農政・農協ニュース

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生産数量目標795万t―23年産米

 23年産米の生産数量目標などを決める「食料・農業・農村政策審議会食糧部会」が11月29日に開かれた。部会では政府が諮問した「基本指針」(米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針)を審議し諮問どおり答申した。23年産米の生産数量目標は近年の需要動向などから初めて800万tを下回り、795万tとなる。

◆需要の下ブレ見込む

食料・農業・農村政策審議会食糧部会 部会では21/22年(平成21年7月〜22年6月末)の主食用需要量の確定値が報告された。
 7月末公表の速報値では810万tとされたが、その後の精査で4万t多い814万tとなった。民間在庫の削減があったためという。
 これをもとに過去の需要実績のトレンドから推計した22/23年(22年7月〜23年6月末)の需要見通しは811万tとなった。
 また、この数字をベースにした23/24年の需要見通しは802万tと推計された。しかし、農水省は米の需要動向には変動があり、需要の見通しと実績にはズレが生じていることから、802万tから7万tを控除した795万tを23年産米の生産数量目標とすることを諮問、部会で了承を得た。
 部会には22年産米の価格も報告された。それによると9月の相対価格(全銘柄平均)は60kg1万3040円で21年産米同時期価格(1万5169円)より2000円以上下がっている。
 部会の議論では、「作況が98なのになぜ昨年より価格が下がるのか」、「出口対策が必要」、「戸別所得補償制度の影響はないのか」などの意見もあった。

◆需給調整対策、議論に

 臨時委員のJA全中・冨士重夫専務は需給と価格の安定を図るため、過剰作付けや持ち越し在庫への対応が必要だとした。
 22年産米の生産数量目標813万tから換算した面積は153.9万ha。これに対して実作付面積は158haとなっており、過剰作付けが4.1万haある。過剰生産分は約20万tとなるが、作況が「98」となったため13万t程度の過剰となる。
 一方、21年産米の持ち越し在庫は約30万tになっているといわれているという。6月末の民間在庫は216万t。昨年同時期は212万tとなっている。17年から20年までの6月末民間在庫量は160万〜180万t水準で、これにくらべれば在庫水準は上がっている。
 こうしたことから「22年産米は、21年産米持ち越し在庫と22年産の過剰分も含めて販売している環境」であり、それが22年産米の米価下落を招いているとして、「40万t程度の需給ギャップがある。出口対策が必要ではないか」と冨士専務は指摘した。他の委員からも「作況98でなぜ米価が下がるのか?」との質問もあった。
 これに対して22年産で4.1万haの過剰作付けがあることは事実としながらも、生産調整参加にペナルティ措置を廃止した米戸別所得補償モデル対策の実施で、21年産よりも過剰作付けが8000ha減ったことから、同対策のメリット措置を生産者が評価するとして「23年産以降はさらに減少するのではないかとの高い期待がある」と話した。
 また、豊作による過剰米対策である集荷円滑化対策について、廃止を決めたわけではないものの「戸別所得補償制度は(米価下落などの影響を受けた)経営を支えていくという考え方。手法として整合性が難しい」と(村井計画課長)と述べた。 ただし、JAグループが問題にしている『在庫となって売れ残った米は生産者の所得にならない』との主張については「実際生産された米をどうするかについては問題意識を持っている」と話した。

◆米価下落、なぜ?

 米価の大幅な下落については臨時委員の廣瀬博・住友化学社長も「企業経営の立場からしても、前年比79%から93%の下落(9月の銘柄別速報)とはなんだ、ということになる。よく分析を」との意見が出た。
 米戸別所得補償モデル事業では、価格下落を補てんする変動部分として1391億円を措置している。JA全中の試算によると、米価の補てん水準を60kg1万4700円とすると変動部分は同1700円の下落までが限度となる。現時点で2000円以上の下落、このまま下落が続けば、用意された変動部分の予算枠を超えることになる。予算は確保されるのか? この日の部会では農水省は鹿野大臣ら政務3役は国会等で「きちんと補てんしていくと回答している」と話した。
 一方、21年産から22年産にかけての価格形成について農水省は、8月段階で豊作予想との声が強く、「系統を中心に売れ残り予想が出る」など過剰感が強調された、ことを指摘。在庫を抱えた特定の銘柄の販売価格を引き下げたことが「全体を引っ張ることになったのでは」。
 また、戸別所得補償制度が流通業界からの引き下げ圧力になっているとの指摘もあるが、総合食料局の高橋局長は「不足払い政策が価格形成に影響するとの説と、それとは切り離されるとの説がある」としながらも「ただ、今回のモデル対策のスタート時点では、中立的に市場が形成されてはいなかった」と述べた。
 なお、部会では部会長に中嶋康博・東大准教授を選任した。

◎主な意見
★佐藤あき子委員
:転作して40年。昨年になってこれまでやってきた人もやってこなかった人も同じ、となって現場はどう思ったか。ペナルティなし、となったらこれまでやってこなかった人が協議会にやってきた。現場はまったく無視された。つくっている人が納得できる政策を。
★奥村一則委員:再生産可能な価格を維持するために生産調整をしている。価格が下がっても補てんしてくれるからと戸別所得補償制度に参加しているわけではない。場当たり的な政策では自立できない。適地適作を考えていくべきだ。
★永井進委員:戸別所得補償による岩盤対策はありがたいが本当にこれでいいのだろうか。生産者にはお客さんに届けるという視点が大事。創意工夫も必要だ。
★木村良委員:売らない卸は産地にとっても魅力がないだろう。ただ、価格が下がったのはみな同じものをつくったからではないか。地域が中心になって自分たちの米をどう買ってもらうか、戦略が必要。卸にとっての課題でもある。


【食料・農業・農村政策審議会食糧部会】
◎部会長:中嶋康博(東大大学院農学生命科学研究科准教授)、◎部会長代理:青山浩子(農業ジャーナリスト)、◎委員:奥村一則(サカタニ農産代表理事)、森久美子(作家、北海道農業・農村振興審議会委員)、◎臨時委員:尾畑留美子(尾畑酒造(株)専務取締役)、木村良(木徳神糧(株)取締役会長、全米販理事長)、佐々木明久(日清製粉(株)取締役社長、製粉協会会長)、佐藤あき子(JA全国女性組織協議会会長)、杉本和行(東大公共政策大学院教授、元財務省事務次官)、田沼千秋((株)グリーンハウス代表取締役社長、日本フードサービス協会前会長)、永井進((株)永井農場代表取締役、全国稲作経営者会議青年部長)、廣瀬博(住友化学(株)代表取締役社長、経団連農政問題委員会共同委員長)、冨士重夫(JA全中専務)、椋田哲史(経団連常務)、村松真貴子(食生活ジャーナリスト、フードアクションニッポン応援団)。

(2010.11.30)