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全農営農販売企画部 23年度事業計画のポイント

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全農営農販売企画部 23年度事業計画のポイント  大西茂志・営農販売企画部長に聞く

・販売を含めて農家が意欲をもてる支援を
・今やれることから確実に着手する
・平塚に生産と販売により近い拠点が
・JAを元気にするTACの活動が定着
・地域と地域農業を復興させるのはJA

 「生産と販売のマッチングによる国産農畜産物の販売拡大」つまり「販売とセットになった生産体系の確立」が全農営農販売企画部の23年度のテーマだ。しかし、3月に発生した東日本大震災への対応とくに被災地域の農業復興がなによりも当面の重要課題となった。そこで被災地へ何度も出向き復興への支援活動をも行っている大西茂志部長に、農業復興への役割と今年度の営販企部事業のポイントを聞いた。

復興でJAグループの力を発揮
TACの活動、販売力強化でJAを元気に

 

東日本大震災
◆販売を含めて農家が意欲をもてる支援を


大西茂志・営農販売企画部長 ――まず東日本大震災に関して営農販売企画部では、どのような対応をしているのかからお話ください。
 大西 これからのことを考えれば、より被害が深刻な地域ほどもう一度生産を再開して、JAを元気にしていくことが必要です。私どもの部署の性格からも、営農に着手し農業を復興するための支援をしていくことです。
 東北だけ見ても岩手と宮城や福島の状況は違います。同じ宮城でも海岸沿いと内陸では違います。福島の場合は地震や津波だけではなく原発の問題がありさらに複雑ですが、地域地域の実態に応じて、営農・生産技術をどう組み合わせていくのか支援策を考える必要があります。
 JAの活動も復活させていかなければなりません。そのためには農家組合員の生産意欲をわきたたせ、改めてJAへ結集していくための支援が必要です。具体的にはTACの活動や新しい生産技術が活かされると思います。
 ――販売面での支援もありますね。
5月14日、東京都・全農・コープネット事業連合会との連携で風評被害解消の直売会を開催 大西 被災県の農畜産物の販売支援活動を行っています。4月には東京・新宿の西口で行いましたし、5月は5日に横浜で開催されたチビリンピック会場、14日には東京国際フォーラムで東京都とコープネット事業連合と連携して被災県の農産物の販売会を行い、風評被害の解消や国産農畜産物への理解を深めてもらう取り組みを行いました(関連記事)。
 今後もこうした取り組みを月に1〜2回は続けていく予定です。
 ――大震災からの復興でもさまざまな技術的な情報提供もあると思いますが…
 大西
 原発事故による問題もありますが、今回の大震災で津波に襲われた水田や畑の塩害にどう対応したらいいのかといった技術情報の提供なども、現在まで行ってきました。塩害については早い段階で考え方をだしたので、ひとつの指標として活用されています。

(写真)5月14日、東京都・全農・コープネット事業連合会との連携で風評被害解消の直売会を開催

 

◆今やれることから確実に着手する


 ――一方で瓦礫があって手がつけられないところもありますね。
 大西
 地域地域で違いがありますが、春になったので営農面を含めて“いますぐにやれる”こと。設備投資も含めてもう少し時間が経ってからやれることはなにかを聞き、国や私たちに何ができるかを考え、支援することが大事です。
 例えば、営農が可能なところでは、苗を用意することが大事ですから、技術的な面を含めて簡易的に集中的に苗をつくるにはどうしたらいいかを考え、その実現のための応援をしていく。そうした現場ですぐやることがいくつもあると思います。
 そして実際の栽培面では先のことばかり話し合うのではなく、いまやれることと次のステップでやることについてしっかりと意識して検討することだと思います。
 ――そしてどう生産性をあげていくかという議論になる…
 大西
 生産性をあげ、収入を増やし生活できるようにするために、JAがどんな役割を果たすかが次のステップだといえます。

 

23年度のポイント
◆平塚に生産と販売により近い拠点が


 ――東日本大震災からの復興は大きなテーマですが、同時に、日本国内の農業生産力を高めることも大事なテーマだと思いますが、その点では…
昨年11月に開催されたTACパワーアップ大会 大西
 現在取り組んでいる3か年計画でも提案をしているように「販売とセットにした生産体系」の確立です。それは生協など販売先との連携をベースに、生産者が儲かるような技術体系を確立していくことですから、この路線はしっかり強化していきます。
 日本全体に生産力と消費が落ち込んでいます。生産は東北だけではなく全国的な問題ですから、TACの仕組みを活用して生産現場にしっかり足を置き、JAの総合力を発揮することだと思います。
 ――そういう意味で、平塚やつくば分室の役割が大きくなる…
 大西
 来年2月にはJA全農青果センター(株)の大和センターが平塚に移転し、営・技センターと併設された神奈川センター(仮称)となり、ここが生産と販売の現場に近い拠点になります。
 ここには生産者、JAの方も量販店のバイヤーも生協の販売担当者も来られ、生産と販売の現場が近づき、さまざまなコミュニケーションがなされ、そのなかから新しいものが生まれてくる可能性が大きいと考え、そのための素地をつくろうと着々と準備を進めています。
 ――国の研究機関を含めてこうした施設はないのでは…
 大西
 全農がつくばに分室を置くことで、国の研究機関が現場に近づいたと評価をいただいていますが、平塚は生産だけではなく販売の現場にも近づくわけで、大きな期待が寄せられています。

(写真)昨年11月に開催されたTACパワーアップ大会

 

◆JAを元気にするTACの活動が定着


 ――TACも3年目になりますか…。
神奈川県平塚市の全農営農・技術センター。来年2月には大和センターが移転し、生産・販売の拠点に 大西
 3年が経過しJAで、仕事の仕組みとしてTACが定着してきたと思っています。担当者を専任化するとか、TACが聞いてきた要望を取りまとめてJAの総合力を発揮してきちんと応えていくようになってきました。さらにJA全体の仕事のなかにはっきりとそのことを位置づけることで、いろいろな事業に効果が発揮されるようになってきました。
 ――基本的にTACがやるべき仕事の内容はできてきた…。
 大西
 それをは事業の成果につなげていくかです。
 当初は担い手対策ということで、担い手農家に行こうというところからスタートしましたが、3年経って一つの節目にきて、それだけではなく、聞いてきたことをJAの事業のなかにしっかり活かそうという方向に舵をきって、JAの活動にも活かされるようになってきたと思います。
 ――TACの活動が活発になることで、担い手に対してだけではなく、JAの事業そのものが活性化して…
 大西
 JAの事業に元気がでてくる。そのことが見えてきたのでそこをよりステップアップしていきたいと考えています。
 そしてそういう活動といま首都圏などで展開している販売力強化や得意先の開拓、さらに技術開発を含めて、現場でぶつけあい、実践的に結びつけていくこと、また、各県本部、各事業会社など現場のところで接点を持ち、集約させていくような機能も果たしていければと考えています。
 いま流通のチャネルは多様化し複雑になってきていますが、そのことは逆に私たちが入り込んでいけるスペースがあることだと思います。
 こちらから品目・品種そして加工を含めた付加価値をつけたものを提案をするだけではなく、TACが掘り出したものを商品化し販売につなげることで、JA地域が元気になればいいと考えています。

(写真)神奈川県平塚市の全農営農・技術センター。来年2月には大和センターが移転し、生産・販売の拠点に

 

◆地域と地域農業を復興させるのはJA


 ――「生産者と消費者を結ぶ懸け橋」となる方向が見えてきた…
 大西
 なかなか大きな成果はでてこないのですが、着実に進んできているとは自負していますが、今年はやはり「大震災」が大きな課題です。東北でTACをはじめこれまでの取り組みをどう活かせるかだと思います。
 一方、西日本でも生産者の高齢化などによって、生産基盤や地域の落ち込みがきていますから、同様にこれまでの仕組みやノウハウは、共通するものが多くあると思います。
 ――そういう意味でまずは東北で真価が試される…
 大西 
総合的な営農支援ができ、地域と地域農業を復興させるのはJAであり、われわれJAグループであるということを示す必要があります。そのときに一番大きいのは、JAはそこに住んでいる組合員の組織だということです。
 その力を発揮するためには、JA組合員が、「自分たちの存在は何か」そして「自分たちは何をするか」をぶつけ、それを連合会が支援することだと思います。季節がどんどん動いていきます。農業にとってタイミングが非常に大事です。
 ――国が何かしてくれるのを待つのではなく、自ら動いてボトムアップしていく…
 大西
 そうしないといけないのが、いまの場面だと思います。
 そうしたことを含めて今年度は、大震災からの復興さらにTACをはじめとする従来からの取り組みをどう事業として発展させていくかということになります。
 ――ありがとうございました。


 

(2011.05.24)