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金融庁検査にどう対応すべきか?  検査スタイル大きく転換―プロセス・チェックを重視

 政府は規制・制度改革の一環として、農協に対して金融庁も検査ができるような仕組みを改め、5月に農水省は金融庁と共同で検査の基準・指針を作成した。 それによると貯金量1000億円以上のJAなどが対象となるが、これまでの農水省や県による検査と内容は基本的に変わらないとされる。
 しかし、今後は、JAトップからのヒアリング実施や、業務上の不備を指摘するだけではなく、なぜそうした不備が起きたのか? といった「プロセス・チェック」を重視するものに検査スタイルが転換するという。

 検査は7月から実施される見込みだが、JA全中では、金融庁検査が実施されるかどうかに関わらず「JAの健全経営を確立するため、適切な執行体制の確立やリスク管理の強化など、これまでの取り組みを着実に進めていくことが重要だ」としている。

求められるJAトップ層のリスク評価と管理


◆約半数のJAが対象

 金融庁による検査は、都道府県と農水省、そして金融庁が連携して実施する3者要請検査という位置づけとなる。対象は信用事業。
 これによってJAに対する検査は、原則として、この3者要請検査と共済事業を対象とする都道府県・農水省による2者要請検査、経済事業等を対象とする都道府県単独の検査、の3パターンになる。ただし、各検査の対象事業はあくまで原則だ。
 3者要請検査の対象は(1)貯金量が1000億円以上のJA、または(2)貯金量が当該都道府県内JAの平均以上のJAで、都道府県知事が地域の金融システムや経済に与える影響が大きいと考えたときに要請する。そのほか不正・不祥事の再発が認められるJAも対象となる。
 農水省調べでは今年3月末のJAの平均貯金量は1147億円。1000億円以上は全国で379JAある。

◆経営者とのディカッションを重視

 金融庁による検査もチェック項目は農水省が実施しているものと変わりがない。
 しかし、金融庁は平成19年に金融検査マニュアルを策定、そこでは大きく検査スタイルを転換する姿勢を打ち出した。
 その特徴は▽プロセス・チェックの重視、▽経営トップへのヒアリング、▽利用者保護重視などである。
 これにともなって農水省による検査も、不備・欠陥の指摘重視から、ガバナンスの不備やリスク管理のプロセスチェック重視に切り替える方向だという。
 JA全中によればこした検査スタイルのもとで行われるJAトップへのヒアリングでは▽どこに経営リスクがあると認識しているか? ▽リスクに対してどういう管理処方箋を描いているのか? ▽その処方箋の優先順位は? などをテーマに行われることが想定されており、「経営者とのディスカッションを通じて、ガバナンスがしっかり発揮されているかどうかが評価される」(JA全中)ことになりそうだという。

◆自分の言葉で説明を

 実際に検査で不備・欠陥が指摘された場合でも、「なぜこうした事態が生じたのか?」が問われ、たとえば、支店配置や人員などをめぐってディスカッションされるとみられる。
 また、トップ層からの指示が現場に浸透しているかどうか、幹部職員へのヒアリングで確認することも想定される。
 JA全中ではこれまでに一部JAを対象に役員・幹部職員へのリスク管理態勢に関するヒアリングを行い、改善策(アクション・プログラム)の立案を行っている。各県域でも中央会が信連と連携してJAに対して、こうした取り組みを進めていく方針だ。
 ディスカッション重視の検査では想定問答などでは対応できない。
 「JAトップ層には経営の現状を把握するのはもちろん、自分の言葉で説明することが求められている。それが組合員・利用者の保護でもある」とJA全中は指摘、「リスクをしっかり把握し、よりよいコントロールを実践することで組合員からの信頼性を高めていく契機と考えてほしい。攻めの姿勢で受け止めていくべき」としている。


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