シリーズ

この人と語る21世紀のアグリビジネス

一覧に戻る

効果があって使いやすい家庭配置薬を組合員へ 協同薬品工業(株)横澤泰雄社長

・雇用を創出し地域社会の活性化にも貢献
・医薬品からサプリメントまで
・医薬品など専門知識を高める研修も充実
・農業を核に地域の活性化を

 当初、協同組合の保健事業の一環としてスタートした「クミアイ家庭薬」は、セルフメディケーションの理念のもと農家組合員の病気予防や初期治療薬として大きな役割を果たしている。全国148万戸に医薬品などを届けている協同薬品工業(株)の横澤泰雄社長にお話を聞いた。聞き手は坂田正通本紙論説委員。

効果があって使いやすい

家庭配置薬を組合員へ

◇雇用を創出し地域社会の活性化にも貢献

seri21st09091002.jpg ――創業はいつですか。
 「JA系統事業としての家庭薬の取扱いは大正8年ですが、協同薬品としての創立は昭和21年です。最初は、島根県の産業組合の保健事業として医薬品を供給していたようです」
 「創業者は医薬品会社に勤務していましたが、昭和11年に独立しました。その後、戦災によって工場が消失したので、山形県の長井市に移って会社を創立しました。そして昭和26年にクミアイ家庭薬の生産工場の指定を全農(当時は全購連)から受け、クミアイ家庭薬については全製品を当社で製造することになりました」
 ――当初はクミアイ家庭薬は何社で取り扱っていたのですか。
 「当時は3社ありました」
 ――いまは従業員が700名ほどいますね。
 「そのうち、実際に農家組合員のお宅を回って家庭薬を供給・補充する配置員が約500名ほどいます」
 ――全国各地でそれだけの雇用を作っているわけですから、立派な会社ですね。
 「ありがとうございます。それほどのことはないんですが、本社のある地域では大きな企業は少ないので、それなりに社会的にも立脚していかないとやっていかれないという面はあります」

 

◇医薬品からサプリメントまで

 ――実際に利用している農家数は何戸くらいですか。
 「全国148万農家でご利用いただいています」
 ――昭和26年当時と比較すると増えていますか。
 「昭和26年から現在の配置方式での取扱が始まりまして配置戸数は平成12年がピークとなり、それ以降は漸減しています」
 ――製品の主力はどういうものですか。
 「風邪薬や胃腸薬などが主力となります。最近では健康補助食品、また製造販売数量としてはドリンク剤が多くなっております」
 ――どのくらいの種類があるのですか。
 「現在合わせて71品目ありますが、そのうち医薬品が51、サプリメント類が16あります。かつては風邪薬や胃腸薬など治療薬が主でしたが、近年はセルフメディケーションやセルフケアが浸透してきていますので、保健薬とかサプリメントなどを充実させ、さまざまな病気や予防に対応できる製品に力を入れています」
 ――ドリンク剤は治療薬ではないわけですね。
 「本来は滋養強壮剤として医薬品として販売されていましたが、最近は規制緩和等もあって医薬部外品も増えています。当社は医薬品にこだわって製造してきております」
 ――どういう人が飲むのですか。
 「働き盛りの人から最近では若年層の人まで層も広くなっています」
 ――競争も激しい世界ですね。
 「かなりの数のドリンク剤がありますから、過当競争に近い状況にあります。配置家庭薬は、初期治療を目的とした治療薬がメインで、JAグループの“クミアイ家庭薬”というブランドがなければ、農家への配置は進まなかったといえます。とくに現在は、新たに配置をするのは以前と異なり厳しくなってきているといえます」

 

◇医薬品など専門知識を高める研修も充実

 ――農家を訪問するわけですから、組織運動の基本といっていいかもしれませんね。
 「そうした点では直接、農家組合員のお宅に伺いますから、貴重な事業だと私たちは考えています」
 ――医薬品はどんどん新しいものが出てきますが、配置員の教育とか養成はどのように行っているのですか。
 「医薬品を販売する人間として、専門的な知識などが求められますので、講習とか研修は実施回数も含め、より高度化した内容で実施されております」
 ――講習会はどういう形で実施するのですか。
 「全農主催で、昭和27年から今までに新規配置員の養成講習会が160回実施されています。かつては農村保健運動の担い手ということで、道徳的なことや人的な資質を高めることが主でした。いまは薬事法も改正され医薬品の販売に対しては、学術的な知識や法的なもの等専門的な知識が求められていますから、それらを充実した内容で実施されています」
 ――今後の製品開発ではどういうことを考えられていますか。
 「高齢者層がますます増大しますし、健康志向も強まっていますから、確かな効果があり利用し易いやすい製品をと思っています。家庭配置薬としてドラッグストアなどの商品とは差別化できるものを開発してJAグループに提供していきたいと考えております」
 「新たな商品としては、メタボリック予防に対応した製品に取り組んでいます」

 

◇農業を核に地域の活性化を

 ――最近の農業・農村についてはどう見ていますか。
 「わが社は山形の田園風景のなかにあるで、肌で感じることが多いのですが、山形は農業県なので農畜産物の販売にはJAも行政も力を入れています。しかし、農業だけではなく地域社会全体が弱ってきているように感じています」
 ――具体的にどういうところですか。
 「人口の減少とか、経済状況もあって失業者が増えていること。そして最近では学校まで再編されています。それから都市近郊地域は必ずしも便利ではなく、生活環境は悪化しているのではないかと感じています。こんなことから地域社会を元気にするために、さらに農業の活性化をはかって欲しいと思います」
 ――そのためにJAには何を期待しますか。
 「地域における農業の役割・位置付けは高いわけですから、その活性化の核となるいい時期に来ているのではないかと思いますので、ぜひ頑張って欲しいと思います」

seri21st09091001.jpg【略歴】
(よこさわ・やすお)
昭和26年山形県生まれ。昭和52年立教大学法学部卒業、協同薬品工業(株)入社。平成2年管理部長、同4年業務部長、同10年取締役就任。同15年常務取締役(営業本部長)、同19年専務取締役。同20年代表取締役社長に就任して現在に至る

 

 

インタビューを終えて

 「家庭薬」のオリジナル発想は大正8年島根県の産業組合保健運動が発端といわれる。生産メーカーが一元化されたのは戦後の昭和26年。薬剤師だった岳父が故郷山形で製薬工場を設立し、以来農協グループとともに成長する協同薬品工業である。全農主導のクミアイ家庭薬拡充全国大会などで、取り扱い県連が増えて行く。平成12年がピークで175万農家に家庭薬が設置された。現在は減少傾向で148万戸。今の時代は事業の拡大よりも「継続」が大事という。
 横澤さんは、ジョギングが高じて、10年間で市民マラソンに挑戦するまでになった。今年の東京マラソンでも完走した。ゴルフも趣味、蔵王や山形ゴルフでゆったり楽しむ。歴史ものの読書が好き。両親と山形県長井市で同居、奥様は薬剤師。一人娘は静岡県の大学生で薬学部に在籍。(坂田)

【著者】インタビュアー坂田正通(本紙論説委員)
           協同薬品工業(株) 代表取締役社長

(2009.09.10)