農政・農協ニュース

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担い手との信頼強化でJA事業拡大  TACパワーアップ大会2011

 JA全農では、平成20年から地域農業の担い手に出向くJA担当者をTACの名称で統一し、重点的取り組みとして位置づけている。TACの活動は年々広がり、22年度末では全国285JAで1543人のTACが、約8万7000の担い手農家に対し、年間65万回の訪問活動を行っている。TAC活動の優良事例を学ぶとともにTACと役職員で情報を共有しようと、毎秋行っているTACパワーアップ大会は今年で4回目。11月24、25の両日、東京都内で全国107JAと連合会などから430人以上が参加した。

活動表彰の受賞者と主催者、来賓(写真)
活動表彰の受賞者と主催者、来賓

TACが生産者と消費者を結ぶ

◆連合会、役員のサポート不可欠

TACへの感謝と期待を述べる中野会長 JA全農の中野吉實経営管理委員会会長は、年々拡大しているTACの活動に対して、「(TACが)担い手農家とJAとの信頼関係を築き、アドバイザーとなって農家組合員のニーズに応える体制ができたことは大変心強い」と感謝を述べるとともに、「地域農業の活性化と担い手農家の手取り向上に向けてさまざまな支援を行っていく上では、役職員の意思統一や連合会のサポートが必要だ」として、TAC活動への連合会の支援とさらなる活動推進を呼びかけた。
 来賓では、コープネット事業連合の赤松光代表理事理事長があいさつ。「私たちもJAグループと同じく、生産者と消費者を結ぶ架け橋になりたい。その結び付きをつくってくれるのがTACだと思っている」とTACへの期待を述べた。

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TACへの感謝と期待を述べる中野会長


◆部署横断したバックアップを

 TAC活動の現状と今後の展開については、JA全農営農販売企画部の中澤靖彦部長が発表した。
 平成19年に定めた「担い手対応の目的と手順」では、訪問から情報収集、担い手への個別提案など、その活動段階を6段階に設定した。TACを設置している285JAをそれぞれ分類すると、6(課題解決・経営改善)まで進んでいるJAが60ある一方で、1・2(訪問活動)で留っているJAが104と全体の3分の1を占める。
 活動が進んでいるJAは、TACの選任化やTACミーティングへの役員・他部署の参加率が高いことを挙げ、「TAC活動のレベルアップのためには、JAとしてTACの位置づけを明確にし、十分なバックアップ体制を構築する必要がある」とした。また、すでに6段階まで進んでいるJAでは、次の段階として実際に農産物を購入する生活者との信頼関係構築を挙げた。

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◆JAとぴあ浜松が全農会長賞

 TACの活動表彰では、6つのJAと15人のTACを表彰した。JA表彰で全農会長賞を受賞したのはJAとぴあ浜松(静岡)だ。全49人いるTACの日々の活動について、徹底した見える化と検証を行い、対象農家2500戸をすべて毎月最低1回以上訪問することを達成し、TAC1人あたりの販売実績も前年比1割以上増えていること、新規就農者を対象に遊休農地でタマネギをつくる「新規就農者養成塾」の活動、などが評価された。
パネルディスカッションの様子 表彰をうけた6JAのトップらによるパネルディスカッションでは、TAC活動の発展のためには「役員がTACの活動や意義を認識すること」、「信用、共済などとの部門間連携が必要」などの意見が出された。また、TACの人材育成については、「他のJAのTACとの相互交流が刺激になる」との事例紹介があった。
 基調講演では、野菜スイーツパティシエの柿沢安耶さんが、野菜をパウダー状にしてお菓子に使う手法などを紹介し、「国産野菜をもっと活用して、自給率向上をめざそう」と呼びかけた。

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パネルディスカッションの様子


◆担い手とともに研究会設立

 大会2日目はTAC表彰受賞者の4人とTAC新人表彰受賞者2人が取り組みを発表。担い手の悩みや要望を拾い、収益や収量アップ、コスト低減などにつながる成果を報告した。
 収益改善への取り組みとして、JAいわて中央(岩手)営農販売部担い手支援対策課の高橋政勝さんは新たな水田転作作物の提案事例を報告。ほ場の悪条件によって転作作物の中心である小麦の収量が低下し、担い手の収益確保が困難となっていたことから、保有している農機具を活用できる品目として飼料用米の栽培を提案し、担い手の経営安定につなげた経験を発表した。
 栽培面積の拡大について報告したのはJAうま(愛媛)営農部営農指導課地区担当課長の合田仁さん。特産作物であるサトイモの栽培面積拡大と作業省力化を実現しようと、担い手とともに研究会を設立し「全期マルチ栽培」を取り入れた。その結果、作業労働時間が22%削減でき、栽培面積も17ha増えたという成果を述べた。

◆弱点逆手に信頼づくり

 担い手との信頼関係についてはJAおうみ冨士(滋賀)野洲営農センター営農購買課の森雄也さんが報告した。低いJA購買利用率を改善するため、近隣農家などの集いの場となっていたとある農家に着目し、そこを重点的に訪問することにした。TACに配属されたばかりで営農の知識がないことを逆手に、キュウリの栽培を教えてほしいと申し出てた。それから徐々に相談を受けるようになり要望に応えられるまでの関係を築いたと述べた。
 東日本大震災の被災地からJAみやぎ亘理(宮城)営農推進部営農資材課の佐藤将哉さんは、東北一のイチゴ産地だった管内の震災後の状況について報告。JA新ふくしま(福島)営農部農業振興対策室の後藤喜孝さんは、原発事故の影響で受けた農作物の出荷停止や風評被害といった状況下での活動を述べた。


表彰を受けたのは次の通り(敬称略)。

【JA表彰】
▽JAとぴあ浜松(静岡=全農会長賞)
▽JA新いわて(岩手)
▽JA常総ひかり(茨城)
▽JAレーク伊吹(滋賀)
▽JA京都にのくに
▽JAいずも(島根)
【TAC表彰】
▽北條金一(JAいわて中央・岩手)
▽高橋政勝(JAいわて中央)
▽大石佳世(JAとぴあ浜松)
▽田井中寛和(JAグリーン近江・滋賀)
▽澤田誠(JA京都にのくに)
▽松本善嗣(JAみのり・兵庫)
▽伊藤寛(JA兵庫南)
▽合田仁(JAうま・愛媛)
▽田中茂(JAさが・佐賀)
▽木村美敏(JAやつしろ・熊本)
【TAC新人表彰】
▽三浦二三男(JAいわい東・岩手)
▽武田友彰(JAてんどう・山形)
▽森雄也(JAおうみ冨士・滋賀)
▽藤井一樹(JAみのり)
▽角藤慎一(JA東宇和・愛媛)

(2011.11.25)