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TPP、国民の合意形成なし、との考えとりまとめ 日中韓含めた基本戦略の議論へ  民主PT

 民主党経済連携プロジェクトチームは4月27日の総会で、TPPについて「国民の間の十分な議論、合意形成が図られている段階に達していない」との考えをとりまとめ、大型連休明けの5月7日の週から、日中韓、日豪、日欧などTPPだけでなく実現可能性のある経済連携についての基本戦略や、それら経済連携を進めるうえでの重要品目についての戦略など5つの論点で精力的に議論することで合意した。

 同PTは4月9日から櫻井充座長代理ら訪米・訪加団の報告を待って意見集約を行うことにしていたが、この日の総会で執行部が「経済連携PT論点メモ」を提示して議論した。
 メモでは、TPP交渉参加の判断は「懸念事項への事実確認を含むさらなる情報収集、十分な国民的議論、国益の確保の三点を前提条件として行うことは政府・与党共通の認識」と強調した。
 そのうえで政府による関係国と協議による情報収集では▽すべての品目を自由化交渉の対象としてテーブルに乗せること、▽最終的には関税をゼロにすることが原則とされている模様、などの結果が得られたことや、PT代表団の情報収集では▽TPPに参加するか否かは「日本が決めるべき」との見解を持っている、▽米国からは交渉参加を議会に通報する時点までに、牛肉、自動車、保険といった日米間の問題について何らかの解決が必要であること、▽日本が今から交渉に参加してルールメイキングに参加できるかどうかは、すべてはTPP交渉の進捗状況と日本が参加するタイミング次第、であることなどが確認できたとしている。
 ただし、国民や関係団体への説明会などでは、「情報収集の不十分さとTPP交渉参加への懸念の声が多く出され、国民の間の十分な議論、合意形成が図られている段階に達していない」との考え方を明記。事実上、参加判断ができる状況にはないとの認識を示した。 その理由として「わが国としてTPPを含む経済連携から何を得ようとしているのか、経済連携協定を結ぶにあたって何を守っていくのかについて、具体的な戦略や対策を明確にしていない」ことを指摘、政権与党として「わが国方針の明確化」について議論を進めるとしている。
 その論点は、[1]日中韓、日豪、日欧、ASEAN+3などTPP以外も含めた経済連携の基本戦略、[2]関税や関税以外の規制などルールメイキングについての戦略、[3]経済連携協定の自由化度、[4]センシティブ品目についての戦略、の4つが素案では示された。ただ、総会の議論では投資・サービスへの戦略なども論点にすべきだとの意見も出された模様で、5月8日にも予定されている次回総会で報告される修正文書では5つの論点として整理されるという。
 今後は、週に2回程度の総会を開くなどこの問題を精力的に議論する方針だが「期限を区切るものではない」(吉良州司・連携PT事務局長)としている。

【4月27日に示されたメモ案】
1.2011年11月9日の提言
 当経済連携PTは我が国のTPP交渉参加について、2011年11月9日の提言において、
[1]懸念事項に対する事実確認と国民への十分な情報提供を行い、同時に幅広い国民的議論を行う事が必要である。
[2]APEC時の交渉参加表明については、党PTの議論では「時期尚早・表明すべきではない」と「表明すべき」の両論があったが、前者の立場に立つ発言が多かった。
[3]したがって政府には、以上のことを十分に踏まえた上で慎重に判断することを提言する。というとりまとめを行い、これを踏まえて野田総理は同年11月11日の記者会見において、「交渉参加に向けて、関係各国との協議を開始し、各国が我が国に求めるものについて更なる情報収集に努め、十分な国民的な議論を経た上で、あくまで国益の視点に立って、TPPについての結論を得ていくこととしたい」と発言された。すなわち、TPP交渉参加の判断は、懸念事項への事実確認を含む更なる情報収集、十分な国民的議論、国益の確保の三点を前提条件として行うことは政府・与党共通の認識である。

2.関係国との協議による情報収集
 こうした中、政府がこれまで行ってきた情報収集の結果、
[1]物品市場アクセスにおいて、全ての品目を自由化交渉の対象としてテーブルに乗せること、
[2]90〜95%を即時関税撤廃し、残る関税についても7年以内に段階的に関税を撤廃すべきとの考え方を支持している国が多数であり、最終的には関税をゼロにするというのが原則とされている模様であること、
[3] 現時点で除外を求めている国はないこと、
[4]米国は公的医療保険制度を廃止し、私的な医療保険制度に移行することを要求していることはないことなどが確認されている。
 また、当PT代表団の訪米・訪加による意見交換の結果、
[1]TPPに参加するか否かは、「日本が決めるべき」との見解を持っていること、
[2]米国からは交渉参加を米国議会に通報する時点までに、牛肉、自動車、保険といった日米間の問題について何らかの解決が必要であること、
[3]例外を最初から認めていくと例外だらけになってしまうので、米国は例外を持ち込まないという立場であるが、センシティブ品目がある国もあり、皆が勝利宣言をできるようにすること、
[4]日本が今から交渉に参加してルールメイキングに参加できるかどうかは、すべてはTPP交渉の進捗状況と日本が参加するタイミング次第であること、などが確認できた。
 いずれにせよ、食品安全、医療、知的財産制度、米韓FTAで盛り込まれている事項等これまでPTで議論されてきた懸念事項に対する事実確認のための情報の収集は、交渉に参加していない状況では一定の限界があるものであり、引き続き政府はこれらの事項に対する更なる情報収集と情報提供に全力を尽くすべきである。

3.国民への情報提供
 本年に入って「地域シンポジウム」(9回)「都道府県説明会」(23道府県)「関係団体意見交換会」(51団体)が開催された。多くの会場において交渉参加に期待する意見も出される一方、情報収集の不十分さとTPP交渉参加への懸念の声が多く出され、国民の間の十分な議論、合意形成が図られている段階に達していないものと考える。

4.我が国方針の明確化
 こうした党内や国民の間の議論が割れている状況の背景には、我が国としてTPPを含む経済連携から何を得ようとしているのか、経済連携協定を結ぶにあたって何を守っていくのかについて、具体的な戦略や対策を明確にしていないことがあるものと考えられる。いかなる経済連携協定の交渉を行うにしても、これらがない限りは有益な交渉を行うことは不可能であり、国益を増進させることはできない。したがって、当PTとしては、政権与党として以下のような点について精力的に議論を進め、可及的速やかに一定の成案を得ることとする。
1.日中韓、日豪、日欧、日加、ASEAN+3、ASEAN+6、TPP等現在実現の可能性がある経済連携についての基本戦略
2.ルールメイキング(関税・非関税)についての戦略
3.経済連携協定の自由化度についての戦路
4.センシティブ品目についての戦略

 

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