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水田雑草をめぐる課題と対応策
―新しい一発処理除草剤を大切に利用しよう―

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【水田雑草をめぐる課題と対応策】 「単一で多くの雑草を防除できる有効成分が登場」―新しい一発処理除草剤を大切に利用しよう― (後編)

(財)日本植物調節剤研究協会 常務・研究所長 横山昌雄
・安定した薬効をめざして成分数の少ない薬剤開発

 特別栽培や減農薬栽培に求める声が高まるなか、水稲除草剤では単一で多くの雑草を防除できる有効成分の開発が進んでいる。後編ではその開発における現状について詳しくふれる。

◆安定した薬効をめざして成分数の少ない薬剤開発

 そんなSU剤と同じALS阻害作用をもつが、SU抵抗性雑草に効果がある。有効成分であるペノキススラムやピリミスルファンが水稲用除草剤として開発されている。
 ペノキススラムはSU剤と同様多種類の雑草に効果があるばかりか、ノビエにも効果が高い。既に農薬登録され、茎葉処理効果が高いので中期処理での利用が始まっている。
 ピリミスルファンも雑草全般に効果があり、ノビエにも効果が高い。特に防除が難しい多年生雑草に効果が高いので一発処理剤の有効成分として期待される。
 いっぽう、昨年度、農薬登録されたSU剤であるフルセトスルフロンもノビエに対しても高い効果を持っている。4葉期に成長したノビエにも効果があり、中期処理の一発処理剤として期待され。また、現在開発中のSU剤であるプロピリスルフロン、メタゾスルフロンはノビエに効果があるだけでなく、SU剤でありながら、現在発生しているSU抵抗性雑草に効果があるスーパーSUとでもいう薬剤である。
 以上紹介したALS阻害を作用とする有効成分は、単一成分でも一発処理剤としての可能性があるが、より安定した薬効を目指して、成分数の少ない一発処理剤としての開発が進んでいる。
 ALS阻害以外にも多くの雑草に高い効果をもつ薬剤が開発されている。HPPDという酵素を阻害し、白化作用を持つテフリルトリオンはノビエから多年生雑草まで多くの雑草に高い効果を持ち、単成分でも一発処理剤としても可能性を持っている。昨年度農薬登録され、単剤とともにより安定した薬効を付与した2種混合剤が登録されている。
 水田除草剤の主流である一発処理剤は、除草剤の複数回使用を一回に是正する除草剤として開発されてきたが、一発処理剤だけで栽培期間を通して雑草を完全に防除することはなかなか難しい。ほ場条件や雑草の生育状況等を考慮して、除草剤の性能を最大限に活用することによって、新しい一発処理剤を大切に利用し、再び、除草剤抵抗性雑草や問題雑草が現れないようにしたいものである。

水稲作におけるSU抵抗性雑草の都道府県別報告草種数

)ALS ロイシン、バリン、イソロイシンのアミノ酸の経路に関与して、アミノ酸ができなくなることで効果を発現。

前編はこちらから

(2010.04.14)