み“農協は俺たちのもの”と思っている世代が急速に減少してきていること、[2]JAの方針が組合員まで伝わっていないこと、[3]支店は金融の窓口であり協同活動としての地域の拠り所ではなくなってきていること等、改めて協同組合の本質部分の理解、認識をする取組みの必要を感じました。

(写真)
職員との対話会

◆次世代見据え教育体制整備

 そこで、組織代表(総代代表、青壮年部、女性部、理事等)による組合員教育対策委員会を立ち上げて、今、当JAで取り組んでいる活動の洗い出しを行うとともに取り組むべき方向(三本の柱)を話し合いで決定しました。
 3本の柱は次の通りです。
 その一つは集落、支店を範囲とした活動の展開から支店を拠点とした「小さな協同」づくり運動の展開。
 二つ目は組織リーダー、総代を対象とした研修会等の活動です。
 そして三つ目は次世代を対象とした活動です。
 このような活動を展開していくためには当然、活動資金が必要となることから「組合員教育基金」(目標10億円)の積み立てを総代会で決議し、平成25年度総代会での剰余金処分を含め約5億円まで基金を造成することができました。

◆集落の部農会活性化が急務

組合員との「ふれあい座談会」 本県は集落単位に農家が組織する「部農会」(農家組合)があります。産業組合当時、組織化された農事組合の流れを汲む組織だと言われています。
 この部農会が当JA管内に270あり、会員=正組合員であるため、JA事業の推進を担うとともに役員や総代を推薦するなど大切な組織となっています。
 しかし、近年は部農会員の減少や組織を解散するところまで現れるようになってしまいました。JAにとって基礎的な組織の弱体化は、運営上大きな課題となってきましたので、JA静岡中央会と岡山大学の協力を得て調査・検討を経て、活性化の提言に基づき今年度から本格的な活性化対策に取り組んでいます。

(写真)
組合員との「ふれあい座談会」

◆     ◆

 平成17年度から、対話会・組合員教育・基礎組織の活性化と実施してきました。どの取組みもすぐに成果の出るものではありませんがJAにとって、決して疎かにできない活動だと思います。
小さな活動(力)の積み重ねにより組織基盤の強化は図られると信じています。


【推薦の言葉】

地道な姿勢に厚い信頼

 青山組合長はまず組織立て直しにリーダーシップを発揮した。組合員との座談会をすべての地区で計画、「組合員とのふれあい座談会」とし、役員が率先して参加、街中の大きな支店から山間部の小さな支店まで直接出向き、支店の統廃合や高齢化した農業、JAへの組合員の想いを聞き入れた。それを継続し定着化させている。また職員には「常勤役員との対話会」を各部署や支店ごとに計画、若い世代と意見を交わす機会をつくった。この地道な姿勢に組合員と職員から厚い信頼が寄せられている。
 信用事業面では地域別に戦略を細かく設定。山間部では年金や農産物の振込などの貯金取引を主体、金融機関が乱立する南部地区では融資を中心に住宅ローンなどに力を入れる。その結果、貯金・融資残高は大幅に伸びているが、組合員が銀行と比較してJAを選択するケースも多い。組合員・利用者が信用事業に結集したくなる組織づくり、役職員がやる気を発揮する職場風土づくりという双方向の活動が結実した。

【略歴】
あおやま・よしかず
昭和28年静岡県生まれ。50年3月中央協同組合学園卒。同年4月静岡県農業協同組合中央会入会。平成17年4月同会退会、同年5月静岡市農業協同組合代表理事専務、23年6月代表理事組合長に就任。

(2014.07.03)