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諫早湾の開門調査、防災など対策工事に1077億円  農水省

 諫早湾の潮受堤防排水門を開門して環境を調査する場合、営農継続や防災対策のために1077億円程度の工事が必要になると農水省が6月10日に公表している。

 諫早湾干拓事業をめぐっては、昨年12月に「3年以内に防災上やむを得ない場合を除き排水門を開放し、5年間にわたって開放を継続」という福岡高裁の判決が確定した。
 これを受けて政府は防災、農業、漁業への影響を配慮し、開門の方法、時期などについて関係する県などと話し合い、検討を進めることにした。
 今回公表したのはそのための「環境影響評価準備書」の素案。現在、これについてパブリックコメントを実施するとともに、今後、関係各県知事などから意見を聞いて8月下旬に「準備書」として改めて公表する。
 素案では開門方法についてケース(1)開門当初から全開、同(2)調整池への海水導入量を段階的に増やし最終的には全開、同(3)調整池の水位や流速を制限して開門、の3つの方法を示し、それぞれの方法が与える影響と必要となる対策も示した。
 開門すれば、現在は淡水化していて干拓地の農業用水として利用している調整池が塩水となるほか、周辺の旧干拓地の水路にも塩水が侵入するため、代替水源の確保が必要となる。
 対象となる農地は約1000haで必要な農業用水は年間で約320万m3。これを確保するため農水省は6地区に深井戸(100m前後)を掘って地下水を利用する代替工事案を提示している。
 そのほか塩水の侵入を防ぐために既設堤防や樋門の補修も93カ所183カ所も必要で常時排水ポンプの設置も必要だとしている。
 また全開した場合は、海水流入によって排水門の根元が洗掘されてしまうのを防ぐための工事や、防災対策としての洪水時排水ポンプの新たな設置なども必要となる。そのほか、すでに調整池内に棲息している淡水性魚介類の移植や、ヨシの刈り取り・撤去などの対策も必要だという。
 こうした対策の工事費として全開した場合は1077億円、水位を調整しながら開門するケースを採用した場合は82億円から239億円かかることを示している。
 今後、関係者などからの意見をふまえたうえで8月下旬に「準備書」を公表、さらに意見を聞いたうえで「環境影響評価書」を作成する。
 さらに「評価書」に対して環境大臣と農林水産大臣の意見をふまえて修正し、政府は23年度中に開門調査に必要となる手続きを終える予定にしている。

(2011.06.16)