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地域と命と暮らしを守るために JAは地域の生命線―協同の力で全力で被災地の復興を

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【本紙緊急調査】東日本大震災後の水田状況と米づくりに関するアンケート  大震災後の水田被害状況―7県からの報告を集約

・岩手県 小規模農家ほど復旧困難
・福島県 原発事故で作付自粛も
・宮城県 農地再生、どこまで?
・茨城県 液状化による被害多く
・千葉県 農家の復旧努力で作付けも
・新潟・長野県 高齢被災者の離農・離村あいつぐ

 本紙はこのほど東日本大震災による水田への被害状況を被災地JAの協力を得て緊急に調査した。調査対象は東北6県をはじめ農水省のまとめで農地への被害があったとされている15県のJA。
 ただ、未だ被害状況が不明な地域も多く、数値で全体状況を集約することは困難だったため、今回は寄せられた回答と取材をもとに主要7県の被害状況をレポートする。

塩害、放射能、液状化、地盤沈下……各地で異なる被害実態


営農再開の見込みたたない地域も

東日本大震災後の水田状況と米づくりに関するアンケート
◎緊急調査:東日本大震災後の水田状況と米づくりに関するJAへのアンケート

 今回のアンケートは東日本大震災による地震、津波等で被害を受けた「水田」に限ってその状況についての回答をお願いした。農林水産省の調査で農地等への被害があったとされる東日本の15県内の全JA256に送付。被害がなかったとする回答も含め191JAに協力をいただいた。ただ、前文でも触れたようにこれから被害調査する地域もあり、今回は全体集約はしなかった。被害がなかったとするJAからは「被災された方の早期復旧を心よりお祈り申し上げます」といった声も寄せられた。

 

 

岩手県
小規模農家ほど復旧困難

 農水省の発表では水田の流出・冠水は1172haとなっていたが、今回の調査で今年の作付ができなかった水田は沿岸部で420haだった。
 そのうち3割ほどになる130haは来年復旧の見込みだが、7割以上は2年以上、または復旧の見込みがないとの答えだった。
 特に被害の大きいJAおおふなとでは、津波被害230haのうち、70haほどは来年の作付が可能だが、復旧までに2年かかるのが44ha、3年以上かかる見込みが70ha、復旧不可能が46haと壊滅的だ。
 沿岸部を管内とする3JA(JAおおふなと、JAいわて花巻、JA新いわて)からは、津波による塩害やがれき流入などの被害を受けたところでは、「大規模な販売農家は重機などを入れて比較的早く復旧したが、小規模な自給農家はがれき撤去すらままらない状態」であり、「行政が適正な除塩とがれき撤去を継続的に行う支援体制を構築しなければ復旧は困難だ」との意見が目立つ。
 また、「比較的大きながれきは撤去できたが、小さなガラスの破片などがたくさん残っているので、いつ復旧できるかまったくわからない」、「がれき撤去や除塩作業が完了しても、流出した資材や農機の購入費用の助成などの支援は見えてこない」などさまざまな被害の実態が報告されていて、「沿岸地帯の農業の衰退は間違いない。今年復旧できない農地は、原野になるのが目に見えている」と、厳しい声もある。
大震災後の水田被害状況 特に沿岸部は小規模な農家が多いため「水田の原状復帰だけでなく、同時に新たな区画整備を行い、大型機械を入れて省エネ農業ができるような基盤整備が必要だ」との意見も多い。

 

 

福島県
原発事故で作付自粛も

 福島第一原発が管内にあるJAふたばからは悲痛な回答が届いた。管内の水田6087haですべて作付不能。JAも福島市内に避難している。
 「沿岸地域は放射能のほかに津波による塩害、がれきが散乱。ほかにも用水路の破損、地割れなど被害は多大と思われるが立ち入れないので調査すらできない」。いつ作付ができるか見通しが立たないが「農業者の力になれるようがんばっていきたいと思います」との声が寄せられた。
 JAそうまも1万2000haのうち、津波被害3600ha、飯舘村など作付制限6100ha、合わせて9760haで作付できていない。農地として再生は無理との見込みは3割。再生させるには土壌の入れ替えなど思い切った再ほ場整備が必要だという。
 放射能による作付制限を受けた水田があるのは、JAたむら、JA新ふくしまなどでも。JA伊達みらい管内では自主的に作付しない水田もあった。他のJAも放射能汚染対策について、収穫後と来年以降の対応へが不透明なことに対する不安、そして補償問題と政府の対策を強く要望している。
福島県いわき市の四倉漁港 震災被害では用排水施設の損壊もある。JA東西しらかわとJAしらかわ管内であわせて1500ha程度が作付不可能となった。いずれも来年には作付できる見込みだが、「来年に向けて維持管理し荒ささないことが重要。生産者には耕耘、草刈りに努めてもらうことが大切」と現場の対応が報告された。

 

宮城県
農地再生、どこまで?


 農林水産省の3月時点の推計では津波による流出・冠水面積は田畑あわせて1万5000haとなっている。ほぼ全JAから回答が寄せられた。
 JA南三陸は管内水田の28%にあたる557haが「壊滅的な被害」を受けた。今年は除塩できる見込みはないという。「3年以上かかるが農地として再生できる見込み面積」は被害農地のうち「20%」とのことだった。
 JAいしのまきは、1万2300haのうち浸水被害は3700ha。このうち除塩による作付可能見込み面積は1476ha。これまでに1000haで除塩ができた。
 JA仙台は津波による被害のほか、用排水施設の損壊(関係面積55ha)、地盤沈下等(57ha)の被害を合わせて約2000haの被害。「農地として再生は無理」と見込まれる面積は10%あるという。地盤沈下の土盛りや土壌改良などが必要とされている(詳細は後日更新の現地レポートで)。
 JA名取岩沼とJA岩沼市管内でも2200haを超える浸水があった。2年後には作付できる見込みは5割程度だという。排水機場・用排水路の復旧工事ができていないため大雨による水害もすでに発生している。「がれき、車、ゴミの撤去がなければ除塩もできない」との声が寄せられた。
 内陸部にも被害が発生している。
 JA古川では一部で地盤沈下、JAみやぎ登米ではパイプラインの損壊(関係面積43ha)、地割れ(43ha)などの報告があった。ただ、いずれも来年には作付可能の見込みだ。被害の小さなJAからも「復旧には行政の強力な支援が必要」との意見が届いた。

 

 


茨城県
液状化による被害多く


 回答に協力いただいた17JAのうち水田に何らかの被害があったとするのは13JAだった。沿岸部のJAでは津波による冠水も一部にあったが、多くは地割れや液状化だ。寄せられた回答の集計では222haだが、調査中の地域もあり液状化の被害はさらに多いと想定される。
 また、地割れや液状化の被害はなくても、霞ヶ浦からのパイプラインや排水設備の損壊で今年の作付けが不可能となったり、田植えに遅れが出た地域も多い。県内でも被害が大きかったJA稲敷管内では用排水施設の損壊は110カ所、34施設におよび320haで作付けできない。液状化も180haあるという。ただし、2年後にはすべてで作付けが可能になる見込みだ。行政による復旧作業が待たれる。ただ、地域によっては排水施設の修復に対する農家負担が大きく農家が合意するかどうか不透明なケースもあるという回答もあった。
 また、茨城県でも原発事故の影響を懸念する声が多い。「安全安心をPR。風評被害に負けない農業を支えていく」との声もあった。

 


千葉県
農家の復旧努力で作付けも


 JAちばみどりとJA長生、JA山武郡市からは合わせて550haほど津波による冠水被害を受けたとの回答があったが、すでに除塩作業を行って作付けた水田もあるほか、来年には100%作付できる見込みだ。
 JA山武郡市では540haを除塩して田植えをしたが生育状況が懸念されるため今年は中干しをしない方針だという。そのほか農業機械の流出で農作業を断念した生産者もいるという。
 JAかとりは、震災直後、液状化よる大きな被害が報道された。同JAによると30%前後で作付けできないと予想されたが、その後の復旧作業と生産者の自助努力によって、95%以上で作付けができたという。作付できなかった面積は50haで地盤沈下部分を除き8割程度は2年後に作付できる見込みになっているという。今後は用水施設の完全復旧が課題となっている。
 JA八千代市やJA富里市などからも一部で被害があったが、パイプラインを復旧し例年より7日から10日程度の作業の遅れで済んでいるとの報告もあった。

 


新潟・長野県
高齢被災者の離農・離村あいつぐ


 この地域では3月12日午前4時ごろ長野県北部を震源とする震度6強の地震が襲った。
 今回の調査では、2県4JA(JA北信州みゆき、JA津南町、JA十日町、JAえちご上越)で合計66haの水田が今年の水稲の作付は不可能だとわかった。
 被災水田のほとんどは傾斜地の棚田で、がけ崩れによる土砂流入と水路の破断、地割れ、畦の崩落、などによるものだ。この一帯はいわゆる地滑り地帯で、以前から何かあれば大きな被害が出るのではないかと危惧されていた地域だった。
 被災地の多くは中山間地域で条件不利地が多く、高齢化率も高い。家屋は無事でも農地の被害が大きく自力で営農を再開する気力も体力もないとか、逆に農地は無事でも家屋や施設に被害がありこれを機に離農・離村するという生産者も多い。
 栄村を管内とするJA北信州みゆきでは、全体では200haほどの水田に被害があり、そのうち160haほどについては被害が軽微だったり水路の復旧が間に合ったりなどで、今年の作付が間に合った。しかし、38haの水田で今年の作付は不可能になり、その半分は来年以降の作付見込みが立たない状況だ。
 水田はひと夏放置すればすぐ荒廃地になり、復旧は困難になる。JA北信州みゆきでは、荒廃対策とさらには震災被害を受けた生産者が少しでも所得を得られるようにと、38haの農地については、ソバを中心にして畑への転作を行政とともに奨励している。すでに10haほどで転作の見込みが立っているという。
 栄村では、これまで地域共有の育苗センターや農機などはあったが経営はすべて個別だったため、「JAとしては今後の地域全体の農業復興のため集落営農などの組織づくりとその支援に注力していきたい」考えだ。
 今回の被災地はせいぜい広くても10aほどの小区画な農地が多い。国の災害復興補助事業は、復興にかかる金額が総額40万円以上でなければ補助率が大幅に下がるため、多くの農地で復興への助成が受けられない状態だ。各JAから「被害額の大小にかかわらず、キメ細かい支援が必要だ」との意見があった。

(2011.07.04)