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【JAいずみの代表理事組合長、大阪府農協4連会長】
杉本 昇 氏

 「農協運動の仲間たちが贈る 第36回農協人文化賞」の信用事業部門を受賞した。
(※杉本氏の「昇」は、正式には日の下にタ、ヰを書く旧字体です)。

「人」と「緑」を旗印に

 

 私は昭和36年に当時の岸和田市南掃守農業協同組合に入組しました。その後、大きな合併を3度経験し、その度に事業基盤を強化し、組合員や地域からの信頼をいただいてきました。
 昭和44年3月の岸和田市第1次合併、平成9年4月の岸和田市第2次合併で市内一農協となった岸和田市農協の職員として鍛えられ、支店長、また本店部長、参事職を経験した後、平成12年より岸和田市農協の代表理事専務、平成18年からは代表理事組合長の重責を担うこととなりました。
 さらに第3次として平成21年4月に大阪府下では初めてとなる郡域を跨ぐ広域合併により「いずみの農業協同組合」が誕生し、甚だ浅学菲才ではありますが、初代組合長に選任されました。私のJAでは『「人」が大切、「緑」が大切』を経営理念に掲げて、「人」、「緑」を大切にすることにより地域に根ざした組織として、地域がより活性化していくように常に立ち止まらないことを意識しながら各事業を展開しています。

 

◆都市化進むが視点は組合員

 入組当時は一日皆貯金で村の役員さんと全戸訪問して貯金を集めました。当時から町別に目標があり、他の町に負けまいと目標達成に向け競い合ったものです。
 また、時代の変化につれ都市化が進み、管内は市街化地域と調整地域に線引きされました。市街地の地価が驚くほど上昇していくとともに、府や市が道路や公共施設の整備のために土地を買い上げたことから、土地売却代金の獲得に日夜努力しました。そのようなこともあり、岸和田市農協の合併当初に55億円ほどであった貯金残高は飛躍的に伸び、平成20年度には2000億円を、そして第3次合併後の昨年12月には遂に念願の5000億円を突破するまでの貯金残高となりました。
 入組後のJA事業では、市内の開発が進むにつれ、農家の方々が農地を売却したり、転用や相続対策を考えたりするようになったことから資産運用のお手伝いもしました。
 また、低金利時代の到来とともに利ざやがどんどん縮小する時代でしたので、自主運用として貸出量を伸張していくよう決断しました。特に近郊では一層開発が進み住宅建設が増えたことから、個人住宅ローンの貸出しに全力を注ぎました。

 

◆住宅ローンの専門部署設置

 ご承知のように、住宅ローンについては他金融機関との競争が年々激しさを増していくことになります。そのため、私の組合では競争に対応すべく、5年前から住宅ローンに特化した部署を設置し、大手私鉄駅前に住宅ローンセンターを設置しました。
 他行との競合で住宅ローンの獲得に苦しむJAも多いなか、当JAでは順調に残高を増加させることができ、平成24度の住宅ローン獲得件数では府下1位を獲得できました。その後も2つのセンターを開店し、現在住宅ローンセンターは3か所で営業展開しています。 一方、融資担当者の技能・知識の向上に資するため、大阪府信連へ6ヵ月の融資トレーナー研修に継続的に職員を派遣しました。また、融資伸張や債権管理等の達成率によって大きく考課評点がアップするといった職員がやりがいを持てる人事考課制度を取り入れています。

 

◆直売所で発信、地域農業の力

農産物直売所・愛彩ランドの全景 一方で、JAの基幹である農業についても地域の一翼を担うべく邁進してきました。多くの食料が外国から輸入される昨今ですが、国内の食料供給の要を担うのは結局、小規模生産者であり、その小規模生産者の組織である農業協同組合が農を活性化させる責任があると考えています。
 そこで地域農業活性化と情報発信の基地局として、平成23年4月に農産物直売所(愛彩ランド)を開業しました。農産物直売所では豊富な地元産野菜を中心に果物、花、加工品等を揃え食の安全・安心を提供しています。
 この愛彩ランドでは直売所の横で水茄子等の加工施設や、食育体験の場として交流施設を稼動させ、地元が農業によって元気になるよう頑張っています。さらには地元の新鮮な野菜をより多くの方に食してもらうため、ビッフェ形式のレストランを併設し、人気を博しています。地元野菜を美味しく味わっていただくことで農業の良さ、旬に食べるおいしさ、すばらしさを感じていただきたいと考えております。
 本年で3周年を迎えた農産物直売所ですが、既に出荷農家は1000軒を超えるとともに、来場者も26年3月末で160万人を超え、連日大勢のお客さまにご来店いただいております。
 農産物直売所と併せて、地域の農業のさらなる活性化のため、平成25年度には農業法人「JAファームいずみの」を設立しました。
 農業法人では、育成が難しい苗を育て組合員に提供する育苗事業や、若い担い手を育て、将来の農業のさらなる活性化を図るべく指導・育成を行う担い手育成事業等を事業として行っています。成果についてはまだまだこれからですが、必ずや活力ある地域農業、ひいては大阪農業、日本農業に貢献するものとして探求心をもって頑張っていきたいと思います。
 合併から6年目、JAいずみのは関西国際空港にも近く、大都市近郊の利点を十分に活かし、大阪府下で最も元気なJAと呼ばれるよう各事業にまい進してまいります。

(写真)
農産物直売所・愛彩ランドの全景


【推薦の言葉】

都市化のなかで信頼得る

JAいずみの貯金残高5000億円達成祝賀会 平成25年度の貯金残高5000億円の達成は、杉本組合長のリーダーシップのもと役職員が総力をあげた成果と評価される。信用事業ではほかに本店、和泉中央住宅ローンセンター、泉大津住宅ローンセンターを設置し、自主運用力強化の柱となる融資残高の向上への取り組みや、平成25年度に大阪府下初のJAバンクCS改善プログラムの取り組みも評価される。
 また、都市農業地域の特性を活かして、出荷協力会員1000以上が結集する農産物直売所「愛彩ランド」を開設。地元野菜を提供するレストランは地域の人々が集う場にもなっている。ほかに職員の人材育成(とくに資格取得)や支店・購買店舗・直売所等の職場ごとの個性を発揮するように職員グループが創意工夫を行うなど、組合員・利用者が利用したくなる環境づくりにもリーダーシップを発揮している。都市化の進行と信用事業を取り巻く厳しい競争のなか、献身的な姿勢と卓越した実行力には、今後、さらなる活躍が期待される。


【略歴】
すぎもと・のぼる
昭和16年大阪府生まれ。36年岸和田市南掃守農業協同組合に就職。44年広域合併で岸和田市農業協同組合に再編、平成12年代表理事専務、18年代表理事組合長、21年広域合併でいずみの農業協同組合に再編、代表理事組合長。23年から大阪府農協4連会長。

(2014.07.04)