農政・農協ニュース

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多彩なメンバーで食についてシンポジウム

    食料自給率の向上に取り組む国民運動「FOOD ACTION NIPPON」は10月13日、六本木オリベホールに生産者、消費者、行政など各界の代表者を招いて、「食料の未来を描くシンポジウム」を開き、一般公募を含む約330人が集まった。    コーディネーターに農政ジャーナリストの中村靖彦氏を迎え、パネラーはJA全青協の竹村英久会長、東大の生源寺眞一教授、イトーヨーカ堂常務執行役員の竹田利明氏、料理研究家・管理栄養士の竹内冨貴子氏、農水省食料安全保障課の末松広行課長の5人。中国の食と生活の変化や、米粉の現状など...

    食料自給率の向上に取り組む国民運動「FOOD ACTION NIPPON」は10月13日、六本木オリベホールに生産者、消費者、行政など各界の代表者を招いて、「食料の未来を描くシンポジウム」を開き、一般公募を含む約330人が集まった。
    コーディネーターに農政ジャーナリストの中村靖彦氏を迎え、パネラーはJA全青協の竹村英久会長、東大の生源寺眞一教授、イトーヨーカ堂常務執行役員の竹田利明氏、料理研究家・管理栄養士の竹内冨貴子氏、農水省食料安全保障課の末松広行課長の5人。中国の食と生活の変化や、米粉の現状などの映像を交えながら約1時間半、日本の食料自給率の向上について意見交換などを行った。

(左から)中村靖彦、生源寺眞一、竹内冨貴子、竹村英久、竹田利明、末松広行(敬称略)
(左から)中村靖彦、生源寺眞一、竹内冨貴子、
竹村英久、竹田利明、末松広行(敬称略)

◆新興国の変化にどう対応するか

    中国の映像では、武漢の土地開発の現状が紹介された。中国では現在急速な都市化が進んでいて、過去9年間で日本の農地の1.8倍が住宅地や商工業地に変わった。市民の所得も急増し、畜産業が急伸している。
    生源寺教授は「毎年中国に行っているが、ここ5年ぐらいで農村での牛の放牧が目立ってきた」と現状を報告し、竹村会長は「新興国の畜産ブームで、これまで日本に流入していた牧草や配合飼料が減少し高騰している。今後自分たちの原料や飼料がなくなってしまう懸念もある」と窮状を説明した。
    中村氏が「輸出規制などの影響で、お金があっても海外から食料を買えなくなる可能性もある」と述べたほか、末松氏も「輸出規制には自国民優先と自国経済保護という2つの側面があり、構造的な問題なので、中長期的に見てこの状態は続くだろう」と説明。流通側の意見として竹田氏は「一番大きいのは食品ロスの問題。買う側も売る側も必要な分だけ買う売るというやり方を、もっと考えていかないといけない」と話した。
    
    ◆「自給率低下の原因は農の衰退」
    
    なぜ食料自給率が40%以下にまで落ち込んだのかという問いに対して、竹内氏は「40%と言われても、スーパーにはたくさんの食材や食べ物が売っているので実感がわかない。輸入野菜やギョーザの事件で刺激を受けて、ようやく現状を知った」と消費者代表としての率直な感想を語り、生源寺教授は「80年代中ごろまでは食生活が変化しても農業がそれに対応する力があったが、80年代後半以降はその力がなくなった」と農業の衰退が原因だと述べた。
    食料自給率向上のための取り組みについて竹村会長は「日本の土地には米が一番合う。大豆や麦を生産するのも大事だが、やはり米を作ることで水田をフル活用するべきだ」と述べながら、自身の営む畜産業については「正直言って、かなり厳しい。所得向上のためには、設備投資をして大規模化し増産しないといけないが、今のままでは投資分が赤字化する。だから子供には継がせたくない、となってしまう。もっと経営全体を考えた下支えが必要だ」と、政策の支援や消費者への現状理解を求めた。
    一般参加した主婦は「自身の健康の問題もあって、食への関心が高まっている。竹内さんが言うように、40%という実感はまだ分からないが、こういうイベントを見て少しずつ考えたい」と、今後のイベント開催にも期待していた。

(2008.10.14)