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風評被害も一部損害対象に 原賠審第2次指針

 原発事故による損害の範囲を検討している政府の原子力損害賠償紛争審査会は5月31日、4月末に決めた第1次指針に続き第2次指針を決めた。第2次指針では「いわゆる風評被害」も一部を対象に損害範囲として認定した。

 風評被害の定義を指針では、「報道等により広く知られた事実によって、商品またはサービスに関する放射性物質による汚染の危険性を懸念し、消費者または取引先が当該商品またはサービスの買い控え、取引停止等を行ったために生じた被害」とした。
 風評被害など社会心理を専門に研究している東洋大学の関谷直也准教授は、風評被害は「うわさ」によるものではないと強調している。
 そのうえで風評被害とは、「ある社会問題(事件事故、環境汚染など)が報道されることによって、本来『安全』とされる食品や土地、企業などを人々が危険視し、消費や取引、観光をやめることによって生じる経済的被害」と分かりやすく定義している。
 指針でも原発事故による避難指示が出されたために営業断念を余儀なくされ、それによって被った損害ではなく、報道機関や消費者など第三者の意思や判断が入り込む特殊な類型の被害であることを記している。
 ただ、そのうえで風評被害の損害範囲は、原発事故と「相当因果関係が認められるもの」とした。
 具体的には、政府による出荷制限指示が出されたすべての食用の農林水産物とした。
 また、農業者等が消費者・取引先の買い控えを心配し、事前に出荷や操業を断念したことによって生じた被害も原則として原発事故との相当の因果関係があるものと認めた。
 今回の指針では、出荷制限の指示がない県は市場価格の下落などの被害は風評被害の範囲には含まれなかった。しかし、「引き続き市場動向等の調査、分析等を行ったうえで今後検討する」ことが盛り込まれた。

(2011.06.08)